「できる!」ビジネスマンの雑学
2015年05月14日
[050]政府の負債一千兆円をなぜ人口で割るのか

 毎年のように発表される日本の借金額。今年は遂に1000兆円を超えたようです。

「国の借金」3月末は1053兆円 国民1人当たり830万円
 財務省は8日、国債や借入金、政府短期証券を合わせた「国の借金」の残高が2015年3月末時点で1053兆3572億円になったと発表した。4月1日時点の人口推計をもとに単純計算すると、国民1人当たり約830万円の借金を抱えていることになる。
(日経QUICKニュース(NQN) 2015年5月8日)

 国民1人当たり830万円の借金。なるほど、わかったようでわからない借金額。誰しもいつの間にこんなにもお金を使ったのかな、と心配になります。国民1人ひとりが知らぬ間に1千万円近い借金をしてしまった、これはまずいんじゃないか、と思うでしょうが、それは大きな勘違いです。

 まず、「国民1人当たり830万円の借金」といっていますが、実のところ借金しているのは国債を発行している「日本国政府」であって「日本国民」ではありません。だから「1053兆3572億円」を日本の人口で割ることがそもそもの間違いです。 

 暴論を言えば、国債を買わされている国民は、1人当たり830万円の返してもらえない「貸し」を政府にしている、と言った方がいいでしょうか。

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出典:「日本の財政関係資料」(財務省)

 11ページ目(総ページ数では14ページ目)にある「わが国財政を家計にたとえたら」がおそらく、このおかしな論理の元凶のようですね。

 毎月23万円も借金している家庭があったら、いま時とっくに一家離散していますよ。破綻もせずに国家財政が動いているのは、貸し主の「日本国民」が黙っているからではないでしょうか。

 1970年代まで健全だった財政が、1980年代から急速に国債に頼るようになったのは「国民」がじゃぶじゃぶ浪費して借金したわけではありません。
 1980年代から35年をかけて、日本政府と国会議員達が作り上げた借金財政が1053兆円になっただけのことです。その累積に旧大蔵省と現財務省が荷担してきたのではありませんか。

 どうせ割り算をするなら、政府、国会議員、財務省等の国家公務員を足した人数で割ったほうがまだ説得力があります。政府と議員、行政機関は自分たちの放漫経営な体質を反省して、政府の借金を減らす努力をするべきでしょう。

 国民1人ひとりの節約や努力が足りないからこうなった、と国民をミスリードするような報道はもう止めるべきです。

 1053兆円の負債があたかも国民の浪費の結果のような論調に疑問を持ったので、書かせてもらいました。
(水)

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