「できる!」ビジネスマンの雑学
2015年10月05日
[148]復活する出版業界、迷える電子書籍の行方。米国から

 筆者はかねてから、アルファベット文化圏の書籍はすべからく電子書籍化されるが、漢字文化圏の日本では印刷本がなくなることはない、と日頃から思っていました。

 ところがアメリカの電子書籍事情が、今年になって大きく様変わりしたようです。

アメリカで電子書籍の売上が大失速!やっぱり本は紙で読む?
【最新レポート】電子出版革命のゆくえ
「現代ビジネス」 2015年9月30日掲出 文/アレクサンドラ・オルター・翻訳/オフィス松村)

 くわしい分析は上記のレポートを読んでいただくとして、興味深いのは、電子ブックリーダーの評価が以前と変わりつつあることです。

 米国では印刷本より電子書籍が安く買えるわけではなくなってきたことがあります。印刷本を駆逐した(と思った)電子書籍は、しだいに値段をつり上げ始めました。これに嫌気がさしたアメリカの読者は、同じ値段なら実物(本)が手に入る印刷メディアを見直し始めたようです。

 つぎに興味深いのは電子ブックリーダーが、性能向上いちじるしいスマートフォンに、その地位を奪われているという分析です。ヘビーな読書家でもない一般の人々は、電話やネットのついでに本も読めるなら読んでもいいが、わざわざ電子ブックリーダーを買うほど興味はない、というスタンスです。スマホの小さな画面で読むのだから、無料もしくは低価格の電子書籍しか購読しない。本格的な書籍を購入するなら、電子書籍ではなく印刷本でしょう、と出版業界に読者が戻りつつある現状を分析しています。

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 最後に、これは米国の事情ですが、電子書籍に市場を奪われた苦い経験から、出版業界が本気で書籍流通を見直して、きめ細かな在庫管理、迅速な配本システムを構築し直したことも、よりよい方向に向かい始めたようです。

 日本の出版業界が今後、アメリカと同じように進むわけではありません。しかし、いいことづくめと思われていた電子ブックリーダーや電子書籍が、スマホという強敵に怯えていたり、自信過剰やちょっとした改革でつまずいたりと、パーフェクトな存在ではないことがわかってきました。

 わたしたちが、電子本と印刷本をうまく使い分けができるようになるには、もう少し熟成する時間と今以上のテクノロジーの進化が必要なようですね。(水)

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