「できる!」ビジネスマンの雑学
2025年08月04日
[1005]100分de名著、8月は『人間の大地』

 サン=テグジュペリといえば彼の代表作『星の王子様』が日本ではよく知られています。パイロットであった彼は、この作品以外にも空を飛ぶ男達を描いた骨太の名作をいくつも残してます。

 そのなかのひとつ、『人間の大地』(※)がテレビ番組「100分de名著」(Eテレ)で8月の一ヶ月間(計4回)とりあげられます。
※堀口大学訳の新潮文庫版は書名を『人間の土地』とする

 初回放送は、2025年8月4日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ です。(【再放送】 2025年8月8日(金) 午後3時5分~午後3時29分/Eテレ)

名著152「人間の大地」サン=テグジュペリ
「100分de名著」/Eテレ 2025年7月28日

 この作品は1920年代、まだ黎明期だった航空界のパイロットとしてサン=テグジュペリが世界中を飛び回った経験を基に綴ったオムニバス形式エッセイ集です。

 この時代の航空機とは、非力なエンジンに帆布貼りの機体だったため安全性よりは飛行性能の向上が第一の時代でした。無事に帰還できるかはパイロットの技量と運頼り。毎回が命がけのフライトだったといえます。
 現代のように通信衛星を活用するGPSはなく、航空無線が実用化されたのは第二次大戦中でした。地形を見たりコンパスを使って現在地を推測し、燃料の残りを気にしながら目的地まで飛ぶことは不安もさることながら、空恐ろしいことでした。

 昔の航空航法についてはこちら。

昔ながらの航法
GPS 以前の地上目標物、地図、速度計算、コンパスを頼りに飛行する方法
Flight Sim Base Port 2020年3月15日

 定期郵便飛行士の職に就いたサン=テグジュペリですが、1935年にはフランス~ベトナム間の飛行に挑戦するもサハラ砂漠に不時着。砂漠を3日間歩き通して生還を果たしています。

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 番組では4回の放送を以下のテーマでお届けします。

<各回の放送内容>
第1回 飛行機乗りの仲間たち
第2回 惑星視点で見る
第3回 砂漠に落っこちる
第4回 人間よ、目覚めよ!

 筆者の二代前のご先祖のおじいさんも、サン=テグジュペリと同じ時代にエンジニアパイロットとして航空会社で飛行機を開発していました。長男にあたる叔父から聞いた話ですが、テスト機を操縦して空に上がった時、エンジンがぴたっと止まったそうです。当然のように滑空(墜落)し始めました。
 おじいさんは慌てず、操縦席からエンジンまで這うようにしていき、故障を見つけて応急処置。操縦席に戻り再始動して事なきを得たそうです。

 日本初の大陸間横断機、A-26を開発した時のこと。東京-ニューヨーク間の無着陸横断を計画するも戦争により中止。代わりに東京-ベルリン間往復を立案。おじいさんは搭乗できませんでしたが、その機体はインド洋上空で英軍機に撃墜されています。

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※A-26

 このおじいさんは戦前、筆者の実の祖母を女性飛行士にしようと東京に呼び寄せて、航空学校に入学させたこともあり、筆者の誕生は綱渡り状態だったことがわかります。

 筆者は生と死が隣り合わせの航空業界を恐れ、距離を置いていたはずが、のちに航空機シミュレーターのプログラマとして勤めた時期があり、ご先祖様とは切れない縁を感じます。

 現代の航空機は幾重もの安全対策で飛んでいるので、サン=テグジュペリの時代のような危険性はなくなりました。
 しかし、人間が極限状態に追い込まれた時、どう考えて行動するかを考えることは決して人生のマイナスにはなりません。たとえ作品の中の仮想体験であったとしても、この読書体験は貴重な人生の経験となることでしょう。(水田享介)

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