最近のカレンダーは日付と曜日だけのものが主流で、歳時や季節の行事を併記する「暦(こよみ)」は見かけなくなりました。
21世紀の現代ですから致し方ないことでしょう。
エアコンが完備したオフィスや自宅は快適で不満はありませんが、それでも古(いにしえ)の時代から続いてきた伝統も悪いものではありません。
昨日の3月5日から「啓蟄(けいちつ)」に入りました。
この啓蟄は一日で終わりではなく、3月5日(木)~3月19日(木)までの15日間がこれに該当します。
啓蟄とは?2026年はいつ?
三寒四温・花粉・春の嵐 天気から読み解く
土の中で冬ごもりしていた虫たちが姿を現す季節とされますが、実際には天気や空気の変化もはっきりと感じられる時期。寒暖差が大きくなり、花粉の飛散が本格化し、低気圧の通過によって荒れた天気になる...。
(tenki.jp/小野聡子 2026年03月05日)
https://tenki.jp/suppl/satoko_o/2026/03/05/32785.html![]()
では啓蟄はいつ、どこで始まったのでしょうか。その由来を紐解くと意外な歴史がわかりました。
啓蟄は古い暦で定めた「二十四節気」のひとつで、春を6つに分けた3番目にあたる「節気名」になります。啓蟄の後は「春分」で、これは現代のカレンダーにも「春分の日」という祝日で残されています。
では二十四節気はいつ定まったのでしょうか。
古い記録には、紀元前140年頃の前漢時代に編纂された「『准南子』天文訓」にこの二十四節気が定まったとあります。(※1)。
ごの天文訓には他にも「立春、夏至、立秋、秋分、冬至、大寒」など今でも使われている季語が収録されています。
※1)「前漢の『准南子』天文訓で概ねそろっています」
(国立天文台>暦Wiki>中国での変遷 より 2026年1月4日)
https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/C6F3BDBDBBCDC0E1B5A42FCEF2BBCB.html![]()
※「『准南子』天文訓」の扉【早稲田大学蔵書】![]()
※「『准南子』天文訓」にある「驚蟄」(日本の啓蟄にあたる)【早稲田大学蔵書】
https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/ro13/ro13_00773/ro13_00773_0001/ro13_00773_0001.pdf#page=61
実は古(いにしえ)の言葉が季語になり、今も使われている例は西洋にもあります。
英語の月名のマーチ(マルス:3月)、ジュライ(ユリウス・カエサル:7月)、オーガスト(アウグストゥス:8月)は二千年前の古代ローマ帝国では神様や皇帝の名前でした。ラテン語はローマ帝国の衰退と共に失われましたが、ヨーロッパ各国の季語の中にその痕跡が残されています。
洋の東西を問わず、季節の言葉には他に置き換えられない普遍性があることを示しています。
21世紀に生きる私たちですが、二千年以上昔に生まれた古代中国の季語を抵抗なく使っているわけです。
二十四節気は、紀元前の中国大陸で季節の移り変わりを表す言葉だったはず。それがなぜ、島国の日本で今も季語として通用しているのでしょうか。
考えると不思議なことです。
昨日の3月5日、啓蟄と聞いた筆者はふと気になって、育てているコブミカンの鉢を手に取りました。
葉の裏側には羽虫が黒い卵をあちこちに産み付けていました。やはり啓蟄とは「冬ごもりしていた虫たちが姿を現す季節」は本当だったようです。
(前出tenki.jp記事より引用)
いえ、啓蟄を告げる天気の声は案外、虫の耳にも届いているのかも知れませんね。(水田享介)