「できる!」ビジネスマンの雑学
2016年06月20日
[254]若者から再評価、2016年は「カセットテープ元年」

 いまや、音楽も映画もストリーミング配信で楽しむスタイルが定着しました。ストリーミング配信とは、ネットワークにあるコンテンツを保存したりせず、再生して鑑賞するスタイルです。

 ちょっと前まで、CDが売れなくなった原因のひとつに、iPodなどのデジタル音楽プレーヤーの存在があげられていました。それでも音楽ファンは、聴きたい曲にお金を払い、楽曲をダウンロードして、自分の所有物にしていました。少なくとも制作者には対価を支払っていたわけです。

 ストリーミングはその最後の一線をあっさりと越えました。一ヶ月いくらという月契約の聴き放題です。ミュージシャンは配信元から一定の割合で版権料を受け取りはしますが、自分の曲がはやっている、街で流れるという喜びを実体験できる機会は、さらに希薄になったのではないでしょうか。

 こんな時代にありながら、なぜかカセットテープの人気が復活しているようです。

人気再燃カセットテープ ノイズや面倒くささも新しい
 音楽をデータで聴く時代になって久しい。CDの売上げは右肩下がりの一方で、2015年にはApple Musicなどの音楽を定額ストリーミングで聴き放題になるサービスが開始した。音楽の脱・モノ化が進む一方で、近年、カセットテープの人気が高まっているという。支持しているのはカセットテープに触れたことのない20代の音楽好きの若者達。レコードショップでの企画展も開催され、2015年夏にはカセットテープ専門店もオープンしたほどだ。時代と逆行するようなこの人気、一体何が魅力なのだろうか。
日経電子版 NIKKEI STYLE ライター:小沼理=かみゆ 2016年4月18日)

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 以前、このコラムでアナログレコードの復活を取り上げました。
[221]本当かな?レコード人気、じわりと復活
http://www.asuka-g.co.jp/column/1603/007818.html

 音にこだわる人がアナログレコードを再評価しているのに対して、カセットテープの復活は少々事情が異なるようです。

 人気の理由のひとつは、その「ノイズの乗った古い音質」にあるようです。カセットテープに親しんだ方はご存じのように、テープ走行時に小さな雑音(ヒスノイズ)が必ず入り込んできます。メーカーはこの雑音を取り除くのに大変な苦労を重ね、メタルテープやクロムテープを誕生させ、ノイズをカットする電子回路を幾通りも作ってきました。

 ところが、オーディオ技術者のこれまでの努力を軽くいなすように、今の若者達はノイズのある音楽を楽しんでいます。

 筆者の想像ですが、若者がカセットテープに魅了される理由は、デジタル配信の音楽がノイズを嫌う余り、あまりにもクリアになりすぎたことへの反動があるのではないでしょうか。音楽が終わったあとにつづく完全な無音状態。それはライブではありえないことです。突然現れる無音に感じる違和感が、若者をカセットテープに走らせている気がしてなりません。

 もうひとつは、どこでも聴ける音のプレイリストを自分なりに作りたいという欲求でしょう。どんなにいいプレイリストでも、ストリーミング配信なら誰でも完璧に聴くことができます。そこに人間が介在する余地も味わいも、しいて言えば「ライブ感」もありません。

 音楽は語学学習でも講演会でもありません。明瞭に聞こえるだけが音楽ではないことに、皆が気付き始めたのではないでしょうか。
 では、どんなスタイルでどんな音なら楽しめるのか。それこそがオーディエンスの自由。だからカセットテープがいいのです。

 ミュージシャンにとっても悪いことばかりではありません。昔のようにお金をかけずにデモテープを作って、不特定多数の方に試聴してもらったり地道に販売することができます。何よりも物をやり取りしますから、手間も時間もかかりますが、手紙やチラシを折り込んだりといったコミュニケーションも可能です。
 ミュージシャンがサインしたカセットテープは捨てられることはありませんが、ストリーミング配信は、ファンであろうとなかろうと楽曲を聞き終わった後に、残るモノは何ひとつありません。

 30年前のカセットデッキを未だに手放せない筆者も、この「時代のひと廻り現象」を楽しんでいるひとりです。
 安価なテープの生産と、カセットテープを手軽に再生できるラジカセの復活が待たれます。(水)

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