JR東日本は、西は神奈川県から北は青森県までの鉄道網を持ち、また首都圏の全エリアをカバーする鉄道会社です。
日本を代表する大企業ともいえるJR東日本ですが、ここ数年の間に鉄道トラブルが頻発しており、運休発生のニュースをしばしば聞くようになりました。
2026年の年が明けてからでも、山手線や宇都宮線など首都圏で長時間の不通状態が続き、数十万人単位の乗客が足止めを受けました。![]()
しかもこれらのトラブルはすべて「技術的な問題により発生した運休」と判明。1月16日の山手線・京浜東北線の停電事故は作業ミス、2月8日~9日の宇都宮線は架線の摩耗放置という初歩的なミスが原因でした。
JR東日本で相次ぐ大規模輸送トラブル、背景に修繕費削減...
社長が謝罪「経営の根幹に関わる事態」
コロナ禍で鉄道利用者が減ったことを受け、同社(JR東日本)は2020年度からの3年間で修繕費を約800億円削減していたという。喜勢氏は「最低限の安全レベルは守った」としつつも、修繕規模の縮小がトラブル続発の背景の一つにあると認め、...。
(読売新聞オンライン 2026年2月10日)
JR東日本ではコロナ禍で鉄道利用が減った分を修繕費を削っていたそうですが、どのような経営をしているのでしょうか。そういえば「みどりの窓口」も大幅に削減し、遠出の切符が買いにくくなりました。
JR東日本、32年3月期売上高4兆円へ 「みどりの窓口」にAI導入
不動産を中心とした「非鉄道事業」を拡大し、2032年3月期に売上高にあたる連結営業収益を26年3月期比32%増の4兆円超、営業利益を81%増の7000億円程度に引き上げる。業務効率化に向けて「みどりの窓口」に人工知能(AI)を導入する方針...。
(日本経済新聞 2025年7月1日)
4兆円企業を目指すのなら、思い切った改革は必要でしょう。「エキナカ」の流通業、「Suica(スイカ)」を中核としたカード決済ビジネス、駅ビルなどの不動産業など、儲けのタネがたくさんあるのが鉄道ビジネスでもあります。
ただし、上記の2025年の記事の後半ではすでに鉄道トラブルの問題に触れています。
24年以降相次ぐ列車の不具合については、同社グループに起因する鉄道運転事故や重大インシデントをゼロとする目標を継続する。喜勢陽一社長は「究極の安全の追求を経営のトッププライオリティー(優先順位)に置くことに、いささかも変更はない」と述べた。
(日本経済新聞・2025年7月1日 前掲記事より)
24年以降の列車不具合とは、新幹線の架線損傷トラブル(2024年1月23日)、「はやぶさ」と「こまち」の走行中の連結器分離(2024年9月19日)などがあります。翌年、2025年5月22日には山手線を走行中の車両の4割がパンタグラフを損傷する事故が発生。
こうした事故履歴を見ると、近年は電気系統のトラブルで路線全体で長時間の運休となるケースが増えていることがわかります。
筆者はある航空会社で航空機体整備や安全運行などに関わるプログラム業務を担当していました。とはいえ、航空機と鉄道では機体構造も運用方法も異なるため、軽々しく鉄道の運休原因や改善策を書ける立場にはありません。
鉄道への技術的な知識の少ない筆者ですが、最近の鉄道について感想を申し上げてみます。
鉄道車両は著しく進化しており、揺れの軽減や快適なエアコンなど乗り心地は改善され、また液晶パネルやWi-Fi、電源コンセントなどのIT化も取り入れています。それはすばらしいのですが、車両が技術的な安定状態にたどりついているのでしょうか。車両が新しくなると、モーター、電源、パンタグラフなどの核になるパーツも最新技術で作られているでしょう。
それらがいったん故障した時にどのような挙動をするのか、もう少し検証作業が必要なのかも知れません。
また、電気系統のトラブルを防ぐには人による目視が欠かせないようです。山手線のパンタグラフ損傷事故(2025年5月22日)はひとりの乗務員が異常に気付いたことで事故の拡大を防いでいます。
修繕費の800億円削減の分が人件費の削減、保守要員の削減に当てられてはいなかったでしょうか。
保守要員の削減は保守ノウハウの継承が途絶えることになりかねません。保守マニュアルはあるでしょうが、書類では伝えられない保守技術が失われていたとすれば、いくら保守費用を増やしても事故を防ぐことはできなくなります。![]()
保守の知見が先輩から後輩へとただしく引き継がれる体制は維持されているでしょうか。いま一度、保守体制の見直しが必要かも知れません。また、新型車両に対応した新たな保守マニュアル作りも求められます。
幸いなことに、数々のトラブルはありながらもいまだ大事故にはつながっていません。今こそ、これらの改善策に取り組む機会だと思います。
日本の鉄道交通網は安全で正確な運用で世界から高く評価されています。この伝統がいつまでも続くことを願ってやみません。(水田享介)