「できる!」ビジネスマンの雑学
2025年05月16日
[978]特殊詐欺防止の切り札、取りやめの理由とは

 日々増え続ける振り込め詐欺にSNS詐欺。いわゆるトクリュウは正式名称を「匿名・流動型犯罪グループ」といい、SNSでつながったメンバーがターゲットの年配者などを言葉巧みにだまして、資産を根こそぎ奪い取る卑劣きわまりない犯罪です。

 最近では着信を警察署の電話番号に偽装して信用させるなど手口も巧妙化、悪質化しています。年配者だけではなく社会経験の浅い若者までも標的になってきました。

 この犯罪の手口にコンビニなどの電子マネーカードを購入させる方法があります。電子マネーカードの番号が金銭と紐付けになっていることを知らない被害者が、簡単にその番号を犯罪者に教えて電子マネー(金銭)を奪われるケースがあとを絶ちません。

 コンビニのレジで払ったお金がなぜ、会ったこともない匿名の犯罪者の手に渡るのか。購入したカードは自分の手に残っているのに・・・。電子マネーカードの仕組みに疎い人は途方に暮れるほかありません。

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 こうした事態を防ごうとある警察署で画期的な防犯方法が考案されました。

電子マネーの詐欺被害防げ ダミーカードを県内コンビニに設置
警察は、「ウイルス感染除去専用」などと書かれた偽の電子マネーカード「ダミーカード」を作成し、県内のコンビニで設置を始めました。
ダミーカードは、犯人の指示を受けた被害者が手に取りやすいデザインとなっていて、実際にレジに持ってきた場合は、店員が声をかけて詐欺の被害にあっていないか確認する・・・。
信州 NEWS WEB 2024年6月10日

 犯罪者がよく使う「ウイルス感染」、「有料サイト未納」、「裁判費用」といった言葉がダミーカードに書いてあり、それを手に取った人はまちがいなくだまされているはず。店員から声かけもやりやすいと好評。防犯のアイデアとして秀逸でした。

 ところがこの方法に「待った!」がかかってしまいました。

電子マネー詐欺防止の「秘策」ダミー販売急停止 コンビニ側の言い分
コンビニエンスストアの陳列棚に電子マネーカードに似せた偽の「ダミーカード」を並べる防犯対策に、コンビニ業者や電子マネー発行事業者が「待った」をかけている。
毎日新聞 2024年12月30日

 わずか半年で終わってしまった「ダミーカード大作戦」。いったい何がいけなかったのでしょう。記事では多くのことは語られていません。

 電子マネーカード自体はまっとうなビジネスです。防犯のためとはいえ同じ棚の中にウソのカードが紛れ込むだけでも大きなイメージダウンになりかねない。カード事業者はそう考えたのでしょうか。

 しかし、一度はダミーカードは棚に並びました。それはコンビニで働く店員の皆さんもこの組織犯罪に組み込まれていることに忸怩たる思いがあり、現場に設置しようと動いたに違いありません。

 まっとうな人たちが働くコンビニがあろうことか犯罪に利用されている。ことは重大です。コンビニ事業者、電子マネーカード事業者のみなさん、まっとうな考えで再導入を検討していただけないでしょうか。(水田享介)

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【関連サイト】
大阪府警察公式サイト・特殊詐欺にご注意!
https://www.police.pref.osaka.lg.jp/seikatsu/tokusyusagi/6645.html

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