誰しもが小学生の頃、学外に出て学習する「野外学習」を受けた経験があるでしょう。
当日は朝から遠くまで歩かされ、何もない野原で昆虫や野草を観察したり、何を造っているのかわからない工場で説明を受けたり、時には炎天下の河原で石拾いなどの行事を受けるのです。
いたって内向的な筆者は、音のうるさい場所や青虫などの幼虫は特に苦手でした。苦手なことには集中力が続きません。成績のふるわない筆者には、野外学習は最初から負け組だったといえます。
ところが最近、石だらけの河原に引っ張り出された少女が、世紀の大発見を成し遂げました。
6年生が河原で拾った「ただの石」実は半世紀ぶりの大発見!論文にも
小学6年生が河原で拾った「ただの石」を調べたところ、非常に珍しい構造を持った石だったことが分かりました。同様の石が日本で発見されたのは半世紀ぶりで、国内2例目・・・。
(朝日新聞 2026年7月18日)![]()
※イメージ・高山植物と岸壁
「化石が見つかるかもしれない」(前出記事)
などと先生に言われると、筆者でなくともふつうの子どもなら「先生がまたありもしないことを言ってらぁ」と笑って聞き流すでしょう。そして河原で無駄に時間を過ごして、何もない一日として終わるのがふつうです。
しかし、この日、ひとりの小学生の女の子はそのひと言で本気になりました。その子はサメの歯の化石を見つけたかったのです。この時点でもう一般小学生とは違う知識を持ち、目標を立てていたことがわかります。
そして、少女はちょっと気になる石を見つけました。そのとき目にした特徴とは
「他の石と比べて分厚い」、「ちょっとサメの歯に似ているかな」と思わせる「表面に刻まれているギザギザ」(前出記事)
これだけで「ふと気になって拾い上げる」でしょうか。リンク先の写真では、少女の手のひらに収まる程度のこじんまりとした石ころにしか見えません(この説明は筆者がただの無知だからです)。
幸いなことにこのとき、
「野外学習には岩石の専門家で成蹊大学理工学部教授(現・成蹊学園サステナビリティ教育研究センター客員研究員)の宮下敦さん(地質学)が同行」(同上記事)
していたため、すぐにめったに見つからない貴重な石だとひらめいたのでした。
調査の結果、この石は多重円錐構造、別名コーン・イン・コーン構造をもつ貴重な石で、国内発見は50年ぶりでわずか2例目。あまりに希少な石のためサンプルが存在せず、研究したくてもこれまで見ることも触ることもできなかったというしろもの。
しかも、石油のある地層でみつかりやすい石のため、この石は石油の成り立ちの研究に役立つとみられています。
その研究結果は2026年に論文として発表されましたが、発見者の少女もそこに名を連ねています。![]()
※イメージ・タイ国の石造寺院
以前、当コラムで世紀の再発見をした小学生の女の子をご紹介しています。
[891]小学生が再発見したニホンオオカミ、カハク(国立科学博物館)で展示中
当時小学4年生の小森さんは、実物は見たことはなくとも図鑑などでニホンオオカミの特徴を事細かに諳(そら)んじており、標本を見た瞬間にオオカミ「レーダー」が反応・・・。
発見者の小森日菜子さんはこの春、ニホンオオカミの剥製と特定する論文を書き上げ、電子ジャーナル(国立科学博物館発行)で発表しています。
(当コラム 2024年05月31日)
https://www.asuka-g.co.jp/column/2405/012594.html
今の時代、勉強も調べ物も「AIに聞けば一発回答!」と言われています。はたしてそれで正しいのでしょうか。AIとは世界中のデータセンターに蓄積した知識を引っ張ってきて、さも自分の知識であるかの如く語りかけてきます。
そこにない知識は、AIは無視するか、知らないととぼけるか、フェイクだと否定するだけです。
もうこれ以上の技術発展のない世界として子どもたちに見せるのが、AIが提示する世界といえます。
大人たちを差し置いて、研究者さえも発見できなかったものを見つける力が、小学生にはあります。AIまかせの学習はその芽を摘み取りかねません。
野外学習はいたって苦手な筆者ですが、
「子どもたちよ、AIを捨てて野外に出よ!」と言いたい気分です。(水田享介)