日本という国がこの先どうなってしまうのかという思いが日に日に強くなっていました。ふと街を見渡せば空室だらけのテナント、廃業をする店や企業を見受けます。ひっそりと店じまいをしていった主なき会社・店舗に向かって「やることはやったのか? やり方があったのではないか?」と聞きたくなります。
私は、玩具問屋に就職し、6年ほど勤めた後、おもちゃ屋を創業しました。親が借金を抱えていたこともあり、早く会社を大きくして実家を再建しなければならないと考えていました。資金70万円でのスタート。日々の資金繰りは待ったなしです。しかしこの創業時がいろいろなアイデアを生む環境をつくってくれました。
運良く出会った商売に考えていた「変動相場の法則」を駆使したところ、5年で一気に50億円まで駆け上がりました。しかし無謀な拡大戦略は早晩行き詰りました。その先は約4年間、倒産と向き合いながら経営の勉強をしました。そんな中から、合理化の手法として「知行合一思考」、会社再建の手法として「出直しの法則」が生まれました。 「やること!」をしっかりやったその後は順調な経営者人生を送らせていただきました。
かねてから50歳で引退し、第二の人生に挑戦すると決めていたので、急いで一通りのことを経験したいと考えました。挑戦したことは「対等合併」。ここで社長を降りて副社長というナンバー2の立場を経験しました。その後、一部上場企業に株式を売却、筆頭株主を降り、他社の傘下に入る体験をしました。いろいろな人事システムを実験しました。大手コンサル会社の社員満足度調査で偏差値80を取ることもできました。
その後は、上場を目指し、公開直前までいきましたが、株価に納得することができずあきらめました。投資事業を始め、外部の若手経営者の支援と育成を行いました。社内独立制度で社員に店舗を貸して、希望者に社長に挑戦させたりもしました。三重県ナンバー1の書店の経営を再建、そして50歳で社員に社長を譲り引退をしました。
この本は、その「体験」を通して得た事象を「経営理論」として体系づけたものです。私の考案したいくつかの法則と、一部ドラッカーの現代の経営をヒントにしつつ、新入社員にもわかるように意識して書いたものです。
未来がなかなか見えない日本の経営環境ですが、「やること!」をやれば必ず経営は成り立ちます。実は「やるべきこと」はすでにわかっているのに「やらない!」と決めているのは社長自身なのです。この本が社長の背中を支える本になれば幸いです。どうか最後まで読み進めてください。きっと、未来の指針をつかんでもらえると確信しております。
榎本 計介