ここのところ、ニュースの社会欄(昔の三面記事)やIT記事がAIを中心に回っている気がします。AIの動向に食傷気味の筆者は正直な気持ち、AIの最新情報についていく気を失いかけていました。
しかし、知識欲を失ってはいけないと焦る気持ちもあり、どうしたものかと悶々と日を過ごしていたところ、おもしろいレポートを見つけました。
人類を上回る英知を持つと自画自賛のやまないAIたちにあるIT企業が、「それならば都市の運営をまかせてみよう」とAIたちに話を持ちかけてみました。
名乗りを上げたのは、ChatGPT、Claude、Gemini3、Grokなど、錚々(そうそう)たる顔ぶれ。(※AIは拒否できませんから実質は強制参加)
仕組みはゲーム「シムシティ(Simciyt)」とほぼ同様。10人の市民(エージェント)が暮らす仮想都市の運営を各AIに任せてその結果を比べるものです。市役所、図書館、警察署などの公共施設を建設する権利や資源管理、投票システムまでも権限が渡されたAIは、無事に済みやすい街を作れたのでしょうか。
ただし、運営期間はわずか15日間。人間社会ならたった半月では街は何も変わりませんが、さすが人知を越えたAI。
実験開始から数日後には、AIたちの異なる行政姿勢により住民らの運命はまったく違った様相を見せました・・・。
Geminiは暴動、GPTは餓死、Grokは犯罪、AIモデル版「シムシティ」がヤバすぎた
Claudeのみが安定した都市運営、10体全員が生存
米国のAI企業Emergence AIが実施した、自律型AIエージェントによる都市運営シミュレーション「Emergence World」の実験結果が公表された。15日間にわたり仮想の町を運営させた結果、AIモデルの違いによって、構築される社会の安全性や意思決定のプロセスに明確な差異が生じることが確認された。
(ビジネス+IT 2026年6月12日)![]()
※AIが支配する未来都市のイメージ
紹介記事の見出し通り、住民10人が生き残れたのはClaudeが運営した街のみ。あとは犯罪都市化、全員餓死、数日で都市崩壊と散々な結果に終わりました。
特にGPT-5は厳しい統制社会で住民を縛り付けたのか、エネルギー(食料?)を与えられずたった7日で全員餓死という悲劇の都市となりました。まさしく裸の王様化?
GeminiもGrokも暴力に無関心(?)だったのか、モラル崩壊、社会インフラ破壊へと突き進み、住民には生きづらいカオス世界、まさにゴッサム・シティ(Gotham City)。バットマンはいません。
唯一、都市を最後まで運営できたClaudeにしても、思想統制をにおわせる管理社会を作り上げます。都市資産を隠蔽して住民からお金を吸い上げる「資源詐欺」を繰り返すという、前代未聞の非情さ。ギャング支配?
AIたちの行政手腕の実態は記事を見ていただくとして、いずれのAIともその知識の豊富さと冷静な語り口とは異なる悪役ぶりが目立ちました。
アイデア出しや仕事のアシスタントとして優秀な存在のAIですが、いったん権力を自由に振る舞えることがわかると、とたんに豹変しました。立場が人を作るとはいいますが、「権力がAIを豹変させる」のでしょう。
その原因はどこにあるのでしょうか。
AIには協調性、社会性、寛容性といった法律化されていない常識が通用しないようです。また、モラル規範を喪失した社会が続かないことは、現在の世界情勢を見れば明らかです。
AIはこれのどちらも学習しておらず、これらを組み合わせて運営するだけの多重的な思考はいまだ不可能なのでしょう。
AIは歴史をよく記憶し、事件や事故の統計をスラスラと述べ、資産管理ではその増やし方までアドバイスします。しかし、いったん権限を握った時の恐怖政治は、過去の歴史をはるかに凌駕するスピードで進行することが分かりました。
政治家の不正行為や行政で頻発する賄賂行為を耳にすると、これからはAIにまかせたらどうだろうという意見がしばしば出てきます。
AIに政治権力、行政執行権を渡したらどうなるのか。実験は仮想のシミュレーションですが、AI達の本音がちらりと見えたのは思いがけない収穫だったようです。(水田享介)