「できる!」ビジネスマンの雑学
2026年10月02日
[1169]ずるいぞ。AI芭蕉はヤングでイケメン、29歳

 松尾芭蕉と言えば、「古池や・・・」などの俳句や紀行文『おくのほそ道』を残した江戸時代の俳人です。「俳聖」、「芭蕉翁」とも称されるほどの文学史上の偉人でもあります。

 俳句を通じて「わび」、「さび」という美意識を文学表現に取り入れた芭蕉ですから、ほとんどの人は芭蕉のイメージは老成した仙人のような姿を想起していることでしょう。筆者もそうです。

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※「芭蕉肖像真跡(ばしょうしょうぞうしんせき)」渡辺崋山画
 天保年間(1830~1844)頃刊[パブリックドメイン:東京都立図書館所蔵]


「紙本淡彩奥の細道図〈与謝蕪村筆/安永八年十月の款記がある〉」(1779年)
(文化遺産オンライン)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/127694

 ところがその常識を軽く打ち破る大事件が発生しました。

 しかもその現場は芭蕉のふるさと、三重県伊賀市。市の中央図書館で芭蕉の姿をCG作成した「芭蕉のAIアバター」がただいま、お披露目中です。

はじめまして 私がAI芭蕉です
伊賀で蘇る「29歳」、質問に返答
芭蕉のAIアバターは、館内に置かれた85型の大型液晶ディスプレー(縦約190センチ、横約100センチ)に映し出され、招かれた県立上野高校生たちの質問に答えた。
...「伊賀の思い出は」との問いかけには、「そら、山ほどあるで。当たり前やった毎日が、今思えば宝物や」などと口を開きながら答えた。
(朝日新聞 2026年10月1日)

 画面の芭蕉アバターは伊賀上野から江戸に引っ越した時の年齢、29歳。着物姿にわらじ履き、手には杖、背には笠と江戸時代らしい歩き旅姿。しかし、そのお姿たるや、お肌つるつる、穏やかな笑みをたたえた超イケメンではないですか。

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◆AI芭蕉の決めポーズ

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◆展示の模様

※画像提供:ヒビノグラフィックス株式会社 様
 実証実験企画:ヒビノグラフィックス株式会社
 AI松尾芭蕉構想・開発協力:俳句グループ「せんせいの句会」

 このヤング芭蕉クン、最新のIT技術を惜しみなく注ぎ込んで誕生しています。

 その技術とは、
1)画面に奥行きと立体感を映し出す「空間再現ディスプレイ」
2)精緻な3次元CG技術
3)自然な会話を生成するAI技術、自然な表情と唇の動き(リップシンク)

 これら最新技術をシームレスに統合することで、まるで目の前の芭蕉クンと会話しているかのような疑似体験をもたらしています。

 展示の様子は報道でも確認できます。
 (リンク先にニュース動画あり)

「AI松尾芭蕉」ふるさとの伊賀でお披露目
対話の内容は俳句に関することをはじめ、好物や伊賀についてなど31の項目が用意されていて、そのほかにもある程度自由な会話も楽しめるということです。
(NHK ONE 2026年9月30日)

 このニュース映像を見た全国の芭蕉ファンの脳裏には、「俳聖・俳翁」のイメージを覆す衝撃が広がったに違いありません。

 掟破りではないでしょうか、伊賀市中央図書館さん。

 筆者は知っています。伊賀市が管理する芭蕉生家は「松尾芭蕉翁生家」、記念館は「芭蕉翁記念館」と、いずれも「翁」が付いています。芭蕉翁がヤングなイケメンであってはおかしくないですか?

 そして筆者が大学時代に受講した江戸時代の連歌~俳諧の講師だった恩師・雲英末雄先生は、その芭蕉翁記念館で講演会もしています。

 筆者は学生時代から幾度も雲英先生の薫陶を授かりました。大学卒業後、コピーライター職に就いた筆者は恩師からたびたび自宅書斎に呼ばれ、貴重な蔵書や自著を紐解きながら大学時代と変わらぬ講義(?)を受けていました。
 しかしながら、学究の道にも俳諧の道にも進むほどの才覚のなかった筆者は、コラムニストという現在があります。

「俳諧の世界‐芭蕉とその門人たち」
雲英文庫公開記念展示(雲英末雄 早稲田大学名誉教授)
https://www.waseda.jp/library/news/2015/03/05/1501/

 雲英先生が講演のため伊賀市に招かれたのは1977年頃。その時の想い出をのちに語っていただいたことがあります。
 「水田くん、凄いところだよ、伊賀は。いまだに芭蕉は生きている(ようだ)。市民のだれもが芭蕉と呼び捨てにせず、《芭蕉さん》と呼んでいた。」

 恩師が研究対象にしていた芭蕉は350年も昔の俳人でしたから、それは思いもよらぬことで嬉しい体験だったようです。

 そんなすごい町に最新技術を満載した「アバター芭蕉さん」が現れたわけです。伊賀市はどうなっているでしょうか。たぶん、自然体でおかえりなさいと受け入れていることでしょうね。
 なぜなら伊賀市民にとって芭蕉さんがいまも生きていることは共通認識であり常識だからです。

 筆者のお願いとしては、できれば芭蕉アバターは、健脚を鳴らした「おくのほそ道」時代、老成した晩年のお姿もご用意頂きたいです。(水田享介)

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