新型コロナによる後遺症のひとつに「ブレインフォグ後遺症」があります。これはコロナ感染からは回復したのに、もの忘れや集中力の欠如など、起き抜けで脳の働きが鈍ったような状態が長く続く症状です。
当コラムではブレインフォグとその具体的な症状を3年前に紹介しています。当時は大手マスコミは「新型コロナ終息」一色の報道で、この問題を全く取り上げず、ブレインフォグ後遺症問題は海外の報道に当たるしかありませんでした。
[747]新型コロナ後遺症「ブレインフォグ」。治療法なく長引く症状
(当コラムより 2022年11月14日)
https://www.asuka-g.co.jp/column/2211/012167.html
また、続けて解決にむけた取り組みが始まったこともお伝えしました。
[756]「コロナ後遺症」メカニズム解明へ、回復に役立つ療法について
(当コラムより 2022年12月16日)
https://www.asuka-g.co.jp/column/2212/012192.html![]()
その後ここ3年ほど進展はなく、ブレインフォグ後遺症は未解決のままでした。
新型コロナ感染者数は減少の傾向にありますが、新型コロナが治癒した人の中にブレインフォグ後遺症に悩む人は一定数いるといわれています。しかも、いまだ治療法はなく、医師も対処療法的な処置しか行えない状態が続いています。
こうしたなか、つい先日、新たな研究成果が発表されました。
コロナ後遺症「ブレインフォグ」治療に光明
AMPA受容体影響か、横浜市大チームが報告
「ブレインフォグ」について、横浜市立大のチームが、記憶や学習を仲介するタンパク質が病態に影響を与えている可能性を突き止め、研究成果を公表した。対症療法しかないブレインフォグの治療法確立の糸口・・・。
(産経新聞 2025年11月6日)![]()
横浜市立大学のプレスリリースはこちらです。
新型コロナウイルス感染症の後遺症"ブレインフォグ"の
病態を新しい脳画像法で解明
ー脳内グルタミン酸AMPA受容体が罹患後の認知機能障害に関係ー
横浜市立大学大学院医学研究科 生理学 高橋琢哉教授らの研究グループは、神経細胞同士の情報伝達のやりとりの要であるグルタミン酸AMPA受容体*1が、新型コロナウイルス感染症罹患後症状(Long COVID)*2の認知機能障害、いわゆる"ブレインフォグ"に関わることをはじめて明らかにしました。
本研究の結果は、Long COVIDの認知機能障害"ブレインフォグ"を脳の変化に基づいて診断し、その変化に基づいて治療を行うことができる可能性を示唆しています。
(横浜市立大学・プレスリリース 2025年10月1日)
https://www.yokohama-cu.ac.jp/res-portal/news/20251001takahashi.html
有能に働いていた人がとつぜん仕事が手につかなくなるこの後遺症、家族には大きな心配事であり、また企業にとってもかけがえのない人材の損失といえます。
ブレインフォグ後遺症の治療を確立するためには、これからどの方向にどんな研究をし、どのような治療薬を開発すれば良いのか。そのことが示された研究成果です。早急に治療方法が確立することを期待して止みません。(水田享介)