「できる!」ビジネスマンの雑学
2015年04月20日
[037]おじさんが新人だった頃、なかったものこと-1。スマホで時間確認

 スマートフォン、略してスマホ。いまさら説明の必要がないくらいに普及した便利なツールですが、最近スマホをめぐってこんな話題を見つけました。

「スマホで時間確認」は顧客に失礼なのか 「社会人なんだから腕時計ぐらいしなさい」の声も
 ネット上にこんな話があった。先輩社員が新入社員に「腕時計は?」と聞いたところ、「スマホがあるんで」と返された。
これを聞いた先輩社員は、「クライアントの前でもスマホで確認するんか?」と疑問を抱く。

(引用:キャリコネニュース 2015年4月18日)

 おじさんや先輩社員の言いたいことはよく分かりますが、今年の新人達の社会的背景を見てみてはどうでしょうか。

 国内で使われるスマホの6割近いシェアを持つiPhoneは、今を去ること7年前の2008年、日本に初登場しました。この年は物理学賞、化学賞あわせて4人の日本人がノーベル賞を受賞。また福田首相が辞任、アメリカではオバマ政権が誕生しています。同じ年、Twitterが日本語化されてサービスを開始。3年後の2011年にはSNSのLINEも誕生。現在スマホで使われている主なアプリはほぼ4年前に出そろいました。

 つまり今年の新入社員諸君は、高校・大学の頃からスマホにどっぷりと浸かった生活を送ってきた完全なスマホ世代なわけです。

 学生時代から肌身離さず親しんできたスマホで時間を確認してどこがいけないのか。口をとがらせて言う新人達の気持ちもよくわかります。

 しかしながら、結論から言うと客先でのスマホで時間確認はよした方が身のためです。「李下に冠を正さず(りかにかんむりをたださず)」という格言を思い起こしてください。
 辞書をひもとくとこうあります。「〈故事〉すももの実を盗んだと疑われるから、すももの木の下では冠をかぶり直さない。疑われやすい言動は避けなければならないというたとえ。〔古楽府〕」(『漢字源』より)
 つまり、他人から疑われやすい行動は場所によっては慎みましょう、という意味。
 中国の前漢時代に編纂されたという『古楽府』。今から2200年前の格言がスマホへの警告になるとは、面白い時代になりました。

 スマホはもちろん正確な時間を表示しています。しかしそれ以上にビジネスの場に持ち込む必要のない機能も持ち合わせています。たとえば以下の通り。
・高性能なカメラやビデオの録画機能
・高性能な音声録音機能
・USBメモリ機能(メモリカードへの記録を含む)
・充電機能1(を装うデータコピー機能)
・充電機能2(を装うウイルス伝染機能)
・電話機能(を装う盗聴機能)
・画像、音声、映像を送信するメール機能
・画像、音声、映像を即座に伝達する同時配信機能
・Web接続機能
・LINE、Twitter、Facebookへの接続機能
・サーバー接続とデータ転送機能
・ゲーム機能
・PDFやOfficeなどの業務アプリビュアー機能
・現在位置を記録し配信するナビ機能
・Wi-Fi、Bluetoothなど無節操な無線接続
※アプリのインストールによっては、さらに危険な機能が追加される

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 ざっと思いつくだけでも危険な機能はこれだけあります。セキュリティの厳しいオフィスに入館して、いきなり一眼レフカメラや高性能な録音機を取り出したら、招いてくれた相手先はどう思うでしょうか。カメラや録音機の液晶画面の時計を見るだけですと言っても、信じてはもらえないでしょう。
 スマホで時間を見るということは、実はこれと全く同じ行為なのです。上記の機能をすべてオフにするにはスマホの電源を切るしかありませんが、時間を見ることもできなくなります。

 IT業界ではスマホやケータイを職場へ持ち込むことはコピーや録画、録音の可能性が高いため、USBメモリとともに基本的に持込禁止となっています。ついでに言うと、USBメモリの持ち込みやPCへの接続を禁止していない職場は、データの漏洩対策が弱い企業と見られてもおかしくありません。
 時間を見るのに腕時計かスマホか、というのは論点のずれた世代論にしかなりません。極めてプライベートで危険なツールであるスマホが職場に及ぼす問題について話し合うべきでしょう。

 「パソコンは使えないけれどスマホならまかせてください。」と言う新人には、セキュリティ対策として上記の基本機能を止めるようアドバイスしてみてはいかがでしょうか。
(水)

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