「できる!」ビジネスマンの雑学
2025年11月10日
[1043]朝食の定番「干物」、不人気でメーカー倒産相次ぐ

 日本古来の伝統食、「干物」が危機的状況にあります。企業信用調査会社の東京商工リサーチによると、今年2025年の干物製造業の倒産はすでに6件。倒産原因は主として「販売不振」ですが、加えて「原材料価格上昇」、「人手不足」のダブルパンチ。

干物製造業に異変、倒産が過去最多
 干物や塩漬け(塩干品)を製造する企業の倒産がジワリと増えている。2025年1-9月の倒産はすでに6件に達し、2004年以降の年間最多を更新・・・。
東京商工リサーチ 2025年11月3日

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※ニジマスの干物

 特に惜しまれているのが「ホッケの干物」で有名な企業の倒産です。

"ホッケの干物" 水産加工「油本水産」破産手続き開始
負債約4億2200万円見込む
「油本水産」は1955年(昭和30年)の創業以来・・・、全国の水産加工業者および商社向けを中心に、ホッケ、アジ、カマスなどの魚介の加工のほか、ホタルイカの桜煮や甘塩スルメイカなどの商品も取り扱っていました。
チューリップテレビ 2025年10月23日

 十数年前まで居酒屋が大流行していた頃、北海道産の真ホッケの干物といえば、夜の定番メニューでした。大皿からはみ出すサイズのホッケの開きを、数人でつつきながら楽しくいただいた想い出があります。

手づくり「ホッケ干物」は居酒屋を超えるか?
魚本来の甘味と旨味が味わえる
dancyu 2025年5月29日

 農林水産省によると、干物類の生産はここ10年で約6割にまで落ち込んだそうです。塩辛い干物が若年層や子どもに受け入れられなくなり、健康志向、食の多様化が要因とのこと。

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※旅館の朝食。定番の干物と玉子焼き

 いま、干物を食べるには、旅館やホテルの朝食くらいしかその機会は残っていないと思います。それもバイキング方式だとさらに干物が選ばれるチャンスは少なくなります。

 考えてみればわかりますが、自宅や宿屋で夕食に干物が出されたら、あれっ何か気に障ることやらかしたかなとなる可能性が大きいです。よほどの名産品の干物でなければ、昼食や夕食に供されないのが干物という位置づけです。

 では朝食に干物が出る可能性はと考察すると、統計からもきわめて難しいことがわかります。

 現代の日本で朝食に米食を選ぶ人は、わずか16%。お米以外のパン食・麺・その他で52%。朝食なしは32%という統計が出ています。

日本の食事:米食が4割強、パン食18%、麺類14%―農林水産省の食生活調査
食事別では、朝食はパン食が34.3%と最も多く、米食と「その他」がそれぞれ16.2%。また31.9%が「食事なし」だった。
nippon.com/農水省の2021年度食生活・ライフスタイル調査より 2022年4月11日

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※いただきます

 驚くことに日本人の32%の人が朝食を摂っていないわけですから、そもそも干物を必要とはしていません。ではパン食の人に干物を食べようと宣伝する効果はあるでしょうか。

 パン食に干物が合うと考える人はほとんどいないでしょう。このまま16%の米食の人に干物を売り続けても需要は細るばかりです。

 筆者が考えるに、もう塩ジャケやアジの干物が朝食の定番という時代は昭和時代とともに終わりました。あと5~10年で旅館・ホテルでも干物はなくなると思います。

 これからは、パンに合う干物、手軽なスナックやおつまみとしての干物というジャンルを開拓するしか道はなさそうです。
 昭和生まれの筆者としては残念ですが、食の嗜好の変化に棹さすことほど難しいものはありません。(水田享介)

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