現代社会のインフラといえば、SNSやAIなどのIT技術でしょうか。それともスマホやタブレットなどのIT機器でしょうか。
どちらも仕事や日々の生活に欠かせないもので、当たり前ですが利用するにはネット接続は常識になっています。
ところで、そのネットの中を行き来するデータの源(みなもと)、川で言えば源流はどこにつながっているのか、考えたことはありますか。
スマホに呼び出すデータの出どころ、そして入力したデータの行き着く先がいわゆる「データセンター」です。
このデータセンターがいま、大きな社会問題化しているのです。
それはデータセンターの巨大化、都心への集中化が原因のひとつと言われています。
都心にもデータセンター 建設ラッシュいったいなぜ?
国内に500以上あるデータセンターのうち、首都圏には、わかっているだけでも200あまりが集中し、建設ラッシュとなっています。
そのなかで「データセンター銀座」とも呼ばれているのが、千葉県印西市・・・。
(NHK ONE 2026年5月15日)
データセンターの立地条件は以下のようになりますが、首都圏近郊に集中して建設される傾向が、この問題をさらに顕在化しています。
【データセンターの立地条件とは】
・都心のオフィスから40キロ圏が通信遅延の許容範囲
・自然災害に強い安定した地盤と水害のない内陸部
・莫大な電力と水資源を安定して供給できる地域
・広大で平らな土地
・治安の良い地域
(※筆者の経験による調べとまとめ)![]()
※市街地に建つデータセンターのイメージ(AI画像)
実は自治体にとって、データセンターは安定した固定資産税の税収が見込まれる「優良物件」でした。上記の記事にあるように千葉県印西市のデータセンターからの「固定資産税は、5年間で約100億円増えました。」とあります。
いちど建ててしまえば、人や車両、物品の出入りも少なく、有害物質などの汚染もないので自治体からは「手間のかからない上客」と思われていたふしさえあります。
しかし、現実のデータセンターはそうではありません。IT技術者として働いてきた筆者の経験では以下の問題を内包しています。
まず、24時間稼働のため、排熱のためのファンやエアコン等の騒音は休むことがありません。建屋は窓ひとつなく室内は常に明かりに照らされています。非常用電源発電機はメンテナンスのため、ひとたび稼働を行うと黒煙と騒音を上げて駆動します。
内部は一般には非公開で人は巡回してはいますが、清掃のニーズが希薄なのか衛生的とはいえません。(※筆者の感想)
また、非常時用にUPS(無停電装置)と一緒の巨大なバッテリーが、CPU、GPU数に匹敵する数が積み上がっています。バッテリーはリチウムイオン電池が主流のため、建屋内が高熱や火災に見舞われると消火は困難です。
サーバーもバッテリーも数年~5年程度で交換しないとサービス品質も性能も低下するため、実際は人と機材の出入りも頻繁に行われています。
韓国では昨年、政府管理のデータセンター内で火災が発生し、サーバーが全焼しました。原因はUPS用バッテリー交換の手順ミスと後に報道されています。
韓国、データセンター火災で政府資料8年分消失 「デジタル政府」に傷
韓国で9月26日、政府が管理するデータセンターで火災が発生・・・。709の政府系システムが中断・・・か日本のマイナンバーにあたる住民登録システムなどが使えなくなり、金融や郵便、医療、災害情報システムなど日常生活に直結するサービスにも支障が及んだ。
(日本経済新聞 2025年10月9日)![]()
※データセンター内部のイメージ(AI画像)
この事故では、火災発生から3時間近くも電源を落とさなかったことも消防担当から問題視されています。火災中もバックアップを取っていたのでしょうか。それともネットを遮断する権限者が不明確だったのでしょうか。今も原因は明らかではありません。
人為的ミスによる類似の火災は、アメリカでも起きています。
CMEデータセンター停止、人為的ミスが原因
CyrusOneが運営するCH1データセンターの現地スタッフと請負業者が、気温が氷点下の気温が近づく前に冷却塔の水を抜く際の標準手順を守らなかった・・・。
(データセンターカフェ 2025年12月9日)
多くのデータセンターの管理は経験豊富なIT技術者が担当しますが、現場作業は手順書通りに動く短期労働者やアルバイトが行うため、作業後の工程チェックは欠かせません。事故が頻発するからには必ずしもそうはなってはいないようです。
データセンターとは日常的に騒音と高熱問題を抱えながら、ひとたび火災を起こすと消火は困難、地域にも多大な被害をもたらします。
しかし、今の日本ではデータセンター建設を規制する法律はなく、一般の事務所と同じ扱いです。商業地や住宅地の中、駅前にさえ建設が可能となっています。
NHK記事の冒頭にあるように、東京タワーに隣接して黒い壁の建屋がそびえ建つ予定です。近い将来、壁に遮られた東京タワーを想い出として撮影したい人はいるでしょうか。
暮らしに便利なスマホ、そして手放せないSNS、AI・・・。わたしたちは一時の便利のため、将来にわたり街並みや生活圏の景観、美しかった自然、観光地、そして膨大な水や電源という資源を無機質なデータセンターに明け渡してもいいのでしょうか。
この問題を考える時間はもうあまり残されてはいないようです。(水田享介)