「できる!」ビジネスマンの雑学
2015年04月21日
[038]やっぱり。東電が示した恐るべきモラルの低下

 いまも東証一部にある東京電力株式会社は、約4万8000台ものWindows XP搭載機を、経費節減の目的で2015年3月まで使用し続けていたことが4月20日に報道されました。
 Windows XPの危険性を認識しながら使い続けていた「東証一部上場企業の東京電力株式会社」が、そのモラルのない企業体質を見事にさらけ出した大事件です。

東電に「XP更新を」...検査院が「異例」の指摘
 東京電力が経費削減のため、2014年4月にサポート終了となった米マイクロソフトの基本ソフト「ウィンドウズXP」を搭載したパソコンを使い続けていた問題で、会計検査院が「セキュリティー上のリスクを考慮すれば、更新時期を繰り延べるべきではない」と指摘していたことが分かった。
 主に無駄遣いを指摘する検査院が、コスト削減策を否定するのは異例。
 検査院が3月にまとめた報告書などによると、東電は、18年までXPを使い続けて36億円分削減する計画を立て、サポート終了後もXPパソコン約4万8000台を使い続けていた。
(引用:YOMIURI ONLINE IT 2015年4月21日)

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 このコラムでは過去に『[012]ゆるくなっていく日本社会の安全性(3月16日付)』にて指摘していますが、どんな企業であれセキュリティサポートを終了したOS、Windows XPは使うべきではありません。
 「これらの巨大企業が反社会的存在とは言わないまでも、わたしに向かって挑発しているのはわかります。わが身の安全を守りたければ、当社には近づくなと警告しているのを。」
『[012]ゆるくなっていく日本社会の安全性(3月16日付)』より

 顧客を持つ企業であれば、また公的性格の強い企業であればなおさら注意を払うべきでした。
 東京電力は「首都圏1都7県、静岡県の富士川以東の地域を事業地域とする電力会社」(ウィキペディアより)ですから、この地域の企業、公的機関はもとより、ほとんどの住民の契約情報を保持しています。にもかかわらず、東電は情報の安全対策よりも36億円の経費節減を選択しました。これでは契約者情報を危険にさらしても利益を確保したい企業、つまり反社会的存在として認識されてもしかたがないでしょう。

 東京電力株式会社の公式サイトにはこうあります。
企業倫理・法令遵守の取り組み
http://www.tepco.co.jp/corporateinfo/trust/index-j.html

  • 平成22年度以降も、引き続き「しない風土」「させない仕組み」「言い出す仕組み」の各方策を各職場の日常業務で確実に実施し、企業倫理・法令遵守を徹底してまいります。
  • 企業倫理・法令遵守は事業の基盤であるとの意識を持続させるとともに、取り組みの風化防止についても、継続的に取り組んでまいります。
  • 企業倫理・法令遵守に関する取り組み等について、広く社外へ発信してまいります。


 企業倫理・法令遵守の徹底、ですか・・・。

 「企業のスローガンは、その会社にできないことが書いてある」とはよく言ったものです。
(たったいま、筆者が思いついただけですが)

 さらに追い打ちをかけたのが東電が出したコメントでした。
「東電は20日、XPパソコンを今年3月までに全て新しいOSに更新したことを明らかにした。当初の計画と比べて3年繰り上げており、東電は「安全性を高めるため、前倒しで更新した」と話した。」
(引用:YOMIURI ONLINE IT 2015年4月21日)

 XPサポート完全終了後、一年も放置しておいて「前倒しで更新した」とは恐れ入りました。

 東京電力のセキュリティ部門は、一年間も続いた社内の異常な状態に、どんな対策を取っていたのでしょう。また、XPを使っていた約4万8000人にも上る東電社員の皆さんは、昨年起きたXP終了騒動を横目に、どんな思いでパソコンに向かっていたのでしょうか。誰ひとりとして内部告発する「言い出す仕組み」は機能しなかったようですね。

 取材が許されるのであれば、そこのところをぜひお聞きしたいものです。
(水)

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