「できる!」ビジネスマンの雑学
2026年09月04日
[1159]テクテク歩く江戸の旅《江戸時代の経路検索》

 紅葉狩りに収穫体験...、「行楽の秋」がまもなくやってきます。「行楽」は「物見遊山(ものみゆさん)」ともいい、どこかに出かけて遊び楽しむ意味です。

 行楽の足となる乗り物といえば、自転車、クルマ、バス、電車(新幹線)、さらには船、フェリー、航空機など多種多様。どれに乗るのかも楽しみのひとつ。車窓の風景を楽しみながら「お弁当を使う」ことも旅の醍醐味ですね。

 ここまで読んで、何を今さらと思う方も多いでしょう。

 実はこうした旅のスタイル、150年前の日本では不可能だったのです。日本初の鉄道「新橋~横浜間」が開通したのは154年前の1872年(明治5年)。
 この路線以外では2年後の1874年(明治7年)に大阪~神戸間、1877年(明治10年)に京都~大阪間が開通しました。

 東海道線(新橋~神戸)の開通はさらに遅れること、12年後の1889年(明治22年)まで待たされました。鉄道旅の恩恵を受けるのはこれ以降のことのようです。

 ではそれ以前の日本人はどんな旅をしていたのでしょう?

 自分の足で歩くほかありませんでした。テクテク、テクテク。

 このたび、江戸時代に人々が歩いた街道とその所要日数がたちどころにわかるマップ、「江戸時代の経路検索」が登場しました。

《江戸時代の経路検索》
https://maps.chizutodesign.com/edo-routing/

 制作者はグラフィックデザイナーの「地図とかデザインとか(@chizutodesign)」さん。

 使い方はとても簡単で、経路検索に出発地と到着地を入れるだけ。地図をクリックしても入力できます。

江戸時代の街道の経路と所要日数がわかる「江戸時代の経路検索」
主要街道の描かれた地図が表示されます。地図で直接出発地・到着地を選ぶか、左上の検索用ウインドウに出発地・到着地を入力し、移動手段を選ぶと、経路と所要日数が表示されます。
GIGAZINE 2026年09月02日

26090400.jpg
※駿府(静岡市)から伊勢神宮まで

 東海道五十三次の弥次喜多も行商人も大名行列も、幕府奉行の高官さえも、ひたすら目的地まで歩いていました。

 歴史小説『落日の宴 勘定奉行川路聖謨』(著・吉村昭)では、主人公の川路聖謨(かわじ としあきら)は江戸・長崎間を6往復したそうです。川路は駕籠(かご)を使うことを嫌いもっぱら歩き通したとあります。
 小説の最後では再び外国奉行を拝命しますが、もう任官先(長崎)まで歩けないと悟って職を辞したそうです(※)から、江戸時代は「歩けなくなったら退職、隠居」はそう不思議なことではなかったようです。
(※あくまで筆者の感想)

 筆者は以前、アスカエフプロダクツのサイトで江戸時代の旅について執筆しています。

[第55回]-江戸時代、伊勢講参りの庶民旅を体験する展示
https://asuka-f.co.jp/column/20241204-mizuta-column/

 江戸時代後半に、廻り田村(東京都東村山市)から伊勢参り、金比羅参りに出かけた旅日記をご紹介しました。

 さっそく【江戸時代の経路検索】で経路と所要日数を調べてみました。

「府中-伊勢神宮」
 結果=距離:517キロ-ゆっくりで 17日

「伊勢-大街」
 結果=距離:520キロ-ゆっくりで 14日 

 この旅は「江戸-伊勢神宮-高野山-大阪-金比羅宮-京都-善光寺」という旅程で二ヶ月ほどかかっています。

26090401.jpg
※旅程をマップに反映(筆者制作)

 この経路検索を使えば、四国の歩き遍路の大変さもわかりやすくなります。松尾芭蕉の「奥の細道」は歩くだけで何日ほどかかったでしょうか。

26090402.jpg
※四国をお遍路すると

 筆者の先祖は江戸の終わりから明治にかけて、田代(佐賀県鳥栖市)から京都の西本願寺まで信者の証文を受け取りに行ったそうです。

 今なら「新鳥栖~京都」は新幹線を乗り継いで3時間半、運賃はひとり17,000円。さて、筆者のご先祖様はどう歩いたでしょうか。西国街道(山陽道)をひたすら歩いたはずです。

 「田代-京」
 結果=距離:674キロ ゆっくりで 21日 

 往復だけで42日。1350キロの歩き旅。旅費は42日分の食事と宿代がかかっています。
 証文ひとつにこれだけの日数と費用をかけるとは...。1901年(明治34年)には神戸~下関間の鉄道が開通しています。それまで待てなかったのでしょうか。「何十年も待てるかっ!」という声が聞こえてきそうです。

 昔の人の情熱は今の私にはもう理解できません。

 《江戸時代の経路検索》は古(いにしえ)の記録からいろいろな想像を巡らせてくれる古くて新しいマップです。ぜひお試しください。(水田享介)

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