「できる!」ビジネスマンの雑学
2018年12月07日
[623]スパイダーマンを超えた世界最強の虫だった。ミノムシ

 「スパイダーマン」といえば、手首からクモの糸を噴射して、ニューヨークの摩天楼を颯爽と飛び回るハリウッド映画で、一躍有名になりました。

 この映画を観た誰もが、スパイダーマンが操る唯一の武器、クモの糸こそがこの世で最強の糸と信じていました。つい先日までは。

 残念ですがそれは大きな間違いでした。

 昆虫界にはそれよりも遙かに強い糸、強いやつがいたのです。

 ミノムシ です。

 冬になると枯れ枝にぶら下がって、清少納言からは「チチよチチよと鳴く」といじられた、あのミノムシ。蓑(みの)をかぶった姿のようだと名付けられたミノムシです。

 『蓑虫いとあわれなり。鬼の生みたれば、親に似てこれもおそろしき心あらむとて、
 親のあやしき衣引き着せて、「いま秋風吹かむをりぞ来むとする。待てよ」
 といひおきて、逃げて往にけるも知らず、風の音を聞き知りて、
 八月ばかりになりぬれば、「ちちよ、ちちよ」とはかなげに鳴く、
 いみじうあはれなり』(清少納言『枕草子』・四三段 「虫は」)

 『鬼のような恐ろしい心を持った子と思われたミノムシは、気の毒なことに親から捨てられます。みすぼらしい衣を着せられて「秋風が吹く頃には迎えに来るから、そこで待っていなさい」と言い残し、親は立ち去りました。
 さて、捨てられたことも知らず親を待ち続けたミノムシは、いよいよ九月の秋風を感じ取ると、もう迎えが来る頃だと「父よ、父よ(乳よ、乳よ)」と心細く鳴く(泣く)のでした。
 その様子はとても物寂しいものです。』(現代語訳・筆者)

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 粗末な衣だけを渡されて、親にも見捨てられたミノムシのどこに、スパイダーマンを超える能力が備わっていたのでしょうか。

ミノムシの糸から「最強」繊維 防弾着や車体に応用も
 ミノムシの糸を産業利用する技術を開発したと、興和(名古屋市)と国立研究開発法人の農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、茨城県つくば市)が5日、発表した。丈夫さは自然繊維の中で「最強」とされてきたクモの糸をしのぐといい、将来は、防弾チョッキや車のボディーなどへの応用が期待できる。
朝日新聞DIGITAL・斉藤明美 2018年12月6日掲出)

 清少納言に「あやしき衣」(賤しき衣)=みすぼらしい衣服 とまでけなされたあの灰色のぱっとしない「蓑」衣にその秘密がありました。

 調べによると糸の切れにくさはカイコの5倍、オニグモの2倍もあるそうです。しかも自動車や船舶のボディに使われている繊維強化プラスチック(FRP)に組み込むと強度はさらに上がります。加工性が高く高温にも強いことから、航空機の機体にも応用できる(前出記事より)そうですから、まさに鬼に金棒。

 鬼の子でよかった、鬼の子バンザイ、といいたい気分です。

 チチをじっと待つ忍耐強い性格は大規模飼育に最適で、糸の大量生産には好都合だそうです。

 千年前に清少納言から「あはれなり」とまで言われたミノムシのひ弱さが、今となっては最強の源になりました。思いもよらない大逆転ですね。

 ミノムシの防弾チョッキが誕生した暁には、監督は誰でもいいですから、香川照之さん主演で「ミノムシマン」の映画化をお願いします。(水田享介)

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■関連リンク
農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構) 公式サイト

興和株式会社 プレスリリース

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