国宝の姫路城(兵庫県姫路市)を管理・運営する姫路市は、2026年3月1日から、一般(18歳以上)入城料を2,5倍に引き上げたうえ、姫路市民とそれ以外で料金を別にする二重価格を始めました。
姫路市民は据え置きの1000円、市外の人は2500円という格差に、SNSやニュースでは賛否両論がわき上がっています。
姫路城「二重価格」1か月、入城者2割減...
「市民」「市外の人」の線引きに小原ブラスさん「納得度高い形」
(読売新聞オンライン 2026年4月5日)![]()
※姫路城本丸(筆者撮影)
筆者は姫路城の二重価格に批判的な意見をX(SNS)でいくつも見ました。SNSで返信を書き込む人は反対意見を主張する強い意志があるためで、さほど関心がなかったり、賛成であってもあえて書き込もうとする人は限られています。
こうした傾向はSNSのマイナスな一面でもあり、いわゆる「反対意見だけが悪目立ち」しがちです。
過去に姫路城を訪れた筆者としては、2500円という入城料にも二重価格にも驚きはありません。行ってみればわかりますが、姫路城とその一帯の風景にこの料金を支払う価値は充分にあります。
[555]国宝に触れる旅-1「姫路城」(兵庫県)
姫路城は法隆寺と共に平成5年(1993年)、日本で初めて世界文化遺産となった我が国を代表する名城です。
別名、白鷺城とも呼ばれるこの城は、幾度もの危機を乗り越えて、江戸初期に築城した当時の姿をそのままに現在へと伝えています。
(当コラム 2018年06月15日)
https://www.asuka-g.co.jp/column/1806/008214.html
筆者が姫路城を訪れた時(2018年)に印象的だったのは、城の周辺で和服姿の女性をちらほらとお見受けしたことでした。城内で茶会などのイベントが催されていたようです。毎月何かしらの市民イベントが催されている姫路城は、いまも「姫路市民に活用され生きている城」なのです。このことからも市民価格の存在はそれなりに理由があるといえるでしょう。
また、2500円という値上げは世界遺産という観点からみても、決して高額とは言えません。
比較検討のため、筆者は世界遺産に指定された各国の城からその入場料をまとめた表を作ってみました。姫路城はまだ安価なグループにあり、ヴェルサイユ宮殿の35ユーロ(6500円)を筆頭に、その多くは四千円以上という価格帯が一般的となっています。![]()
※世界遺産に登録された城の入場料(筆者調べ)![]()
※入場料の比較グラフ(筆者作成)
この二重価格を導入した姫路市の見解が市の公式サイトに出ています。
3月1日以降の姫路城縦覧料等について
この度の料金設定については、姫路城の維持管理や保存整備を適切に行い、確実に後世に継承するため、今後10年間の特別史跡の維持管理運営費、保存継承につながる保存修理、整備等に必要な費用を積算し、収支バランスを考慮して決定いたしました。
(姫路市公式サイト・世界遺産姫路城 ご利用案内)
https://www.city.himeji.lg.jp/castle/0000030746.html
姫路城はこれまで、明治、昭和、平成と3回の大修理を経て、今日(こんにち)の姿が保たれています。石垣は17世紀の技術で組まれており、その上の城郭は木造。コンクリートも鉄筋もなく地上から45メートルの高さ(大天守)を保ち続けるのは容易ではありません。![]()
※姫路城と石垣(筆者撮影)
継続した保守、定期的な更新ができる維持費を賄える仕組みがあってこそ、城郭を未来に継承することができます。
そのための入城料ならば出し惜しみする人はいないことでしょう。
天下人といわれた織田信長は、本能寺の変が起きた年(1582年)の正月、配下の武将をはじめ一般庶民にまで、安土城内を見物させました。しかも入城料を取って。
豪華絢爛な安土城の見物料を徴収した、織田信長の狙い
(GOETHE/Takuji Ishikawa 2023年5月16日)
その時、入城料を徴収した人は信長ご本人だったと記録(『信長公記』等)にあるそうです。今年の大河ドラマ『豊臣兄弟』でそのシーンの再現はあるでしょうか。ちょっと楽しみです。(水田享介)