「できる!」ビジネスマンの雑学
2025年10月22日
[1036]東京都にクマ出没でも駆除は禁止。なぜ!?

 連日のように報道される「クマ被害」。北海道や東北地方の各自治体ではクマの目撃情報を発信し、出没頻度の高い危険地帯には警告を発しています。
 それでもクマによる被害が止みません。クマが人間の生活圏にまで入り込んできたからです。

 これまでは山歩きや山菜・きのこ採りなど山に入る時に注意しましょうと言うのが一般的でした。クマの生息域にわざわざ出向く人への警告にすぎませんでした。
 ところが今や、クマが人間の生活圏へ、学校やスーパー、市街地、一般住宅にまでクマが侵入するようになりました。

 そんな中、ついに東京都でも10月19日にクマ(らしき動物)が市街地に出現しました。

25102201.jpg
クマ啓発チラシより(東京都環境局 多摩環境事務所)
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/kuma_tozan_chirashi_data-pdf

東京・青梅でクマのような動物を目撃 近くには小学校 警視庁が捜索
 署(警視庁青梅署)によると、目撃情報があったのは、JR東青梅駅から北に約600メートルの住宅やコンビニエンスストアがある地域。小学校も近くにある。
朝日新聞 2025年10月19日

冬眠するはずの冬も"危険"...市街地でのクマ目撃相次ぐ
岩手・奥州市で通学路そばで子グマを捕獲
撃退グッズも品薄に
東京・青梅市の市街地などでも、この3日間だけで25件もの目撃情報が寄せられ、出没が相次ぐクマ。
異例の事態を受け、東京・立川市のアウトドアショップ「好日山荘」では、クマ対策グッズが品不足になる事態に。
FNNプライムオンライン 2025年10月21日

 東京都内にはどの程度の頻度でクマが出没しているのでしょうか。
 東京都では環境局が「TOKYOくまっぷ」などでクマ情報を発信しています。

東京のツキノワグマ
東京都の西に位置する多摩地域(西から順に奥多摩町、檜原村、あきる野市、青梅市、八王子市、日の出町)の森林にはツキノワグマが生息しており、東京は世界的にも珍しい「クマが生息している首都」です。
東京都環境局 2023年10月20日
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/bear/tokyos

25102202.jpg
※「TOKYOくまっぷ」画面

 「TOKYOくまっぷ」によると、人気の観光地の高尾山周辺でもクマの目撃情報が増えています。また、多摩地区は青梅市に限らず、より都心に近い自治体でも目撃されています。

 最近の研究では熊が市街地に現れるルートとして、河川伝いに行き来していると言われています。
 たとえ人の多い街中であっても、川沿いの地域はクマが出没する可能性はより高くなります。

 このコラムを執筆している時、八王子市内の河川敷をクマが往来しているとの情報がXに書き込まれていました(未検証情報)。

 今後は、多摩川、浅川、残堀川などの河川沿いは注意が必要でしょう。

25102203.jpg
東京都河川分布図
東京都建設局より
https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/river/seibi

 クマが出現しても始末すればいい。いっそのこと徹底的に駆除してほしいという意見もあります。
 しかし、ツキノワグマは絶滅危惧種にあたるため、東京都では狩猟による捕獲や駆除は禁止されています。

狩猟の禁止について
東京都ではツキノワグマの保護のため、平成20年4月1日から狩猟による捕獲等を禁止しています。
区域:八王子市、青梅市、あきる野市、日の出町、檜原村及び奥多摩町
期間:令和9年3月31日まで
東京都環境局 2023年10月20日
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/bear/tokyos

自然環境-ツキノワグマについて
人身被害の恐れがある野生動物でもあることから、人里・人家近くへ出没した場合など、やむを得ず捕獲に至る場合があります。
都では、ツキノワグマが生息する地域を所管する市町村と連携し、見回り・追払いといった出没時の対応のほか、刈払いによる緩衝帯の創出や電気柵の設置、誘因物の除去など、ツキノワグマを人里・人家近くに寄せ付けない防除対策を推進...。
東京都環境局 2024年2月22日
https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2024/02/2024022205

25102204.jpg
※かわいく描かれがちなツキノワグマ

 人的被害の恐れがあるやむを得ない場合に捕獲は認めても、駆除や積極的な駆除(狩猟)は禁止となっています。しかし、人が被害を受けるまでクマを放置しておくとクマはどんどん増えていき、最終的には市街地に入ってくるのは容易に想像がつきます。

 東京都の方針として、追い払いや人家に近寄せない消極的なクマ対策止まりで、捕獲はあっても駆除までは認めていないことがわかります。

 クマ出没が明らかとなった八王子市ではより進んだ対策を検討していますが、東京都との合意はまだのようです。

改正法 クマ駆除迅速化へ
八王子エリアの(東京都猟友会)会員は約90人だという。「もしもの事態が起こったときにどのように行動するか、細かな段取りはまだ東京都と打ち合わせできていないのが現状。会として協力していくことを前提に、対応を協議中だ」...。
タウンニュース/八王子板 2025年9月18日

 クマ対策のルールは今後どうなるかは未定ですが、現在の所、東京都内では積極的な駆除となる狩猟はできない状態です。たとえ駆除であってもハンターが出動できるまではもう少し時間がかかるようです。

 賢くて狩猟が得意なクマは音もなく忍び寄り、背後から突然襲ってきます。クマと接したことのない人々にどうすれば「見回り」や「追い払い」ができるのか、筆者にはまったくわかりません。

 東京都民はこれ以上、クマの生息域が広がらないよう祈るほかなさそうです。(水田享介)

コメントを書く
お名前
URL
コメント
書籍購入はこちら 語学音声アプリ 公開中 閉じる