「できる!」ビジネスマンの雑学
2019年01月18日
[636]あなたは参加する?過熱する「恵方巻き」商戦

 毎年2月、節分が近づくとスーパーやコンビニでよく目にするのが、「恵方巻き」です。
 さまざまな高級食材をぎっしりと詰めて極太の海苔巻きにしたあれです。

 ただの海苔巻きと思うなかれ。事前予約用のチラシから専用予約サイトまであり、そんなに売れるのと心配になるほど種類も豊富にそろっています。

 食べ方にも作法があります。口に入りそうもないくらい太い海苔巻きを、節分の日に決められた方角に向かって、しかも一気に食べる(らしい)のです。なぜそんな食べ方をしなければならないのか。なじみのない恵方巻き行事に、筆者は違和感しか感じてきませんでした。

 しかもここ数年は、予約数をノルマで競わせたり、作りすぎが原因の食品ロスがSNSで拡散することとなり、食品業界の行きすぎたお祭り騒ぎは批判を集める事態となりました。

 今年、農林水産省は1月11日付けで「恵方巻きのシーズンを控えた食品の廃棄を削減するための対応について」という文書を出して、大量廃棄につながるような無理な販売、作りすぎを控えるよう呼びかけました。(※1)

早くも過熱!? 恵方巻商戦 だけど...
 正月三が日が過ぎて間もないというのに、早くも盛り上がり始めているのが来月の節分に向けた「恵方巻」商戦です。ことしも各地のスーパーやコンビニなどで予約が始まりました。大量廃棄やバイトへの過剰ノルマなども指摘されてきた恵方巻"商戦"。ことしはどうなる?(ネットワーク報道部記者 郡義之 松井晋太郎 伊賀亮人)
NHK NEWSWEB 2019年1月10日掲出)

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 昨年に大きなニュースとなった予約ノルマの問題は改善したのでしょうか。

すでにノルマ?
 ことしもすでにネット上では従業員と見られる人の「恵方巻」の"ノルマ"をうかがわせるツイートも見られます。
「恵方巻の予約50個とれって言われたんですけど」
「グラフ作ったり、そういうことやっちゃいけないんじゃなかったっけ」
(NHK NEWSWEB 同上より)

 どうやら小売店の販売姿勢は変わったわけではなさそうです。

 ではなぜ、なじみのない恵方巻き行事がこんなにも食品業界からもてはやされているのでしょう。

 それは一年で最も寒さが厳しい2月という事情が絡んでいます。もともと2月は寒さと日数の短さのために売り上げは少なくなります。
どんな業界でも「ニッパチ(二八)」といって、2月、8月は売り上げが落ちる月といわれています。
 しかも2月にはこれといったイベントがなく、主な行事は節分くらいしかないのです。節分は家庭に溶け込んだ年中行事ですが、豆まき程度で食品業界が潤うはずがありません。

 これまでなすすべのなかった食品業界でしたが、あるとき関西では節分に海苔巻きを一気食いする恵方巻き行事があることに気がつきました。
 その後の展開は、ハロウィンやバレンタイン、ホワイトデーと同じように、日本社会に年中行事として定着させようと涙ぐましい努力が始まります。

 せっかく盛り上がってきたイベントですから、品不足で販売機会を逃すのはもっとも避けたい。そんな思いから、大きすぎる販売ノルマ、作りすぎによる食品ロスの解消は難しそうです。

 ところで、お作法通りに恵方巻きを食べて本当に福が訪れるのでしょうか。何も良いことがなかった人への救済はあるのでしょうか。

 この肝心の疑問に答えのない行事が本当に日本社会に定着するのか、そろそろ答えを出した方が良い時期が来ているようです。(水田享介)

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■関連リンク
※1 : 「恵方巻きのシーズンを控えた食品の廃棄を削減するための対応について」
(農林水産省/2019年1月11日掲出)

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