先日、日本の沿岸で計画されていた大規模な洋上風力発電が中止されました。三菱商事が中心となって2021年に受注し、秋田県、千葉県沖合に134基の風車を建設し、170万キロワットを発電するとしていました。
中止の理由はコストに見合わない計画になったため。つまり売電してもその建設費や維持費がまかなえないことがわかったからです。
三菱商事 洋上風力からなぜ撤退?今後どうなる?【Q&A】
三菱商事はことし2月、洋上風力発電事業に関連して去年4月から12月までのグループ全体の決算で522億円の損失を計上したと発表。このときの会見で中西勝也社長はこの事業で当初計画していた採算がとれなくなった...。
(NHK NEWSWEB 2025年8月27日)![]()
※イメージ
風力発電は地球に優しい再生可能エネルギーで、地球環境を守り続けるには必要な設備と聞いたことがあります。しかし、競合入札までして建設する権利を獲得した企業は、儲からないようなのでとあっさり手を引いてしまいました。
太陽光発電等を普及させるため、国は2012年から「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」を設けて、その買い取り経費を国民に強制的に負担させています。この賦課金は電気代に上乗せされているため、支払い拒否はできず、実質的には新たな税負担となっています。
再エネ賦課金、標準家庭で月196円負担増 25年度から
...再生可能エネルギーの普及のため電気料金に上乗せしている賦課金を2025年度は1キロワット時あたり3.98円にすると発表した。2年連続で引き上げる。月400キロワット時を使う標準家庭で4月使用分から月平均で24年度より196円負担が増える。
(日本経済新聞 2025年3月21日)
2012年から始まったこの「再エネ賦課金」は年々増加傾向にあり、2025年度は2年連続の値上げとなり過去最高額となりました。
自然からエネルギーを取り込む・・・その仕組みは高度な技術から成り立っているはずで、そろばんをはじくのも大変でしょう。しかし、十年以上も賦課金を徴収して進めてきた国の施策が、一企業の心変わりで行き詰まるとはどういうことでしょうか。
そもそも国が行っている再生可能エネルギー関連施策にどれほどの成果があり、将来性はどの程度あるのか、ほとんど広報はなされていないようです。それを精査して軌道修正を求める組織はあるのでしょうか。
再生可能エネルギーといいながら、発電で得た電気エネルギーだけが買い取り対象となっているように、制度の偏りも気になります。
いま日本各地で手つかずだった森林、湿原、湖などが徹底的に剥ぎ取られ、無機質なソーラーパネルが敷き詰められるという悪魔のような事態に見舞われています。
千葉・鴨川のメガソーラー建設「37万本伐採」
「許せば釧路と同じに」野口健氏が警鐘
野口氏は8月、北海道の釧路湿原周辺で進められているメガソーラー建設計画について、環境破壊を引き起こしているとしてSNSで反対の声を上げ、多くの著名人が賛同するなど反響を呼んでいる。
(産経新聞 2025年9月1日)![]()
※山林の内側を剥ぎ取って完成したメガソーラー(三重県四日市市)![]()
※釧路湿原周辺で稼働中の大規模ソーラー施設
またこうした施設の送電ケーブルを狙った犯罪組織が全国を飛び回り、日本国内の治安は日に日に悪化しています。
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エコな仕組みとはどんなものでしょうか。本当に電気だけがエコな資源なのでしょうか。
この問題を考えるだけの知見を持たない筆者は、モヤモヤとした気分で再エネ課金を今日まで支払い続けてきました。
そうしたなか新たな再生可能エネルギーの技術を見つけました。
「砂時計」・・・ではなく、「砂電池」です。
世界最大の「砂電池」がフィンランドで稼働開始
...再生可能エネルギーの発電施設から生じた余剰電力で内部の砂を加熱させることで機能します。およそ600度近くまで加熱された砂は長時間熱を保持し、空気を送ると熱風が生じます。この熱風で水を蒸気に変換したり、暖房用の温水を生成したりできます。
(GIGSZINE 2025年09月01日)
この砂電池は2018年にフィンランドで設立されたスタートアップ企業が開発しました。2022年に最初の砂電池(最大8MWh)が稼働し始め、今年、その12倍の最大100MWhの熱エネルギーを貯蔵可能となっています。
日本でも豪雪地帯では冬に降った雪を夏まで貯蔵して、冷蔵に活用していると聞いたことがあります。
その蓄熱バージョンでしょうか。ダム発電は水の位置エネルギーを利用しますが、砂電池は熱そのものを蓄熱できるため、熱エネルギーのまま暖房や加熱に使うことでロスを抑えられるとのこと。
日本には砂と岩だけの枯山水という庭を発明した柔軟な発想がありました。再生可能エネルギーにもそれに近いチャレンジが必要ではないでしょうか。![]()
※石庭の砂
「砂電池」を使ったエネルギー利用は、リチウム電池を使うことしか頭にない日本の政策ではでてこない発想と言えるでしょう。
日本は世界有数の火山国であり地熱資源は豊富にあるそうですが、ほとんど活用されていません。メガソーラー建設、東京都の太陽光ポータルなど、ソーラーパネルを国土に敷き詰めるしか手段はないのでしょうか。(水田享介)