このコラムではこれまで何度も、非純正バッテリーを安易に買わない、使わないをアピールしてきました。

　読者の方はまたこの話かと思われかもしれません。しかし、これから夏に向かって高温多湿となり、バッテリーにとっては過酷な季節を迎えます。

　安全対策が不確かな非純正の互換バッテリーは、危険と隣り合わせです。何も知らずに互換バッテリーを使い続けていると、いずれ取り返しのつかない事故を招きます。

　NHK NEWSWEB で先日、非純正バッテリーへの注意を呼びかける記事が出ました。

"非純正のバッテリー" 思わぬ火災のリスクに注意
スマートフォンや掃除機、電動工具など、生活のあらゆるところで目にするバッテリー。
「安い」「手に入りやすい」として非純正のものを使ってる方も多いかもしれませんが、思わぬ火災のリスクに注意しなければなりません。
（NHK NEWSWEB 2023年6月14日）



　NHK のニュースでは「非純正バッテリーはリスクがある」と柔らかく書いていますが、筆者には「損害を被る危険をわざわざ買ってでる事例」としか思えません。記事にある被害者は少しの差額を得してバッテリーを買ったがため、はるかに高額な電動自転車を燃やしました。まかり間違えば自身もやけどを負っていた危険すらありました。

　通販サイトにあふれる格安の非純正バッテリーは、互換バッテリーをうたっていますが、その内実を知るととても使う気にはなれません。

　非純正バッテリーは純正品と同じ形をしていますが、分解する人はいないため中の構造がどうなっているか確かめようがありません。互換品製造メーカーは開封不可をいいことに、さまざまな手抜きや違法手段で利益を上げようとします。

　高出力のリチウムイオンバッテリーは衝撃を加えたり高熱にさらされると発火し、時には爆発することがあります。
　それを防ぐために、バッテリー内部にはさまざまな安全対策を施した基板が組み込まれています。充電と放電の際はもちろん、この基板が常にバッテリーの状態を監視しています。

　バッテリーの中にはひとつの充電池ではなくいくつもの充電池（セル）をケーブルで繋いで構成しています。内蔵基板はすべてのセルが同じ電圧で充放電するよう常時監視しています（バランス充電）。

　非純正バッテリーはこうした基板設計がおろそかになっています。過充電になってもかまわず充電を続けるとセルが過熱してしまい、充電停止回路がなければ、発火・爆発します。
　また、日本にはよくある急速充電機能に未対応の基板の場合、高圧電流が流れたときに、どのような動きをするか海外の製造者は知らず、充電器に載せただけで火を噴いてもおかしくありません。

　廃品から抜き出したバッテリーセルや中古セルを集めて組み込んでいることも多いそうです。こうした作り方では、複数セルの電圧が揃うことは難しく、新品であっても充電できない不良品となります。悪質な互換品製造メーカーではそのことを隠して出荷しているのが現状です。

　電子機器や電動工具、電気自転車は各自が電圧規格を設定していて、その電圧で動くことを前提に作られています。ところが、非純正バッテリーを電圧を測定すると、基準に満たない電圧しか流れないものが少なくありません。これも外観からはわからない品質不良のひとつです。
　電圧の異なるバッテリーで動作させるという異常な状態を続けていると、電動機器はいずれ壊れてしまいます。

　このほかにも、配線間違い、半田付け不良、配線の接触、回路設計ミス、異常過熱の放置などさまざまな要因を含んでいるのが非互換バッテリーと言えます。

　非純正バッテリーを購入した人には新品にしか見えません。しかし新品なのはプラスチックケースだけなのです。

　nite （独立行政法人 製品評価技術基盤機構）では頻繁に非純正バッテリーの危険性を告知しています。

安さの裏に潜む非純正バッテリーの危険性 ～発火の事故多発！～
非純正バッテリーの中には純正バッテリーよりも多くのリスクを抱えているものがあることを認識してください。リチウムイオンバッテリーが使用されているものが多く、内部に可燃性のガスなどが含まれているため、一度事故が起きると火災といった大きな被害に発展･･･。
（独立行政法人 製品評価技術基盤機構　nite/2022年3月30日）

急増！非純正リチウムイオンバッテリーの事故
充電式の電気掃除機や電動工具の事故が急増しています。事故の多くは、事業者の指定する純正バッテリーではなく非純正バッテリー※5で発生した火災事故です。非純正バッテリーの事故は初回充電時や購入後1年未満に多く発生しています。
（独立行政法人 製品評価技術基盤機構　nite/2020年1月23日）

　来月、2023年７月から電動キックボードが免許不要になります。はたしてライダー達が交通ルールを守って、日本の交通インフラに加わってくれるのか、関心はそちらに集中しています。

電動キックボード　一定の基準で「免許不要」　新ルール呼びかけ
　来月から16歳以上は条件を満たせば運転免許なしで電動キックボードを利用できます。警視庁が注意を呼び掛けました。
（テレ朝news 2023年6月22日）



　筆者の心配は別の所にあります。海外から輸入される電動キックボードに出所のわからないバッテリーが使われている危険性です。

　市街地に電動キックボードがあふれればそれだけ安全性の不確かなバッテリーも街中にあふれることに他なりません。交通事故だけではなく、バッテリーの危険性を日本が抱え込まないことを祈るほかなさそうです。（水田享介）

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■参考サイト

電動工具の互換バッテリーを分解、検証してわかる安さの理由
（VOLTECHNO編集部）
https://voltechno.com/blog/compatible-battery/

中国ブランド電動工具の問題点、安さの裏にあるユーザー軽視の実態
（VOLTECHNO編集部）
https://voltechno.com/blog/china-powertools/