「できる!」ビジネスマンの雑学
2018年05月23日
[545]又吉直樹さんのことばを聞く。NIKKEI STYLE

 又吉直樹さんといえば、吉本興業に所属するお笑いタレントですが、芥川賞作家というもうひとつの顔があり、出版された本はいずれも話題をさらっています。

 彼の書いた小説は映画やネットドラマになるなど、幅広い世代から受け入れられているのも特長です。

 又吉直樹さんが本を読むこと、若者の活字離れについて、新聞社の取材で語ったことばがあります。

「37歳まだ若手」 又吉直樹さんに聞く人生100年時代
 ――若者の活字離れが進んでいます。小説家としてどう見ていますか。

 「本を読まない友人がいて、1つのテーマについて鋭いことを言います。ただ、その意見は近代文学の中で何度も言及されてきたことで、その意見に対する反対意見もさらにその反論もでていて、すでに2つ3つ先に議論が進んでいるのです。彼が本を読んでいたら、その続きから考えられるのです。彼は賢い人ですが、もったいないですね」
日本経済新聞朝刊・NIKKEI STYLE(流合研士郎) 2018年2月19日付]

 実に含蓄に富んだことばです。読書をしない人に読書の楽しさを訴えても意味のないことをわかっている又吉さんは、実用的なアドバイスをスパッと言い切っています。

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 このことは、テレビや映画などの映像の世界、ゲームなどのエンターティンメントの世界でも言えることです。

 筆者はクリエーターを目指す若者へのアドバイスにいつもこう言います。

 「美術館に行きなさい。美術作品は写真や印刷でなく現物で見なさい」

 残念ながら、今の若者は手のひらの中の小さなちいさな画面の世界で、映像、グラフィック、ゲームを楽しむことが当たり前になっています。
 すべてのものは手の中のスマホにあり、いつだって見ることも体験することもできる。しかもかかる費用はわずかな通信費だけ。

 「遠くの美術館にわざわざ足を運び、お金を払って入場して、
動きもしない昔の絵を見てなにか得られるものはあるのかな。
ないでしょ。」


 これが大半の若者の偽らざる気持ち、本音でしょう。

 絵画とは永遠に動かない静止画です。何時間見続けても絵が変化することはありません。ただし、ちゃんと見続けた人に対しては、そのこころに訴えて、見る人そのものを変化させる力を持っています。

 絵画には、画家達が構図や色彩、タッチなどあらゆる表現方法にチャレンジした記録が残っています。忘却や抹殺という歴史の消しゴムに耐えた作品は、いまも様々な表現に影響を与え続けているのです。

 ターナー、モネ、シャガール、ルノアール、ピカソ、葛飾北斎、横山大観・・・、絵画史に残る天才画家たちが生涯をかけて苦闘し生み出した表現技術を、わたしたちは作品のなかから読み取ることができます。

 つまり、未来のアーティストを目指す若者は、過去のアーティストが悩み、考え抜いた表現を受け取ったところから作品を作り始めることができるのです。

 このことはクオリティの高い作品を作るためには絶対にはずせないことです。

 自分のオリジナリティにこだわりすぎて、過去に解決された問題にいつまでもひっかかっていては、確かに時間の無駄。もったいないですね。

 もし、あなたが美術館の絵画に何の価値も感じないとしても、まずは実物の絵画を見て、自分の感性や感受性に問いかけることから始めましょう。

 クリエイティブな仕事には、他人を感動させる何かが常に求められます。それは同時に、自分自身がどれだけ感動できる力があるかを問われているのです。

 絵画を観るとは、アートを鑑賞するとはそういうことです。美術館に行きましょう。(水田享介)

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■関連リンク
「ルーヴル美術館展 肖像芸術―人は人をどう表現してきたか」
[2018年5月30日(水)から開催](国立新美術館 公式サイト内)
http://www.nact.jp/exhibition_special/2018/louvre2018/

「生誕150年 横山大観展」
[2018年5月27日(日)まで開催]
http://taikan2018.exhn.jp/

「変幻自在!北斎のウォーターワールド」
[2018年6月10日(日)まで開催]
http://hokusai-museum.jp/water/

「【公式】プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画」
[2018年7月8日(日)まで開催]
http://pushkin2018.jp/

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