「できる!」ビジネスマンの雑学
2022年10月03日
[736]GPSの便利さと引き替えに、失われていく人間の脳力

 いまやクルマの運転には欠かせないカーナビ。GPS(Global Positioning System, 全地球測位システム)を利用したサービスですが、もともとはアメリカが軍事用に開発した画期的な技術でした。

 スマホにこの機能が搭載されると、訪問先や待ち合わせ場所の確認などに重宝なため、誰もが日常的に使うツールとなっています。

 ところがこのGPS機能を頻繁に使うことで、私たち人間から失われていく能力--脳力があることをご存じでしょうか。

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GPSを頻繁に使うことで脳の空間認識能力が衰えてしまう可能性が示される
 かつて紙の地図を見て歩いていた人間が位置情報に頼りだしたことで、特定の場所や道のりなどを記憶するのに役立つ「空間記憶」が衰えてしまっている可能性が、実験により示されました。
Gigazine 2022年08月15日掲出)

 この記事では、「GPSの使用歴が長い人ほど、空間を把握したり、脳内に地図を描いたりすることが困難となる...」と報告しています。

 筆者の経験で言うと、海外で道ばたにたたずむ人に目的地までの道を尋ねると、トンチンカンな答えが返ってくることがしばしばありました。また紙に道順を書いてもらうことも不可能でした。
 道案内を頼んで一緒に歩くとたどり着くのに、なぜ地図が書けないのか。
 それは国によっては、地図を見たり書いたりする教育がないことが原因だとあとでわかりました。

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 知らない場所でも地図を頼りにたどりつく能力は、人間本来備わっているわけではなく、学習によって習得していたのです。
 確かにGPSを使い最短経路をたどりピンポイントで到着することはカーナビの指示に従ったにすぎず、決して私たちの能力ではないのです。せっかく身につけた地図を読み解く能力が、GPSによって失われていく・・・。私たち現代人は、最先端のIT技術に囲まれていながら、いえ囲まれているからこそ個人の能力を失いつつあるのでしょうか。

 黒電話しかなかった昭和の時代。電話番号は10個の穴の開いた円盤をジーコジーコと回すほかありませんでした。そして、当時の常識として、親戚、酒屋さん、病院などよくかける電話番号は大人たちはそらんじていました。
 短縮ダイヤルや電話番号登録など、便利な機能は黒電話にはありませんでしたから。

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 筆者も就職した後は、勤め先の代表番号や取り引きのある業者さんは指先が覚えていて、手帳を見ずに電話をかけていました。
 社内にいても、○○の電話は?と声を出すと、何々番だよと誰かが教えてくれていました。

 今では液晶画面にある相手の名前を叩くだけで電話がつながります。相手の電話番号どころか自分の電話番号すら覚えていない人も多いことでしょう。

 何世紀もかけて育んできた人としての知見をあっさりとはぎ取っていくのが、IT技術なのかもしれません。

 それが人類にとって進化というのか、退化というのか--まだ結論は出ていません。(水田享介)

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