AIが世の中に受け入れられ普及するにつれ、社会に様々な変化をもたらしています。
身近な例で言えば、ネット検索でしょう。
かつて「ググる」といえば、調べたい事をGoogleで検索し、表示された関連リストをクリックすることで目的の情報を探していました。
ところが最近では、検索結果ページの冒頭に「AIによる概要」がテキストや画像を表示して、おおよその内容までわかるようになりました。![]()
※検索結果ページの例
さらに「もっと見る」ボタンをクリックすると、より詳しい内容がまとめた形ででてきます。もうこれ以上の調べる必要がないくらいに。
利用者にはとても便利なこの機能もAIのまとめ機能が使われています。![]()
※「もっと見る」をクリックするとポイントが箇条書きででてくる
しかしこれまで検索結果の上位に並ぶために、お金を払って広告を出稿していた企業や広告代理店には大きな痛手となっています。
関連ワードを入力した消費者がリンク先に全くアクセスしなくなったからです。
これまでアクセス数アップに有効だった「リスティング広告」そのものが、検索にAIを加えたがため駆逐されたのです。
AIが利用されるのは、学校の宿題やレポート作成から、論文執筆の補助まで-その活躍の場は情報提供だけでなく知的生産の領域まで広がっています。それを使いこなせる若者はより高度な学びの環境を得られました。
旧世代に属する筆者のような人間にはとてもうらやましく見えて仕方がありません。
ところが若者の頼れる右腕のAIはもう一方で、とても残酷な性質も持ち合わせています。
アメリカの大学の研究では、企業がAIを本格的に業務に組み込み始めた結果、未経験者の採用が減少しているとの結果が出ました。
AIを導入すると若年労働者の雇用が13%も減少することがスタンフォード大学の研究で判明
ソフトウェア開発者やカスタマーサービス担当者など、AIの影響を特に受けやすいとされている職種において、22歳~25歳のキャリア初期の労働者の雇用が大幅に減少していることが分析から明らかになりました。一方で、同じ職種における経験豊富な労働者は安定しているか成長を続けている...。
(GIGAZINE 2025年08月31日)![]()
これまで新卒の若者、未経験者などの若年労働者枠は、どの企業にも用意されていました。毎年もしくは定期的に若者を雇用することで組織の高齢化を防いだり、組織が培った技術やノウハウを伝承させるためです。
また、若者に軽作業をまかせることで企業風土になじんでもらうという側面もありました。
AIはこれらのいわゆる雑務、補助業務などをすべて処理しだしたのです。未経験者に職場の椅子をあえて用意する必要はなくなりました。
そしてこうした傾向は「雇用の減少は業界や企業の状態を問わない」、「雇用の減少は特定の業界や企業の影響を受けたものではなく、AIの導入によるものである可能性が高い」(「」内は上記記事より引用)と結論づけられました。![]()
AIを使いこなして優秀になったはずの若者たちは、逆にAIの優秀な業務サポート能力のせいで就労機会を奪われている。この研究報告はアメリカの労働環境を調べた結果によるものですが、日本でも同時進行していることは十分に考えられます。
コンビニやスーパーのレジに、胸に「新人です」バッヂをつけた若者を見かけます。値段がわからなかったり、バーコードの読み取りが少し遅かったりしますが、それを怒るお客さんを見たことがありません。
先日、筆者はある契約内容を確認する電話を受けましたが、サポート担当の若者から同じ質問を二度受けました。筆者は「マニュアルをみながらやっているだろう」からと律儀に応えました。
実務で訓練を受けている人を見るのは、意外に気持ちのいいものです。効率は関係ありません。
AIが跋扈する世の中になりましたが、人と人の間ではゆとりのある関係を守っていけるといいですね。(水田享介)