普通の本屋を続けるために
2023年03月21日
第3回・楽しい仕事をするんだ

前回「『生産性を上げる』とは、作業標準を作り、トレーニングしチェックの仕組みを作ることだ」とお伝えしました。
今回は作業標準、その中でも書店の作業の実に40%を占める「品出し」の作業標準についてお話しします。



【1】楽しい仕事をする

作業の生産性を上げる目的はズバリ「楽しい仕事をすること」です。
毎日必ず行われるあらゆる「作業」にフォーカスしつつ、
それを「楽しい仕事」にしようという目的を掲げています。
皆さんも色々な「楽しい」を日々の業務の中で感じていると思います。

オススメした本が売れた!
オススメしたい本があるからPOPを書いた!
美しく本を並べた!
あの本の隣にこの本を並べてみた!
おぉ今日のこの新刊!
はたまた、会計後にありがとうって言われた!
問い合せでスムーズに対応したらビックリされた!等々。

私は、お客様との本を介したやり取りの中で楽しさが発現すると考えています。
そんな考え方をもとに「楽しい仕事をしよう」という以下の3つの目標を掲げました。


[1]売上に繋がる楽しい仕事をしよう
もはや毎日のルーティーンワークである品出し作業の生産性を向上し、より売上につながる「正味作業」の時間を充実させよう、ということです。
ここでの正味作業とは、
・発注
・売場メンテナンス(整理)
・売場変更
・フェアを考える
・仕掛け商品を選定する
・売上データ分析をする
・スリップの技法を熟読し実施する、等です。
無限ではない時間について考えて、毎日の品出し作業の仕組みを運用しています。

[2]お客様の満足度をあげる
最終的なゴールとして掲げるべきなのは作業の効率改善ではなく
「お客様の喜ぶ売場」です。
面白い本に出合える、素敵な本を発見する、思わず本を買ってしまった、という提案性のある売り場づくりをする時間を捻出するため、
生産性の向上するのです。

[3]気持ちよく働く環境をつくる
色々な人が集まっている書店の現場なので、
ルールはやはりなければいけません。
ハウスルールのみならず、作業のルールも必要です。
ルールという基準があれば何かの時困ったり、迷ったり余計な気をつかったり、といったことがなくなると思います。
また、基準があって初めて良し悪しが判断できますし、議論が改善活動にもつながります。


この取組みの初期に、
児童書売上一番店でこんな事が起きていました。

その日、店に『かいけつゾロリ』の新刊が届いていました。
1スパンでコーナーにもしていて、前の巻が平台に4面あったので、
品出しの作業としては「ちょっと移動させて積み上げる」程度の大した労力でないものであったと思います。
しかし児童書担当がお休みなので誰も品出しをせず、
結果としてブックトラックにのったまま一日を終えました......。
理由を聞いてみると
・「触らないで」と普段から言われている
・よかれと思って品出ししたのに後日怒られた経験がある
ということでした。

そこで作業標準を作りました。



【2】品出しマニュアル

ます品出し作業のトレーニングをすべく、作業標準とマニュアルを作成しました。
作成の目的は以下の通りです。

[品出し作業を標準化する目的]
店頭作業構成比の約40%を占める品出し作業の「最速化」と「多能化」で生産性の向上を図る。
品出し作業の手順やかける時間を決めて、誰でも同じレベルで品出しが出来るようにする。

ズバリ、「最速化」と「多能化」で生産性を上げていこうという考えで作られたマニュアルです。



〈2-1〉品出し作業最速化 

日々変動する入荷量に対して、当日の入荷量×標準時間で目標を立てて毎日クリアしていこう、という宣言がつまり「最速化」です。
そして、そのための目的と手順を定めました。

[品出し作業最速化の目的]
品出し終了時間を明確にすることで時間意識を高め、効率よく作業ができるようにする。
商品を目標時間内で陳列し、機会損失を防ぐ。
最短時間で品出し作業を終了させ、売上に直結する作業(正味作業)を行う時間を捻出する。



〈2-2〉品出し作業多能化

日々変動するジャンル別の入荷量に対して、作業標準を決めることによって誰でも品出し作業が出来るようにしていこう、という宣言がつまり「多能化」です。そのための目的と手順も定めました。

[品出し作業多能化の目的]
1人のスタッフが複数ジャンルの品出し作業をすることによって、作業効率を上げる。
誰でも品出し作業が出来れば、入荷冊数に応じた人員の配置を自由に行うことが可能になる。
人員の配置を自由にできれば、日々変動する作業量を平準化することができる。
平準化とは日々のスタッフの業務量、業務負荷の偏りを減らし均等に近づけること。

これら二つの考えのもと、品出し作業を実施しています。

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