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2019年10月10日
著者に訊く! なぜ台風の「右側」は暴風が吹き荒れるの?

台風19号が北上中で、三連休には東海~関東へ直撃する可能性が高くなってきました。 今回の台風は「大型で猛烈」な勢力。「猛烈」とは、「強い」「非常に強い」のさらに上の、最強ランクの台風ですから、最大限の警戒が必要です。
そこで、知っておきたいポイントを、『図解 身近にあふれる「気象・天気」が3時間でわかる本』の著者で気象予報士の金子大輔さんにうかがいました。 ぜひ参考にしていただき、早めの備えをしましょう。

 * 書籍紹介ページ
 * 著者公式Twitter
  「台風19号について」(気象庁報道発表、10月11日)



▼稀に見る暴風雨の可能性

台風19号は10日12時45分現在、中心気圧が915hPa中心付近の最大風速55m/s、最大瞬間風速75m/sとなっています。衛星画像で見ても目がぱっちりしていて、猛烈な風が吹いていることを物語っています。

【参考】台風19号(ひまわりリアルタイムWeb 2019/10/10 10:47)
スクリーンショット 2019-10-10 11.08.45.png * ひまわりリアルタイムWeb


【参考】台風の大きさと強さ
スクリーンショット 2019-10-10 10.27.30.png風速(10分間平均)をもとに台風の「大きさ」と「強さ」 を表現。「大きさ」は強風域(風速15m/s以上の風が吹いているか、吹く可能性がある範囲)の半径で、 「強さ」は最大風速で区分する。なお、風速25m/s以上の風が吹いているか、吹く可能性がある範囲を暴風域と呼ぶ。



さすがにこのままの勢力で直撃することはなく、いくらか弱まって「非常に強い」もしくは「強い」ランクになると思われますが、東日本としては稀な、滅多に経験しないような暴風雨となる可能性があります。

最も東寄りのコース、上陸せずに東海上を通った場合でも、それなりに風雨が強まることは避けられそうにありません。最大級の警戒をお願いします。



▼高潮にも警戒を

台風19号の接近に伴い、特別警報級の大雨や暴風、高潮、高波などの恐れもあります。13日(日)はちょうど大潮であるうえ早朝に満潮時刻を迎えるところが多く、沿岸部では高潮や越波による浸水に、いっそうの警戒が必要です。

【参考】高潮発生のメカニズム

スクリーンショット 2019-10-10 10.24.11.png



▼海水温の高さが発達度合いに影響

台風とは、熱帯地方で大量に発生した積乱雲の集団が渦を巻き、熱帯低気圧から発達したものです。積乱雲は別名「入道雲」とか「雷雲」と呼ばれ、塔のように高くそびえ立つ雲ですから、激しい雨をもたらします。発達した台風では、積乱雲の背の高さは、20km近くに達することもあります。

【参考】台風の高さと断面図

スクリーンショット 2019-10-10 10.30.39.png


台風は海水温が27℃以上の海域で発達します。現在台風19号がいるマリアナ諸島付近は、海面水温が30度以上あります。台風が「猛烈」ランクまで急発達した一因です。
さらに、今年は日本のすぐ南まで海水温27℃以上の海域が広がっているため、あまり衰えることなくやってくることが懸念されるわけです。



▼進行方向の右側で風が強まる理由

ところで皆さんは、北半球における低気圧の渦巻きは反時計回りの「左巻き」であることをご存知でしょうか。もちろん台風も低気圧のなかまですから、同じ反時計回りの渦巻きです(高気圧の渦は時計回りです)。

反時計回りの渦が北上すると、進行方向右側では台風そのものの渦を巻く風と進行方向が重なり、風がさらに強められます。文字通り「追い風」を受けるイメージですね。

先月の台風15号で、千葉県の被害が甚大だったのはこのためです。
左側では反対に風が相殺されて弱められますが、あくまで右側よりはマシというだけで、中心がすぐ近くを通った場合には、あまり関係ないと言っていいでしょう。

【参考】台風の右側(東側)が危険な理由

スクリーンショット 2019-10-10 10.26.44.png



▼早めの備えを

台風が近づく前の備えとしては、水や食料、乾電池など生活物資の備蓄に不安があれば、買い出しをしておくとよいでしょう。

風が強まる前にシャッターや雨戸を締め、ない場所では養生テープで窓全体を補強するか、段ボールや板を貼ってもよいでしょう。窓ガラスが割れた場合に備えてカーテンも閉めておきます。植木鉢や看板など飛ばされそうなものは取り込んでおき、自転車もロープなどで固定するようにします。

先月の台風15号で大きな被害を受けた被災地においては、大きく損傷している家で過ごすことは危険が伴います。避難所の場所を早めに確認したり、非常用持ち出し袋の中身を見直したりするなど、避難の準備をしておくことが大事です。避難などで家を空ける際にはブレーカーを切り、濡れると困る家電などはビニールで覆っておくとよいでしょう。

  首相官邸「災害に対するご家庭での備え」〜これだけは準備しておこう!〜



▼お役立ち情報

 * 気象庁の台風情報

  レーダー・ナウキャスト(降水・雷・竜巻)

情報収集には、気象庁が降水、雷活動度、竜巻発生確度の分布について、1時間先までの予測を発表する上記の気象予報システムがおすすめです。

これは、250メートルか1キロメートル(竜巻発生確度については10キロメートル)四方の格子に区分けしたエリアの予測を、5分あるいは10分ごとに配信しているもの。1日3回発表される一般的な天気予報などとは異なり、狭い地域ごとに詳細な気象予報を短い間隔で得られるのが特徴です。



▼今回の関連書籍

雲のうまれ方から、異常気象のナゾまで 丸わかり!

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本書では身近な気象・天気のあれこれをやさしく解説しています。

雲や前線、台風がどうやってできるのか? といった基本的なことから、
・雷はなぜジグザグに落ちてくるのか?
・雪の結晶はなぜ六角形なのか?
・台風はなぜ進行方向 "右側" で風が強まるのか?
・なぜゲリラ豪雨が増えているのか?
といった気になることまで網羅。

また気象災害や温暖化に関連した下記のような疑問もやさしく解説します。
・フェーン現象って何?
・エルニーニョとラニーニャのちがいって?
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あなたもぜひ、身近な気象・天気について 全54項目+6コラム で楽しく学んでみませんか。毎日の天気予報がずっとわかりやすく、空を見上げることがもっと楽しくなること間違いありません!


『図解 身近にあふれる「気象・天気」が3時間でわかる本』
【著者】金子大輔 【本体価格】1,400+税 【目次】第1章『天気の基本』を学ぼう/第2章『雲・雨・雪』を学ぼう第3章『四季と天気のしくみ』を学ぼう第4章『台風』を学ぼう第5章『気象災害・異常気象』を学ぼう第6章『天気予報のしくみ』を学ぼう

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