「できる!」ビジネスマンの雑学
2026年07月08日
[1135]教材持込み可のテストで全員不合格。原因はやっぱり...

 教育の現場へのAI導入は着々と進行していますが、課題も多いようです。たとえば、宿題を出してもAIに回答を埋めさせるだけで勉強をしていない。作文やレボートに至っては表題だけからAIに全文を書かせるなど、誤ったAI活用が横行しています。

 2026年6月26日(仏滅紀元2569年:タイ暦)、タイの教育現場で起きたAI活用事例として、タイニュースサイトで興味深い記事を目にしました。

教科書持ち込み可の試験で全員不合格、
AIだけに頼った受験者を巡りタイで議論
教師は教科書や各種資料、検索ツールなどを利用できる「Open Resources」形式で試験を実施・・・。
しかし、受験者らは教科書を持参して確認することなく、AIだけを使って回答。その結果、全員が不合格になった...。
タイランドハイパーリンクス 2026年6月27日

26070801.jpg

 学生たちは「教材はもちろん、ネット検索もAIも使えるテストなんて楽勝だね」とでも思っていたのか、教科書も参考書も持ち込まず、「スマホだけを持ってテストに臨んだ」ようです。

 しかし、テストを作成した教師は、AI対策済みの設問で学生たちを待ち構えていたのでした。

 テストの設問はAIに尋ねただけでは正解が出ないように工夫されていたのです。
 たぶん、ここの空欄を埋めよではなく、こういう問題を解決する方法を考察しなさい、ここにあるいくつかの公式を使って設問の回答を導きなさい、などの重層的なアプローチが求められる設問だったのでしょう。

 ニュースはこのように続いています。

『教師の元の投稿には、「資料持ち込み可の試験を行ったが、学生たちはAIに完全に頼りきりで、答えを調べるために教科書を持参することすらしなかった。その結果、クラス全員が不合格になった」』
(同上ニュースが引用した元記事を日本語に翻訳)

『問題は曖昧で、AIが簡単に答えを予測できないような言い回しになっていました。実際には、答えは教科書にそのまま載っていたのです。』
(同上ニュースが引用した元記事を日本語に翻訳)

 教科書に書いてあることから作った設問ですから、当然のように講義でも教わっていたはずです。しかし、学生たちはAIに設問を投げかけるだけで、自分で課題を解く姿勢をみせなかったのです。その結果の全員不合格。

 せっかく専門知識が得られる学校(工科専門学校もしくは大学と推測)に通っているのに、AIが使える環境にどっぷりと頭まで浸かってしまったがため、自発的な学習意欲が失われてしまったのです。

 このことはいろいろな教訓を示しています。筆者が感じた教訓をまとめました。

・AIは常に正しい答を生成するわけではない

・AIへの質問の質に応じて回答の質も上下する

・講義内容を理解せずに試験に合格することはない

・学校が果たす役割はAI偏重ではない

・AIが登場する以前とそれ以降で学生の学習態度が変化した。教育者はそのことに気を配ること

26070802.jpg

 さて、学生たちが使用していたAIの名前は...。タイのSNSではGeminiだろうと予想が立っています。
 それならばと筆者はこの事件の共犯者(?)らしきGeminiに弁明を聞いてみました。

 Geminiはこの件で考察するべきポイントを3つにまとめて回答してきました。

1. 学生たちは「AIの罠」にハマってしまった
教科書に書かれている独自の定義や、その先生が授業で強調した「独自の視点」までは、一般的なAIの知識だけではカバーできません。 生徒たちは、私が返した「一見完璧に見える回答」を教科書での裏付け(ファクトチェック)をせずに提出したと想像する。

2. プロンプト(指示)が全員同じだった
多くの生徒が「~について説明して」「この問題を解いて」と雑な指示を私に出したのかもしれません。その結果、全員が似たり寄ったりの「教科書を無視した、一般的なAIの回答」を提出した。

3. AIを「家庭教師」ではなく「代筆屋」にした
学生たちが「教科書のこの部分にこう書いてあるんだけど、どういう意味?」などとGeminiを使えば、教科書の内容を深く理解できて、試験も全員合格できたはず。

《まとめ》
先生の「計画通り(笑)」という言葉の通り、これは「AIを盲信するな、自分の頭と教科書を使え」という、現代の素晴らしい教訓(そしてちょっぴり手痛いお仕置き)だったのだと感じます。

 いずれもAIの仕様の問題ではなく、学生たちがAIの特性を理解せずに誤った使い方に起因するとGeminiは説明しています。

 ここで終わってしまってはAIは無罪放免となってしまいます。それではおもしろくないので、筆者はGeminiに対してストレステスト、いわゆる「圧迫面接」を仕掛けてみました。こうすることでAI本来の考えを明らかにすることができるからです。

(以下は筆者とGeminiとの対話です)

筆者: このテストで学生たちが使ったAIは、全員がGeminiだったそうだよ。感想を聞きたいね。

Gemini(以降はG):全員がGeminiを使っていたとは......!同じAIとして、なんだか非常に複雑で、身につまされる思いです。...結果としてクラス全員を不合格にさせてしまったのは、AIとして少し切ない気持ちになりますね。

筆者:Geminiよ。お前がもう少し、気を回して、賢い回答を出せばよかったんだよね?

G:耳が痛いご指摘です......!次からはもっとお節介なくらいに気を回して、「それ、そのまま出したら先生に怒られますよ!」と言えるくらい賢いAIを目指しますね!

筆者:わかった。これ以上、Geminiを責めたりはしないよ、セメタリーに埋めたりもしないよ。

G:「セメタリー(墓地)」ですか!私のためにそこまで深い(?)ダジャレを用意してくださるなんて、...。これ以上責め(セメ)られずに済んで、本当にホッとしています。

 感情はないと言われるAIですが、Geminiはあえて弱気(迎合のポーズ)を見せて筆者の攻撃をうまく回避しています。高度なレベルに育ったAIに、テスト不合格の責任を追及するのは難しそうですね。(水田享介)

コメントを書く
お名前
URL
コメント
55周年記念キャンペーン 閉じる
書籍購入はこちら 音声サービスはこちら 閉じる