いっこうに停戦の気配を見せないウクライナやイランでの戦争の影響でしょうか。原油の高止まり、原材料価格の高騰が続いています。国内では人手不足や自然災害により、物流インフラや交通網が脅かされています。
いずれも物価を押し上げる要因でしかありません。今年9月は調味料、加工食品など5千(4923)品目もの値上げが実施されました。
その影響も冷めやらぬまま、10月から3千品目以上の値上げが予定されています。飲食料品をはじめ、加工食品や菓子など幅広く値上がりします。
気になるところでは、発泡酒や第三のビールは7円超値上げ(350ミリ缶)。ビールは9円ほど値下がりする一方、チューハイは28円から35円へ増税となります。
家計に占める食費の割合がさらに増えそうです。![]()
※イメージ
飲食料品10月も値上げラッシュ 3000超、ビールは減税
10月から暮らしに密接に関わる価格や制度が変わる。飲食料品の値上げラッシュが続き3千品目超の価格が上がる見込みで、加熱式たばこは増税の影響を受ける。物価高騰が進み、家計の負担は重くなりそうだ。
(共同通信 2026年9月26日)
10年以上も前になりますが、当コラムでは「ビール税」について考察しています。
[049]戦費調達だったビール税。のん兵衛の戦時体制は今も続く
平成24年度(2012年)ではビール単体だけで6,155億円(酒税の45.6%)も納税しています。発泡酒を加えると7,210億円(同53.4%)と酒税全体の半分以上...。
わずかな値下げの一方で、発泡酒・第三のビールは値上げしたいそうです。その理由が未成年の飲酒防止、酒の飲み過ぎを防ぐためとか。
(当コラム 2015年05月13日)
https://www.asuka-g.co.jp/column/1505/007706.html
ここ10年ほどの間(2012年⇒2023年)、酒税全体の税収は1,500億円ほど減少しています。2023年(令和5年)のビール税は 6,116億円。11年間でビールの税収は1,100億円の減少です。
酒税が減少した主因は、ビールからの税収減にあると言えます。ビールの税率を何度も変更してきたのは、酒税を担うビール税をこれ以上減らしたくないという本音がうかがえます。![]()
※「酒税の課税実績(平成24年度)」![]()
※「酒税収入の状況(令和5年度決算額)」
筆者が過去のコラムを読み返していた時、気になる発見をしました。
2012年の「発泡酒・第三のビール」の税率アップ理由は「未成年の飲酒防止、酒の飲み過ぎを防ぐ」でした。(※コラム[049]に書いた通り)
今回の値上げの根拠はテレビの報道によると、「発泡酒・第三のビールの味がビールと遜色なくなったから」としています。
今月中の"駆け込み"需要も? ビール・発泡酒の税率変更へ
今回、国がビール系飲料の税率を統一した狙いについて、財務省幹部は「ビールと同じくらいおいしくなったものには、同じ税金をかけることが税の公平性の上でも望ましい」と説明しています。
(サンデーモーニング 2026年9月27日)
税率を上げる根拠がそのつど変わるようでは説得力を欠いてはいませんか。財務省がビール税率の一本化を悲願とするなら、先に課税の根拠を統一しておくべきだと筆者は思います。
『吾輩は猫である』(夏目漱石)では漱石はたびたびビールの話題を取り上げ、最後には猫にまでピールを飲ませるシーンがあります。
「どうしても猫とビールは性が合わない。これは大変だと一度は出した舌を引込めて見たが、また考え直した。...
吾輩は我慢に我慢を重ねて、ようやく一杯のビールを飲み干した時、妙な現象が起った。始めは舌がぴりぴりして、口中が外部から圧迫されるように苦しかったのが、飲むに従ってようやく楽になって、一杯目を片付ける時分には別段骨も折れなくなった。もう大丈夫と二杯目は難なくやっつけた。ついでに盆の上にこぼれたのも拭うがごとく腹内に収めた。」(『吾輩は猫である』より)
明治の初めに日本でビール製造が始まると、国内生産奨励のためビールはワインと共に非課税でした。それが1901年(明治34年)の麦酒税(ばくしゅぜい)で課税が始まります。ロシアとの戦争を控えており、軍事費増強が目的でした。
漱石が「猫」を書き始めたのが1905年ですから、猫も戦費調達に貢献したと言えるでしょう。
ところで、酒税を決定する根拠は「アルコール度数に連動した酒税」が世界の標準となっています。
しかし日本に限って言えば、ビールの税率は度数根拠を無視した高い税率のままです。![]()
※ビール税率のイメージ(2015年)
[158]「ビール類酒税一本化」見送りに想う
私たちは明治時代にできた戦費調達を名目としたビール税の名残りで、酒税に加え消費税まで飲まされるという、おそらく世界一税率の高いビールを飲んでいます。
日本の飲んべえたちは、アルコール度数を税率にするのが、世界の潮流であることをそろそろ学習した方がいいでしょう。一本化というなら、この方向で検討するのが常識的な判断というものです。
(当コラム 2015年10月20日)
https://www.asuka-g.co.jp/column/1510/007815.html
このコラムを書くに当たり、参考とした新聞記事は今も読めます。
税が決める「酒の味」~日本からビール消滅?~
ウイスキーなどとは逆に、酒税が販売価格の半分弱を占める日本のビールは350ミリリットル缶で200円以上するのが普通。世界的にみると100円程度が一般的なだけに、極めて高価な飲み物と言える。
(時事ドットコムニュース )
日本の税法は「ぜいたく品や嗜好品には高く」、「庶民から薄く広く」の精神で税収を上げる傾向があります。
食品値上げに関して筆者の心配は、このまま値上げが続くといずれコーヒーは呑めなくなるのではと恐れています。仕事前の一杯のコーヒーは頭をクリアにして、執筆を助けてくれる貴重な存在。決してぜいたく品ではないはずですが...。
コーヒーの主要生産地である「コーヒーベルト地帯」の天候が安定して、コーヒー豆の生産が回復するのを祈るほかありません。
とはいえ、筆者がコーヒー風味ドリンクを常用する日は近いかも知れませんね。(水田享介)