今年（2025年）の夏は近年まれに見る暑さと言われています。確かに群馬県伊勢崎市では国内最高気温41.8℃を記録しました。また、日本全国各地で40℃越え、41℃越え地点が一気に増えたことからもあきらかです。

歴代の最高気温ランキングを塗り替えた2025年夏！
その理由と今後の見通しを気象予報士が解説
今夏は最高気温の歴代全国ランキングも大きく更新しています。8月も猛暑が続いている状況です。
2025年の夏が猛暑となっている原因としては、「ダブル高気圧」「極端に早い梅雨明け」「海水温の上昇」...。
（読売新聞・防災ニッポン 2025年8月25日）

　ところで東京の予想最高気温を見ていると、名古屋、大阪などの他地域と大きな違いがあることに気がつきませんか。


※「週間 予想最高気温」（tenki.jp より）

　筆者の住む多摩地区では、今年は39℃の予想で40℃を越す日もあったのですが、東京都心の予想最高気温はだいたい35℃で推移しています。

　都心に住む方や通勤する方ならお分かりでしょうが、最高温度が35～36℃のはずがない。そう思いませんか。

　実はこれには事情があって、東京の気温を測定する場所、露場（ろじょう）は、コンクリートに囲まれた一般的な都心風景とはまったく違った場所にあるのです。

東京・北の丸公園露場（ろじょう）のご紹介
北の丸公園内に東京都心の気象観測点が設置されているのはご存じでしょうか？
（環境省・皇居外苑ニュース 2015年08月07日）


※写真左:北の丸公園内に設けられた東京管区気象台の地上気象観測施設「東京・北の丸公園露場（ろじょう）」
　写真右：積雪計、感雨計、温度計、湿度計、雨量計など
（出典：環境省・皇居外苑ニュース 2015年08月07日）

　東京の露場になっている北の丸公園は、お堀と石垣に囲まれた旧江戸城の中の日本武道館の近く、木立に囲まれた静かな場所にあります。

　しかも旧江戸城敷地内は一般車両は進入できず、観測施設へのアクセスは歩道のみ。排気ガスやエアコンの排気熱とも無縁の、芝生が植えられたそこは古墳のようなたたずまい。

　観測地がここになった理由は、人為的な温度変化を受けない安定した環境で、気温変化を定点観測するためだそうです。

　東京の予想気温とは肌で感じる気温のことではなく、「木立に囲まれた北の丸公園」の気温を予想しているだけ、とわかるといくらか気が休まるかもしれませんね。



　ちなみに冬の最低気温はリアルな都心とは違いより冷え込む結果になっています。積雪の数値も北の丸公園での測定なので、都心の道路とは違った結果になるようです。

　観測地点の気温と自分が感じる暑さに違和感を感じている人は筆者以外にもいるようです。

気象庁の言う温度より微妙に暑く感じるワケ
持ち歩いている温度計を見たところ、「40℃」と表示されていて卒倒しそうになったのですが、この日の13:30の東京のアメダスの観測値は38.5℃...。
（東洋経済ONLINE・今井明子 2018年7月31日）

熊谷と何が違う？川越の気温が日本一暑いかもしれない原因・理由とは
2017年5月末、英気象学会誌の電子版に次のような研究結果が掲載されました。
「首都大で行った独自の気象観測によって、埼玉県川越市の方が同県熊谷市よりも最高気温が1～2度高いことが分かった」。
熊谷市といえば、日本有数の「暑い街」として有名...。
（川越 水先案内板 2025年7月4日）

　この記事でわかったことは、都心のヒートアイランドで発生した熱波は上昇気流に乗り、川越付近に落ちてくることから、熊谷市よりも常に高温になっているそうです。
　残念ながら川越市にアメダスなどの観測所が設けられていないため、熊谷市よりも高温になってもそれを記録したり報告する術がない、という悲しい現実です。

　筆者の住む地域もアメダス観測所はないので、北にある所沢市、南の府中市の予想最高温度を見ながら、その日の暑さを予想しています。

　天気予報の予想温度だけに頼らず、自分の五感で危険な暑さを感じ取ることが大切です。早めはやめの水分補給と休憩を心がけましょう。（水田享介）