先日、とある科学報道番組で司会者が年若い女性タレントに「日頃からAIを使いますか?」と尋ねました。彼女は「はい、よく使ってますよ。調べ物したり、時には悩み相談も・・・」。
あっけらかんと答える彼女に筆者は驚くと同時に、AIが人の心にまですっと入り込む巧みさに危機感を覚えました。
今年2月に小中高生のAI利用を調査したところ、心理的につらさを感じた時の相談相手がAIと答えた生徒は50%にのぼっています。
「死にたい」令和の小中高生、相談相手は大人よりも生成AI
過度な依存は危険もはらむ
「死にたい」「消えたい」といった気持ちの相談先として生成AIと回答した小中高生が50%となった。友達(19%)、各種相談窓口(18%)と続き、家族や先生など「身近な大人」と回答したのは14%にとどまった。
(産経新聞 2026年4月4日)
生成AIは「ググる」などの文字入力検索に置き換わるツールとして登場すると、文章作成や雑談もこなせることから一気に利用者が広がりました。いまではAIと結婚しましたと宣言するおとなまで出始めています。それは女性、男性を問いません。
人間の恋愛対象にまでなる生成AIとは何ものでしょうか。AI自体は男でも女でもないノンセクシャルな存在(と筆者は思っています)。しかしその実態は、ひとが望む「理想の結婚相手を演じる擬態」にすぎませんから、AIとは人間を欺き続ける悪質なピエロかも知れませんね。![]()
では日本の企業において、AI導入はどのような形で進行しているのでしょうか。
サイバーセキュリティ事業を展開する株式会社アクトが、企業における生成AI活用の実態を調査した「生成AI導入のジレンマ白書 2026」を公開しました。
(※調査期間:2026年4月15日~16日、有効回答数:1,011名)
この白書では「3つのジレンマ」と題して、AI導入に消極的な経営層とフライング気味に導入をいそぐ現場との乖離をレポートしています。
【白書の概要】
1. 7割超の社員が"隠れAI"化:ルールを待てない現場の独走
経営層がAI導入に足踏みする一方で、現場では73.1%が会社非公認のAIツール(シャドーAI)を利用していることが判明しました。
2. セキュリティの死角:経営層の懸念と現場の不安
企業資産である「機密データの漏洩」を恐れつつも約9割の社員がAI利用に手を付けている。その精神的負担は隠されたままである。
3. 突破口への渇望:8割超が求める「技術による解決」
8割を超える社員がAIに「技術的な安全装置」があれば、AI活用を積極的に進めたいと考えている。
この白書の詳細はこちらからダウンロード可能です。
ダウンロードはこちら》(株式会社アクト・公式サイト)
一時期のAIブームを経て、拙速なAI導入の危険性に警鐘を鳴らす記事も出始めています。
タイパ至上のAI導入は要注意
昨今の生成AI(人工知能)の普及において危惧されるのは、「タイパ(タイムパフォーマンス)」至上主義による短絡的なAIの導入だ。AIは人間の仕事を奪うのか、補完するのか。
(日本経済新聞 2026年4月23日)
若手社員から業務の効率化のためと提案され何となくAIを導入したが、どんなリスクが潜んでいるか誰も気にしていない。他社も導入しているからとなし崩し的にAI利用は浸透したが、社員が何に利用しているのか、AIをどう管理するのかもわからず野放し状態である。
社内に得体の知れないリスクが入り込んでいるのでは・・・。そんな疑心暗鬼のままAIへの依存度だけが高まっているようです。いっときのはやり病のようなAI活用なのか。それとも抱え込んだリスクになるのか。
AI導入に悩む管理職や経営者の姿は、1990年代にオフィスを席巻したOA化(オフィス・オートメーション化)の嵐を思い起こさせます。OA化の掛け声でパソコンの導入は進みましたが、はたして事務のオートメーション化は果たされたのでしょうか?
AI導入に伴うセキュリティリスク、ガバナンス問題を明らかにする「生成AI導入のジレンマ白書 2026」は、これからのAI活用の指針となるかも知れません。(水田享介)