「できる!」ビジネスマンの雑学
2022年08月08日
[718]「飛んだところで豚は豚?」、でも・・・所沢市がイタリアの都市と交流

 先日、NHK NEWSWEB で気になるニュースを目にしました。それは埼玉県所沢市とイタリア・ティエーネ市が、交流を深める約束をした記事です。

五輪遺産 "航空の歴史にゆかり"イタリアの都市と交流へ
去年の東京オリンピックでイタリアの選手団の事前合宿が行われた埼玉県所沢市が、ともに航空の歴史にゆかりがあるイタリアの都市と交流を進めていくことになりました。
NHK NEWS WEB 2022年7月23日掲出)

 遠く離れた二つの市がなぜ交流を始めたのか、これ以上の説明がなく、所沢市公式サイトで調べたところ、もう少しその理由が判明しました。

オリンピック・レガシーとして新たな交流を開始
イタリア共和国ティエーネ市からの招聘をうけ訪問(7月15日発表)
所沢市公式サイト>報道発表 2022年7月15日掲出)

1.所沢市は東京オリンピックの時、イタリアのホストタウンだった
2.航空の歴史があるティエーネ市から同じく航空にゆかりのある所沢市に交流を申し込まれた。
3.両市はオリンピック・レガシーとして交流を開始。
4.所沢市長は今年6月~7月にティエーネ市を訪問。航空施設を見学。
5.今後はティエーネ市長を所沢市に招待する予定。

 航空産業に関連のある都市同士で交流が始まった。ことの次第はそれで終わるかと思いきや、ティエーネ市にはもうひとつ、日本との深い関わりがあったのです。

ローマ‐東京間飛行 2人の若きイタリア人飛行家たちの「夢」
1920年5月31日、現在の代々木公園の地に、イタリア陸軍航空部隊の若き飛行家たち、25歳のアルトゥーロ・フェラリン中尉と24歳のグイド・マジエーロ中尉とが操縦する2機の複葉機が到着・・・この「ローマ-東京間飛行」は、航空史に残る偉業でした。

またアルトゥーロ・フェラリンは、宮崎駿監督のアニメ映画の名作『紅の豚』に登場する人物のモデルとなったと言われています。
イタリア文化会館 2020年5月31日掲出)

080801.jpg

 宮崎駿監督は自身の作品に、しばしば所沢周辺をモチーフに取り入れていることはよく知られています。『となりのトトロ』では武蔵野の雑木林、『千と千尋の神隠し』に登場する「まっくろくろすけ」はクロスケの家として所沢市三ヶ島に存在しています。

 筆者も十代の頃、三ヶ島付近の雑木林を散策していて、うっそうと茂る森林と、その中に入り込んだときの気持ちよさは、今もよく覚えています。豊かな森の存在は所沢市のかけがえのない財産です。

 宮崎監督の所沢ネタはこれだけではなかったのです。『紅の豚』に登場する主人公の親友、フェラーリン少佐は、実在のフェラリンをモデルにしていたのです。

 1903年、ライト兄弟の動力機による初飛行は、滞空時間=12秒、飛行距離=120ft(約36.5m)でした。
 それからわずか17年後、ローマ-東京間約1万8千キロを3ヶ月半かけて飛んで見せたのは、驚異的な偉業というほかありません。

080802.jpg
Raid Rome-Tokyo by Arturo Ferrarin (1920)

 筆者の記憶では、日欧をつないだ航空機は、1937年に東京―ロンドン間を飛行した「神風号」、1942年にローマ-東京間をシベリア経由で空路往復した枢軸国連絡作戦、程度しか知りませんでした。

 世界で初めてヨーロッパとアジアを空路でつないだフェラリン。百年の時を経て、ふたたび日伊の交流をつなげる大役を果たしました。(水田享介)

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■関連リンク

『となりのトトロ』モニュメントを設置しました
所沢市公式サイト>観光 2020年11月30日)

里山の文化を引き継ぐ クロスケの家
公益財団法人 トトロのふるさと基金

記念帖1920
https://kinencho1920.com/

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