国土交通省は令和7年7月1日、モバイルバッテリーを飛行機の機内に持ち込む際のルールを変更すると発表しました。
適用は令和7(2025)年7月8日から。このコラムを読む方によっては適用は始まっているかもしれません。
飛行機ではモバイルバッテリーを収納棚に入れないで!──国土交通省、機内持ち込みルールを変更
今年1月に韓国の金海空港で発生したエアプサン航空機炎上事故では、調査によってモバイルバッテリーからの発火が原因である可能性・・・。
(ITmedia・本田亜友子 2025年07月01日)
ご承知の方も多いと思いますが、韓国の空港で頭上の収納棚に入れていたモバイルバッテリーが発火。短時間で大きく燃え広がるなか乗客乗員とも緊急避難して全員無事でした。しかし航空機が全焼する重大事故となりました。もし飛行中に火災が発生していたら、消火も避難もできずなす術もなかったことでしょう。
韓国・機内バッテリー火災は年間5~6件...エアプサン旅客機火災で高まる「規制強化」の声
リチウムイオンバッテリーは、電子機器の充電に便利なツールだが、製造過程での欠陥、使用者の不注意、気圧や温度の変化などによって発火のリスクがある。一度発火すると「熱暴走」現象を起こし、容易に消火できない・・・。
(AFP BB News 2025年1月31日)
わずか数千円のモバイルバッテリーひとつで、数十億円の航空機が全損。場合によっては数百人の人命が失われていたかもと想像するだに恐ろしいことです。![]()
ではなぜ、バッテリーを原因とする事故が多発するのか。なぜこうもバッテリーに限って火災事故が多発するのか。疑問に思う方も多いでしょう。
たかがバッテリーといえども電子機器のひとつで、その内部には温度センサーや電流を管理する多数のプログラムが働く高密度基板が実装されています。ひとたび過充電や高温を感知すると即座に電流供給を止めるなど、いくつもの保護回路を常時コントロールしています。
純正品やPSEマークのついた製品であれば、厳密なテストに合格した製品のみが出荷されているのです。
互換品はそうした保護機能を省いて安価に製造したものが多く、表示している電池容量(mAh)を満たさない製品すらあります。
欠陥バッテリーが燃える原因はひとつではありません。充電と放電ができることを確認しただけで、欠陥品の認識のないまま生産を続けるメーカーもあるようです。安全対策を欠いた粗悪な作りのバッテリーが市場にあふれ、安価だからとそれを買ってしまう消費者が多いことも原因と言えるでしょう。
互換を謳うバッテリーの多くは、正常に動作するかどうかは使ってみなければわかりません。火を噴いたり爆発したりしても補償はなく、そもそもメーカーの所在すらわからないことが多くあります。
いったんバッテリーが発火すると消火は困難です。水をかけようものならリチウムの燃焼反応はより勢いを増して、有毒ガスを噴出し、最悪は爆発に至ります。
バッテリーを装着しているスマホ、ノートパソコンはもちろん、荷物の中身がすべて燃え終わるのを待つか、消火剤を使うしかありません。
少しのお金を節約して粗悪なバッテリーを買ったがために、高価なIT機器はもとより仕事の資料や個人の大切な記録を失ったのでは、本末転倒と言わざるを得ないでしょう。
メーカー名も性能も不明な粗悪バッテリーを使うことの危険性を、今一度認識しておくことをおすすめします。
モバイルバッテリー・携帯・加熱たばこ、リサイクル回収義務化へ...
相次ぐリチウム電池火災で対策強化
環境省によると、2023年度にゴミ収集車やゴミ処理施設などで発生した小型リチウム蓄電池による発煙・発火事故は2万1751件に上った。
(読売新聞オンライン 2025年7月5日)
筆者がIT技術者として働いていた経験から
モバイルバッテリーについての注意点を挙げておきます
【モバイルバッテリーの使い方】
・PSEマークのついた製品を選ぶ
・製造メーカーの保証期間を知っておく
・バッグに入れたままの充電や放置したままの充電はしない
・充電中の寝落ちは絶対にしない
(海外では毎年、就寝時の感電死や焼死が起きています)
・バッテリーはケースや袋に入れない
(高温になる。袋から燃え広がる)
・iOS/Android の公式サイトからバッテリーチェックアプリを入れて、バッテリーの性能チェックを行う
・水濡れ、落下、圧迫したバッテリーは危険度が上がる
・接続ケーブルは純正品を使う
・バッグやスーツケースに入れたままの充電は危険
・バッテリーケースが膨らみだしたら使用しない
これからの季節、夏休みや帰省などで航空機を利用する機会が増えることでしょう。モバイルバッテリーの利用の際は、新ルールを守りましょう。(水田享介)
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【関連サイト】
モバイルバッテリーを収納棚に入れないで!
~7月8日から機内での取扱いが変わります~
(国土交通省 令和7年7月1日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/kouku10_hh_000284.html