筆者は2026年の今年、もっとも驚き悲しんだ事件を目にしました。
この事件の発端は2026年7月、米国のある古書店が一度に1000冊ものネット注文を受けたことに始まります。
訝(いぶか)しんだ業者は追跡タグを同梱して荷物の行く先を調べたところ...。
着いた先は巨大な倉庫。入口には「開いた本に食らいつこうとするティラノサウルスのロゴ」(下記記事より)。まさに本を喰らうことを目的とした工場だったのです。
なぜAnthropicなどAI企業は、古書を買い集め裁断し処分しているのか
これらの企業(注・AI企業)が稀覯本や古書を大量に買い集め、大規模言語モデルに読み込ませている...。しかもその過程で、元の紙の本は背を裁ち落とされ、そのまま処分...。
(注・AI企業の)社内文書には、「世界中のすべての本を破壊的にスキャンする」つもりだと記されていた。
(Forbes JAPAN 2026年8月20日)
(forbes.com 原文)
https://www.forbes.com/sites/maryroeloffs/2026/08/17/ai-companies-are-buying-and-destroying-antique-books-heres-why/![]()
類似の記事がいくつものネットメディアに出ています。
希少本の輸送状況を追跡したら...。
AI企業にとって紙の本はAI生成文章が混入していないデータ源として価値があり、オンラインでは入手できない書籍を探し出して購入し、デジタル化しようとする需要が生まれている...。
(GIGAZINE 2026年08月18日)
今年になってから、AIに読ませるための学習データが枯渇を迎えたとの報道が増えています。AIの思考ルーチンを鍛えるためには、人間の深い思索を経て書かれた文章、「人間由来のテキストデータ」は不可欠です。
米スタンフォード大報告書、AI学習データが
枯渇しつつある「ピークデータ」を警告
これまでテクノロジー企業はウェブ上の膨大な文章をかき集めることでモデルの精度を向上させてきたが、その無償の供給源が限界に達しつつある。
(ビジネス+IT 2026年5月4日)
本という記録メディアが誕生して以来、おそらく1000年以上の蓄積があったはずの人類の書籍は、たった数年でAIに読み尽くされたのでしょうか。
実はそうではなく、データ化されネットに流布する文字情報が読み尽くされただけで、古書や専門書などの分野はAIにはまだ手つかずだったようです。
これからはそうした分野の書籍も読み尽くそうと、AI企業は古書を買いあさっては委託した企業の倉庫に運び、スキャン後はゴミとして廃棄するシステムを構築していたことが判明しました。
数千冊単位、中には百万冊もの古書を購入していたというのですから、お金さえ出せば何でもできるという発想はいかにもIT企業ですね。
「いい本は手元に置いておこう」、「本は汚さず大切に」、「次世代に残したい本はどれ」という価値観は、こうした企業にはないのでしょうか。
AIというシステムはある意味では「知の偏在」であり「人間性を喪失した英知」でしかありません。
人間の創作物というごちそうを失ったAIは、お腹を空かせたあげく共食いに走り、共倒れしてしまうかも知れませんね。そうはならないことを願いつつ。(水田享介)