「できる!」ビジネスマンの雑学
2022年11月21日
[749]フェイクニュースはダメでも、フェイク食品はいいの?

 最近よく聞く「フェイクニュース」ということば。うそのニュース、ねつ造した情報、人をだます報道...といった意味ですが、根拠のない誹謗・中傷を目的としているため、一般的には悪い印象しかありません。

 ところで私たちが日常的に口にする食品・食材にも代替品、コピー食品が数多くあり、「フェイク食品」というありがたくない名称までつけられています。そして、食材や商品につけられた名前と実体が違うということでしばしば問題化しています。

 最近では回転寿司チェーン店が、マグロの種類が違っているとの指摘を受けて、株価が下落する事態となりました。

「スシロー」運営元、マグロ偽装疑惑報道を否定
「誤った回答をした」
「担当者が誤った認識のまま『鉄火巻』についてもメバチマグロのみを使用しているという回答をしてしまった」と説明。その後、正しい情報の説明と、誤った情報を伝えたことに対して、おわびした...。
ITmedia ビジネスオンライン 2022年08月31日)

 ただ悪意のあるフェイクニュースとは違い、食材置き換えの中にはやむにやまれぬ事情もあるようです。

 名前と実体が乖離した代表例としては「江戸前寿司」があります。握り寿司の始まりは江戸時代の江戸(東京)で、寿司は江戸の庶民が好んだ郷土料理でした。本来の江戸前寿司は東京湾の新鮮な魚介で仕込んだ寿司を指しますが、さてそれが出来ていたのはいつ頃まででしょうか。令和の今、本物の江戸前寿司を握らせたら、アナゴしか出てこないかもしれません。

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 現代の回転寿司店ではそうもいかず、安価な寿司ネタを求めて、世界中から食材を取り寄せています。江戸前寿司ならぬ「世界寿司」です。
 名前も聞いたことのない魚も多いのですが、消費者の間にもこの安さだからと暗黙の了解ができあがっているようです。
 元々の食材から置き換えられている寿司ネタにはどんなものがあるでしょうか。

【置き換えネタの一例】
ネギトロ=>マンボウ
ヒラメなどの白身=>アメリカナマズ
あなご=>ウミヘビ科のアナゴに似た魚
エンガワ=>オヒョウ、カラスガレイ
イクラ、キャビア=>別魚類の卵
(※すべての店舗が代替魚を使用しているわけではありません)

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 ネットで調べただけでもこれだけの食品が代替品と言われています。 輸送ネットワークや加工技術の進化もあり、海外の代替魚やこれまで馴染みのなかった深海魚が積極的に使われています。
 ただ、オヒョウはイギリスのチップスアンドフィッシュの白身に使われる魚で、味には定評があります。
 アメリカナマズはキャットフィッシュフライの材料で、アメリカ南部の伝統的ソウルフードといわれています。
 訪日観光客の方々には、世界中の食材を一度に食べられるのが回転寿司ですと食材の原産地をアピールすることで、抵抗なく食べてもらえるかもしれませんね。

 持ち帰り弁当の中身も、思いがけない食材に置き換わりがあるようです。

白身魚のフライ=>アメリカナマズ
スズキ=>ナイルパーチ
シシャモ=>北欧産のカペリン、カラフトシシャモ
鮭=>ニジマス
(※すべての店舗が代替魚を使用しているわけではありません)

しゃけ弁当はニジマス弁当になるのか?
大手牛丼チェーンの吉野家の「牛鮭定食」には、発売以来サーモントラウトを使用している。表示の理由はプレナスと同様で、「サケ目サケ科に属する魚」という理由...。
東洋経済ONLINE 2014年2月7日)

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※写真は鮭定食のイメージ

 多くの消費者は元の魚の形を知らず、色や食味が近ければ違った魚に置き換えられてもわからないため、魚介類の代替魚はひっそりと、しかし着実に進んだようです。

 食卓にはどんなフェイク食品があるでしょう。その代表となるのが、マーガリンです。もともとはバターの代替え品でしたが、安さ、使いやすさ、低カロリーなどから、いまではマーガリンを好む人も多くなりました。
 筆者も小学校の給食は、細長のコッペパンにタカマーガリンが定番でした。キャラメルより少し大きめで、銀紙にくるまれた四角いマーガリンは懐かしい昭和アイテムです。

 オフィスに目を向けると、コーヒーには欠かせないクリーム。粉末タイプではなく、プラスチック製の丸い容器に一回分が入ったコーヒーフレッシュが一般的になっています。
 主成分は植物性脂肪で、常温保存ができ賞味期限も100日。生クリームよりも使い勝手が良いので、定番化したのもわかります。

コーヒーに入れるミルク、なぜ関西では「フレッシュ」と呼ぶのか
 厳密にいうと「ミルク」は動物性油脂の商品であり、コーヒーフレッシュは、植物性油脂を乳化させて作ったもの...
ITmedia NEWS 2016年04月20日)

めいらく製品情報
植物性脂肪のスタンダードなコーヒーフレッシュ...RSPO認証油を使用しています。
めいらくグループ

 世の中にコピー商品がどのくらい出回っているのか。本物とすり替わったそれは安全なのか、元に戻す必要はないのか。個人の頭で考えた限りでは、解決策などを思いつくことは不可能のようです。

 筆者もひとりの消費者として代替品の安全性を知りたいところですが、今となってはどこから手をつけて良いか、まったくわからないほど代替品に囲まれた世の中になってしまいました。(水田享介)

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