「できる!」ビジネスマンの雑学
2015年06月17日
[074]イルカ追い込み漁とクロサイ狩猟権に見る動物保護のあり方

 以前、このコラムで高額のハンティング料金を支払い、希少な野生動物を狩猟する「スポーツハンティング」を紹介しました。

 [040]動物愛護の名を借りた募金活動?ゾウの曲芸禁止広がる
 野生の希少動物を狩る娯楽狩猟、スポーツハンティングは欧米のお金持ちの高級な趣味だそうです。お金持ちは違う意味で野生動物を大切にしますから、気前よく大金を寄付してくれるでしょうし、そうしなくとも高額な狩猟ライセンス料は動物の保護活動にも回されています。
 だからゾウが働き口を失っても、希少動物が絶滅したとしても、PETAも「スポーツハンティング」も絶滅することはなさそうです。

 そのスポーツハンティングですが「トロフィー・ハンティング」ともいい、アメリカでは根強い人気のようです。

 世界の富裕層の中には、アフリカなどで「狩猟権」を高額で購入し、ライオンやゾウ、サイといった大型の野生動物を合法的に仕留め、毛皮や角などを戦利品(トロフィー)として持ち帰る「トロフィー・ハンティング」を好む人々がいる。
(SANKEI EXPRESS 2015年3月30日より抜粋)

 最近、イルカの追い込み漁が「残酷だ」と問題提起され、日本動物園水族館協会(JAZA)は世界動物園水族館協会(WAZA)から除名通告まで受けました。結局、JAZAは追い込み漁のイルカ入手を止めることでWAZAに残留することを決定しました。

 生きたまま捕獲し展示する「追い込み漁」と娯楽として射殺する「トロフィー・ハンティング」のどちらが残酷なのか。イルカは知能があるからというが、クロサイに知能はないのか。そもそも絶滅危惧種の殺傷権(狩猟権)を売買することはレッドリストの精神をけがしていないのか。
 日本には数多くの報道番組がありいつも正義のペンをふるっていますが、この問題をセットにして取り上げた報道機関はひとつもありません。

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米国人に食べ尽くされて絶滅したアメリカリョコウバト

「サイ狩猟権」行使へ 米当局、実質OK
落札代で保護活動、死骸持ち込み許可
 米魚類野生生物局は29日までに、アフリカ南西部ナミビアで狩猟したクロサイの米国内への持ち込みを許可する方針を示した。ナミビア政府の委託を受けた米テキサス州の狩猟団体が死骸を"戦利品"として持ち帰ることなどを特典にクロサイの「狩猟権」のオークション(競売)を実施し、米政府が持ち込みを許可するかが焦点になっていた。
(中略)
 競売で「狩猟権」を購入したのは米国人ハンターのコーリー・ノールトン氏だが、実際にいつ狩猟を行うかは不明だ。
 ノールトン氏は35万ドル(約4165万円)で権利を落札したが、昨年末の時点で「殺害」をほのめかす脅迫状が送り付けられ、米連邦捜査局(FBI)に家族の身の安全を訴え出ている。
SANKEI EXPRESS 2015年3月30日)

 ノールトン氏は2015年5月に狩猟を行い、その模様はCNNが撮影したそうです。狩猟の正当性を裏付ける映像を残したいとのこと。アメリカ人が主張する「トロフィー・ハンティング」なるスポーツの実態をいずれ映像で見ることになるでしょう。この狩猟権の売買は毎年オークションが開かれており、全米のハンターにとっては楽しみな恒例行事のようです。

 私たちが見聞きするニュース番組ではイルカ漁やくじら漁を取り上げて、その正当性や倫理性が問われています。しかし、動物保護の名のもとに、世界規模でどんな価値観で何が行われているのか、さまざまな現象を比較しながら見ていかないと、動物だけではなく文化や伝統の絶滅(EX:Extinct)という、取り返しのつかない結末が待ち受けていないとも限りません。(水)

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