「できる!」ビジネスマンの雑学
2018年07月20日
[570]「うなぎ絶滅キャンペーン」始まる。今日は土用の丑の日

 今日、2018年7月20日(金)は、「土用の丑の日」です。

 この日は一年でもっともうなぎが食べられる日ですが、実はうなぎと「土用の丑の日」に何の因果関係もないことはあまり知られていません。

 一説には江戸時代、蘭学者・発明家の平賀源内(※1)が考案した宣伝文句、
「本日は土用の丑、鰻食うべし」
(※2)


の効果があまりに高く、そのまま定着して今に伝わったものと言われています。

 夏真っ盛りの土用の丑に、こってりタレで脂っこいうなぎの蒲焼きは売れるはずなかったのですが、私たちはいまだに200年以上昔の名コピーにまんまとしてやられているわけです。

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 夏バテしやすいこの時期に、栄養価の高いうなぎは最適。だから食べましょうと言うのは、今風に知恵を絞った常套文句ですね。
 いえいえ、費用対効果で言えばもっと安くて栄養たっぷりの食品はいくらでもあるでしょう。それは周知の事実ですが、飲食店もスーパーもあまり言いたがりませんね。

 しかし、うなぎにはもっと重大なことが隠されています。

 土用の丑の日に水を差すようですが・・・、ご存じでしたか。

「うなぎが一番美味しいのは、夏ではなく、秋」です。


 うなぎ養殖発祥の地、浜松の観光情報サイトでも明言しています。

「旬は秋です」

 実はうなぎそのものの味は冬眠を前に栄養をたっぷり蓄えた秋が一番おいしいと言われています。
「浜松だいすきネット」・うなぎ より引用)

 旬のサンマ、旬の生牡蠣にこだわる私たちですが、なぜか「うなぎの旬」を知らず、おいしくなる前のうなぎを猛暑の中、汗をかきながらせっせと食べて満足していたのです。

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 うなぎの専門店ならこのことは百も承知でしょうが、せっかくの稼ぎ時に、客の食い気をくじくわけがありません。

 いずれにせよ、うなぎにとって「土用の丑の日」ほど迷惑な日は他にないことは確かです。

 それを助長するかのごとく、「うなぎ絶滅キャンペーン」(@EelExtinguish)という、いかにも刺激的なTwitterがつい先日、登場しました。

うなぎ絶滅キャンペーン!?
 ことしも僕たち、うなぎにとってちょっと憂鬱な季節がやってきました。それは「土用の丑の日」。みんなが僕たちを食べたいという気持ちはわかるけど、あまりの人気ぶりで数が減って絶滅危惧種にも指定されている微妙な状況だからです。さらに衝撃的なのはツイッター上に「うなぎ絶滅キャンペーン」というなんとも怖いアカウントが現れ注目されていることなんです。(ネットワーク報道部記者 飯田耕太 宮脇麻樹)
NHK NEWS WEB News Up 2018年7月19日掲出)

うなぎ絶滅キャンペーン @EelExtinguish のツィートはこちら。
https://twitter.com/EelExtinguish

 今日(2018年7月20日)のツィートでは、今年は土用の丑の日が2回あることを紹介しつつ、うなぎの絶滅を呼びかけています。

「いよいよ本日7/20は土用の丑の日ですね!
うなぎの旬というわけでもなく、原材料の入手しにくさからすっかり高価になってしまったウナギですが、ただ「土用の丑の日」というだけで皆が一斉に食べてくれる日です。
土用の丑の日うなぎ絶滅キャンペーンは今年は8/1にもう一度行われます!」
(うなぎ絶滅キャンペーン より引用)

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 ウナギ絶滅を呼びかけるとは皮肉でしょうか。それとも本気?

 ところで、ご存じない方も多いようですが、2014年にニホンウナギは絶滅危惧種になってしまいました。

ニホンウナギ、絶滅危惧種に指定
 【ジュネーブ=原克彦】世界の科学者らで組織する国際自然保護連合(IUCN、スイス)は12日、絶滅の恐れがある野生生物を指定する最新版の「レッドリスト」にニホンウナギを加えたと発表した。法的な拘束力はないが、野生生物の国際取引を規制するワシントン条約が保護対策の参考にしている。資源量が回復しなければ輸出入が規制され、取引価格の上昇を招く可能性もある。
日本経済新聞 2014年6月12日掲出)

 うなぎは日本でもレッドリスト入り(※3)しながらも、食品として流通している不思議な希少生物です。このまま完全養殖のめどがたたなければ、いずれ誰も口にすることはできなくなるのでしょうか。

 ここから先は筆者の手に余る問題ですから、消費か保護かで対峙する当事者に取材した記事をご紹介します。

結局"絶滅危惧種"ウナギは食べていいのか
水産庁と日本自然保護協会に聞いてみた
―― 消費者が購入を控えることに意味はありますか、それとも気にせず購入した方が良いですか。
水産庁:禁漁にすれば養殖業者の多くは事業を続けられなくなるため、ウナギの食文化自体が消えてしまいます。水産物は持続的に利用してくことが重要なため、原因が特定できていない状態で消費者が購入を控える必要はないでしょう。
日本自然保護協会:(ウナギ不漁の)はっきりとした原因が分からない今は、予防原則にたって、ウナギの保全を最優先で考える必要があります。ウナギにかかわる業者の皆さんにはきついかもしれませんが土用の丑だから食べるという程度なら、わざわざ食べるということはしない方がよいとは思います。
ネトラボ・コンタケ 2018年2月4日掲出)

 私たちの土用の丑の日は、アメリカ人がリョコウバトの最後の一皿を食べたときよりは、はるかに問題は軽いようです。

 この夏からは、貴重なうなぎの命に感謝しながら、おいしくいただきたいと思います。(水田享介)

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■関連リンク
※1
平賀源内記念館 公式サイト
http://hiragagennai.com/index.html

※2
「第6回 平賀源内と土用の丑の日 ~稀代の才子が生んだ日本の慣わし」
(キリン食生活文化研究所)
https://www.kirin.co.jp/csv/food-life/know/activity/foodculture/06.html

※3
話題になっていませんが「ムツゴロウ」も「ニホンウナギ」と一緒に「環境省レッドリスト2018・絶滅危惧IB類(EN)/13ページ」でレッドリスト入りしています。地域限定ですがムツゴロウも食べられています。
「レッドリスト」(環境省公式サイト内)
https://www.env.go.jp/nature/kisho/hozen/redlist/index.html

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