昨年の秋口から値段が上がり続けたお米。新旧農林水産大臣は新米が出始めれば(2024年9月)、備蓄米を放出すれば(2025年2月)値段は下がると言い続けてきました。統計ではこの半年間、米の販売価格は上がりっぱなし。筆者の近所(東京西部)のスーパーでは5キロ袋で5,000円が相場になりつつあります。4月頭に見かけた備蓄米はすぐに売り切れ、その後の補充はありません。
それをビジネスチャンスとみたのか、海外から割安の輸入米が出回りはじめました。
これを受けて江藤大臣は「日本人の主食の米を海外に頼ることは国益に反する」(2025年4月22日)、「消費者の方々も少し考えて購入をしていただきたい(備蓄しないでの意味か?)」と発言。
マスコミの最近の調べでは、3月に第1回目の入札で落札された備蓄米はいまも倉庫に眠ったままで、6月頃に出荷予定ということです。
備蓄米はどこに?保管業者からは「出荷の指示が出ていない」との声
農水大臣は「味」アピールも... 消費者が国内外で探す「代わりの品」は?【TBS news23】
保管業者は、全農物流から「3月の入札後、出荷するという連絡はあったものの、それ以降、具体的な指示がない」・・・。別の業者は、備蓄米を落札したJA全農から「『6月から一部出荷が始まる』という情報は入っている」・・・。
(2025年4月25日 TBS NEWS DIG)
このテレビ局の取材では、3月に落札した備蓄米14万トンのうち3月中に出荷したのは4,071トンと全体の3%。そこから卸売に渡ったのは2,761トンと全体の2%弱にすぎなかったそうです。
コメ高騰15週連続 「備蓄米はどこ」戸惑う消費者 備蓄米"9割超"は流通せず...
(2025年4月22日 TBS NEWS DIG)
筆者が聞いた話ですが、流通業界では米は動かしにくく保管も難しい商品で、ひとたび倉庫に入るとなかなか出ていかない・・・つまり倉庫に置いていても儲からない商品、だそうです。
さて、備蓄米とは「売り払っても1年以内に同量を買い戻すことが条件」です。同量の米を返さなくてはならないのなら、倉庫から動かさずに「買い」と「返納」の伝票処理をするだけなら流通コストも人手もかけずにコトはすみます。
この伝票操作だけで「備蓄米は国から放出され返納された実績」は残るので、国会にも国民にもやりました報告はできると言うことです。
これはまだマスコミも報じておらず、筆者の推察でしかありませんが、買い戻しという返納義務がある限り、備蓄米が倉庫から出て行くことはないのかもしれませんね。
先週末、「田んぼ×未来 あきらめないコメ農家たち」(NHK Eテレ)を観ました。
ETV特集 田んぼ×未来 あきらめないコメ農家たち
(2025年4月26日放送)
お米を作り自ら販売することで生計を立てるコメ農家の2軒を取材。一軒は160ヘクタール、従業員17人ほどを使った大規模農家。もう一軒は夫婦二人で子育てしながら3ヘクタールを耕す農家。
どちらも創意工夫しながら、また目まぐるしく変わる農政、メーカーと相対しながら生き抜いています。
役所や農協は「たったひとつのやり方だけを押しつけてコメをつくらせる」、「コメ作りの大規模化もAI農業もひとつしか方法がない」が自然は毎日、毎年変わるから、それに対応して自分が変わらなければ継続できない。
硬直した農政、自然を見ない農業指導を冷静に見つめる彼らの姿は印象的でした。
4月26日から一週間はNHKプラスで視聴が可能です。
もう少し詳しい紹介サイトはこちら。
山の日からのお知らせ
NHK番組『田んぼ×未来 あきらめないコメ農家たち』のご紹介
(公益財団法人全国山の日協議会)
大臣や大企業から「消費者は~、あれしちゃだめ、これしなさい」と言われるのをニュースで見るよりも、農業にがんばっている人たちを応援した方が心の健康には良さそう。そう思った週末でした。(水田享介)