普通の本屋を続けるために
2023年04月20日
第4回・マニュアルと「品出し朝礼」

ここでは「どんなマニュアルをつくったのか」をお話しします。

まずは
・品出しマニュアル
・品出し朝礼マニュアル
この2つです。

作業については

・雑誌付録付け作業
・雑誌抜き取り作業
・返品作業
・客注管理
・配布特典管理

のマニュアル、また

・問い合わせやメンテナンス、インカムのマニュアル
・ミーティング、平台計画のガイドライン

も作成しました。
在庫回転率を上げる観点では

・ストッカー管理
・ムック抜き取り
・文庫・コミックの抜き取りマニュアル
があります。

マニュアルは、改善プロジェクトが全社で行われる中で作成されています。
本の生産性向上プロジェクトであれば、本の作業マニュアルがつくられます。
その他、年単位で実施プロジェクトは一部変更があります。
例えば、レンタルの生産性向上プロジェクトであればレンタルの作業マニュアル、というようにです。

環境改善プロジェクトで作成したバックヤード環境整備ガイドラインは、他書店でも
改善課題に含んでいます。


【品出し朝礼マニュアル】

ここからは、いくつかのマニュアルの設計の背景や目的をお伝えしていきます。
日々変動する入荷数に対して、また箱を開けてみないと商品が分からない補充商品に
対して、
「朝の入荷個数から終了目標時間を設定して品出し作業をしていこう」
「そのために朝礼で時間を共有しよう」
というのが品出し朝礼です。
そして、その朝礼でどのように朝礼を実施するか、を決めたものが品出し朝礼マニュ
アルです。

作業標準ですので、このマニュアルを読むことによって品出し朝礼の司会が実施でき
るようになります。
社内外の店舗に行きますと、皆さん、個人の経験にのっとって
「この入荷であれば〇〇時までに終わらせられる」
と考えながら品出しをしていることがわかります。

第3回でお伝えしたように、品出しマニュアルでは
「品出し作業は多能化して皆で行っていく」
と定めています。
そのため、個々人の経験に基づいた目標時間ではなく、その日の入荷量を皆で共有し
て品出し終了時間を目指していきます。
目標時間を算出するために「品出し朝礼フォーマット」を使い、個数入力だけで終
了目標時間が導き出せるようにしています。

皆さんのお店でも朝礼を実施していると思います。
「昨日の実績は~」
「今日の予算は~」
と売上の報告をしているお店が多いかと思います。
朝礼での売上と同じように、品出し朝礼では
「昨日の品出し作業時間は目標時間に対して○○分早く出せた/時間がかかってしまった」
「今日の品出し作業目標時間は〇時〇分」
という"時間"の話をしています。
これを毎日繰り返すことが、継続する仕組みです。
毎日実施している作業が数値になります。
数値になれば嫌味なく、結果が「見える化」されます。


この仕組みを運用してきた中で、うれしかった出来事をいくつかお伝えします。
そもそも、なぜ数値で「見える化」するに至ったのか。
それは私が店長初年度にした、あるスタッフさんとのやり取りがもととなっています。

店舗には、作業が速い人とそうでない人がいました(基礎動作の部分でカバーできる
作業です)。
ある時、そうでないスタッフのNさんに
「作業が遅い」
とダイレクトに伝えました。
ところがNさん、自分は速くやっていると思っていたものですから、決してよい雰囲
気ではない。
そこでNさんに
「Nさん、この作業は1冊あたり12秒で実施することが標準時間みたいなんだ、タイムトライアルしてみよう」
「Nさん、今計測してみたら1冊あたり14秒かかっていたのであと2秒頑張ろう!」
と伝えました。 

Nさんは
「標準時間?12秒? 中内はあと2秒短縮できれば速いとなるんだな、わかった、ふんっ」
と思ったそうです。
数か月後、Nさんはその作業のマスターに成長してくれました。

「あの人速い/遅い」の話は日常的によくあることではないでしょうか。
でも、その標準時間が「見える化」され、
自身の作業時間が「見える化」され、
その現在地が「見える化」されれば
解消、もしくはそのためのトレーニングにつながると、自身の体験から考えます。

嫌味のない、無機質な数字で見える化されることが問題解決につながるのです。


【動きが速くなった話】

次は、自社で先陣を切って実施してくれたお店の話です。
あるリーダースタッフさんが
「品出し朝礼を実施する前は、も~(怒)、となっていたけれど、標準時間をクリアする成功体験を積み重ねることで速くなっていった」
と教えてくれました。

私とNさんの時と同じように、最初は双方でのギャップ(リーダーは遅いと思ってい
る 当人は遅くないと思っている)が大きかったが、
その溝がなくなっていったのだと言います。

今では「品出し作業は多能化して皆で実施」していくことになったので、個人での速
い/遅いは全くフォーカスされないフォーマットになりました。
個々人での目標設定ではなく、皆で目標を共有する場が品出し朝礼です。

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