「できる!」ビジネスマンの雑学
2025年11月05日
[1041]生成AI画像がニュース配信される

 AIに描かせた画像や動画がネット上に数多く出回り、社会問題化しています。

 最近、筆者のX上に「クマが飼い犬くわえ逃走」とする動画がSNSで流れてきました。ところがこの映像はクマと犬の動きが一致していない上に、カメラレンズの歪曲収差がなく、咥えた犬を振り回す様子が鮮明すぎました。すぐに生成AI画像とわかりました。イタズラとも悪意ともとれるこの手の稚拙な動画でも、撮影技術の知識がない方は実写と信じてしまうでしょう。(※フェイク動画のため引用は控えます)

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※筆者が「Copilot」で生成したクマ画像


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※「Copilot」で画像を生成する過程


 話題になっている事件や社会問題を映像化すれば、アクセスが稼げるはず。この単純な動機から生成AI動画が量産されていくと、近い将来にはフェイク動画であってもパズる動画だけが視聴され、実態とかけ離れた社会認識が形成されていくことになりかねません。

 大手マスコミは日頃から、記者が取材をしたニュースだから信頼性が高いことをアピールしています。そこがSNSやネット主体メディアとは一線を画している点だと自負してきました。

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※イメージ利用なら問題のない生成AI画像

 しかしながら、先日、大手のニュース配信元が生成AI画像を全国のメディアに流してしまう事故が起こりました。

共同通信、生成AIで加工の「子ガメをくわえるタヌキ」の写真を
配信取り消し...加盟社の指摘で判明
共同通信社(東京)は10月20日に配信した子ガメをくわえるタヌキの写真について、「生成AI(人工知能)により加工されたと確認した」として取り消した。
読売新聞オンライン 2025年11月2日

 事故の経緯から意図的な利用ではなく、取材先の団体が、提供する画像をAI加工したことを伝えなかったことが原因でした。
(※元画像とAI画像は上記記事に掲載)

 ニュースのリンク先にある二枚の画像を見比べると、オリジナル画像はタヌキの口がカメラと反対方向に向いているので、口にくわえた子ガメの姿が不鮮明です。
 AIはタヌキをカメラ目線に描き直し、口元の子ガメは輪郭を鮮明にしています。さらに背景と馴染んでいたタヌキの全身は毛づやまで加えて背景から浮かび上がらせています。
 元の画像と同じ意味の「子ガメを咥えたタヌキ」ですが、AI画像は新たに生成したフェイク画像でしかありません。

 この画像がニュースの信ぴょう性を高めるかというと、かえって信頼性を損なっていることは明かです。

 取材先がAI画像を黙って提供したことで、この事故が発生しています。通信社にフェイクの意図はなかったとしてもこれからはこうした事例は増えていくでしょう。

 2023年にはこうした事例が伝えられています。

生成AIによるフェイク画像・動画をめぐりメディアのトラブル相次ぐ
生成AIは精巧な画像や映像を作ることができるため,偽情報の生成に悪用されると見破ることが難しくなるとみられているが,11月は,国内のメディアが絡むトラブルが相次いだ。
NHK放送文化研究所 2024年1月1日

 大手メディアにはいまだ抜本的な解決策がないまま、生成AIの性能は上がり続け、さらにリアルで精巧なフェイク画像が出回り続ける状態が続きそうです。いまはそういう時代と心しておくほか、自分を守る方法はなさそうです。(水田享介)

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