夏休み中の小中学生を悩ませる話題と言えば「自由研究」です。自由と言いながらネット情報の孫引きやAIの回答丸写しは禁じられ、本人がたどった研究過程を記録しなければなりません。
描き上げたレポートを先生に提出すると、テーマの着想から研究を経て正しい結論にたどり着けたかのチェックをうけます。
それだけではなく理解度や学習成果の評価で採点されるなど、どことなく自発的に勉強するようにレールを敷かれてはいませんか。
どうすれば楽しくやりながら、しかも成果が出るような自由研究ができるのでしょうか。
昨年2024年の小学生自由研究コンテストのなかにヒントとなるような研究がありました。
テーマは「納豆ペーパーの開発」。
この研究は「超・自由研究アワード2024」の最優秀賞を受賞しています。
ベトベトせず食べられるペーパー状の納豆の考案
納豆ペーパーの開発
(知財図鑑 2024年10月9日)
小学4年生の男の子、笠松くんは3歳の妹が手や口をベタベタにして納豆を食べる姿を見て、どうすればベタつかずに納豆を食べられるのかと考え始めたのが、自由研究のスタートでした。
大人の私たちは納豆は糸を引く食べ物でありベタ付いて当然という固定観念があるため、口元に糸を引いても疑問も持たずに食べるだけです。![]()
ある意味、この時点でほとんどの大人達は小学4年生の笠松くんに負けています。
次に笠松くんは納豆ができる仕組みを知ると、思いもよらない材料で納豆を作り始めます。庭に生えている葉っぱ・・・つわぶき、いちじく、アカメガシワ、さくら、夏みかんのいずれの葉っぱからも糸を引く納豆ができて、ちゃんと食べられました。
そして、ミャンマーには納豆を乾燥させたせんべい「トナオ」があることを知り、自分で作ってみました。
「トナオ」作りに成功した笠松くんは、この製法をヒントについに紙のように薄い「納豆ペーパー」を産みだしたのです。
【完成した納豆ペーパーの特徴】
・乾燥しているのでベタベタせず手に持って食べても汚れない。
・ニオイは納豆そのもの
・これなら服も汚さずに、妹がひとりでたべられる
・いくつもの可能性のある製品と思われる
研究テーマを納豆にしぼったあとは、広い視野でヒントを集めて、集中的に試作を進めています。
試作で得た知見から、新開発の製品に仕上げていく手法はとても小学生とは思えない鮮やかな手先です。
日本には大手納豆メーカーはたくさんあり、すでに研究は尽くされていたと筆者は思っていました。![]()
そんな納豆業界に、小学4年生が新ジャンルとなる商品をもたらしたわけですから、その衝撃度は計り知れなかったと思います。
最後に筆者の感想として、笠松くんの研究を後押ししてくれたご家族の温かな姿を感じました。
納豆になるかわからない葉っぱを煮たり48時間も放置したりしたので、ニオイも出たと思います。
また、納豆をフードプロセッサーに入れて粉砕する工程では、機材の清掃や後片付けが大変だったことでしょう。
この時点ではまだ「納豆ペーパー」ができるかは不明でした。失敗する可能性があっても自由に調理器具を使わせてみようというおおらかな家庭だったのでしょう。だからこそ開発に成功したといえます。
小学生の自由研究とは、小学生が思いもよらない自由な行動を取ったとしても、それを許して後押しする忍耐強い親である事を問うているのかもしれませんね。(水田享介)