「できる!」ビジネスマンの雑学
2017年06月07日
[403]山手線に監視カメラ導入、2018年春から

 ついにというか、いよいよ公共の交通機関でも、わたしたちは「監視カメラ」に常時見張られる時代になりました。

JR東日本 山手線の全車両に防犯カメラ設置へ
 JR東日本は犯罪防止やテロ対策を強化するため山手線のすべての車両に2020年までに防犯カメラを設置し、車内の様子を常時、録画することを決めました。(中略)
 録画した映像は1週間程度で上書きし、映像を閲覧できる社員を限定して乗客のプライバシーに配慮するとしています。
 JR東日本は、東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年までに設置を終え、痴漢などの犯罪防止やテロ対策を強化したい考えです。
NHK NEWS WEB 2017年6月6日掲出)

 通勤電車への監視カメラの導入は、今回が初めてかと筆者は思いましたが、そうではありませんでした。

山手線客室内に防犯カメラ設置へ 五輪控え「テロ防止必要」
 JR東は、痴漢対策として埼京線の一部車両に既に防犯カメラを設置しているが、首都圏の通勤電車に本格導入するのは初。
共同通信 2017年6月6日掲出)

 埼京線へのカメラの導入は8年も前になるそうです。また、新幹線では車内で起きた焼身自殺事件(2015年6月)を契機にカメラの設置が進んでいます。さらには首都圏の地下鉄(東京メトロと都営地下鉄)や東急電鉄でも車内にカメラを設置する計画があるそうです。(上記のNHKニュースより)

2017060701.jpg

 痴漢抑止効果を期待されるカメラの導入は、なにも女性のためだけではありません。被害を装った女性のうその証言だけで、ターゲットにされた男性が警察に何日も拘留されたり、慰謝料を払わされたりするケースが増えているそうです。こうしたえん罪を起こさせない効果もありそうです。

 ただ筆者が恐れていることは、この日本の社会から真実を語る人がいなくなり、カメラが残す映像データだけで善悪を判断する風潮が広まっていくことです。

 その先には何が待ちうけているのでしょうか。

「深夜に少年が4人で歩いて行った。帰りは3人になっていた。ひとり少ないのは殺されたからだ。映像に残っていたから正確な時間まで分かった、カメラがあってよかったねとは素直に喜べません。人が歩いている映像に過ぎませんが、悲しすぎる映像だと思いました。

 少年達が住んでいた街では事件を防ぐためにやっておくことが山ほどあったはずなのに、それをやらなかった場面はひとつも録画されていないのですから。

 セキュリティを高めたはずの社会が、モラルの維持や地道な予防対策に急速に無関心になっていく。そんな気がしてなりません。」
(「[012]ゆるくなっていく日本社会の安全性」 より抜粋/2015年03月16日掲載)

 引用したコラムで紹介しているのは、2015年2月に川崎市で中学一年男子生徒が少年3人組に殺害された事件です。この事件では数多くの防犯カメラの映像をたどっていくことで、犯人たちの足跡を固める有力な証拠となりました。

【川崎中1殺害】
LINEが結んだ「点と線」 容疑者特定、防犯カメラと両輪「現代捜査に欠かせぬツール」
産経ニュース 2015年2月28日掲出)

 ところで、筆者は公共の場に設置するカメラを、安易に「防犯カメラ」と呼んではいけないと思っています。

 川崎の事件では、カメラの録画が犯人を特定するツールにはなりましたが、防犯カメラが事件を防止する力にはならなかったからです。

 防犯カメラという名前ですが、録画データの使い方次第では、国民ひとりひとりの行動を記録し追跡する「監視カメラ」に早変わりするからです。

 公共交通へのカメラの設置は社会でもっと議論するべき課題だと思われますが、ちょっとした事件やイベントを契機に導入が進んでいるのが現実です。残念なことです。(水)

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