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 【普通の本屋 を続けるために/第5回・棚前の平積みこそが売上をつくる!】 久禮亮太
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【普通の本屋 を続けるために/第5回・棚前の平積みこそが売上をつくる!】 久禮亮太

今回はより具体的に、ジャンル担当者として自分の売り場を把握して、自在に使う方法を考えましょう。

前回までにご紹介したとおり、現状把握の
ために平積みの文庫や書籍にはすべて一番下の
スリップに、手書きで数字を書き込んでいます。
初めて積んだ日付と冊数、追加を積みたした時点
での残数や累計仕入数、販売数などです。
1000点もある平積みにいちいち手書きなんてして
いられないと思うかもしれませんが、多いからこそ
その一つ一つについての判断が正しいかどうか
スリップを見て検証できるのです。


第1回:「ごあいさつ」
http://www.asuka-g.co.jp/event/1603/007768.html
第2回:「まず、荷物を開けてみよう」
http://www.asuka-g.co.jp/event/1604/007871.html
第3回:「スリップを読み解いて、お客さんを知る」
http://www.asuka-g.co.jp/event/1605/007907.html
第4回:「棚と平台を理解するために
http://www.asuka-g.co.jp/event/1606/007944.html



●売上を構成しているものはなにか?


書籍の売上が増えるとはどういうことでしょうか。
陳列方法ごとに分解して考えてみましょう。

かつて担当していたビジネス書コーナーを例に
とると、エンド台に平積み40点、棚前平積みと
面陳で240点、棚挿しが約480冊ありました。
レジ前の島平台や通路沿いのエンド台に積んだ
ものは派手に売れる印象はありますが、点数が
少ない。棚挿しはアイテム数こそ多いですが、そ
の一つ一つは数ヶ月に一度売れるかどうかです。
そうなると、売れ方は地味でも点数が多い棚前の
平と面陳の売上構成比が、もっとも大きいはず
です。そして、その地味に売れているものをコツ
コツ増やせば、売上を増やせるに違いないと思い
ました。

それを実証しようと、毎月自店のPOS集計を詳しく
調べていたことがあります。ビジネス書の月間売上
のなかで、何冊売れのタイトルがそれぞれ何点
あったのか、その構成比と、売れ冊数ごとに各層
分けした前年同月比です。売上冊数のランキングを、
月1冊売れ、月2~4冊売れ、月5~7冊売れ、月8~
10冊売れ、11~15、16~100冊売れといった層に
分けてみるのです。
ジャンルの前年同月比の推移を追いながら、それが
上がったとき、下がったとき、それぞれの層の前年比
がどのように変動したのか。

その結果はやはり予想どおり、売上構成比で最大の
ボリューム・ゾーンは月2~4冊売れの層で、前年比
上がっているときは大抵、この層の前年比が伸び
いました。
これはおおよそ棚前平積みから売れたもので、それも
試しに置いてみた既刊が目立って多く売れていました。
エンド台の売れ行き最上位グループの前年比が下が
っていても、この中位グループが売れているおかげで
全体の前年比はプラスになることもありました。

一方で、1冊売れの層はいつも大して変動しません。
これは主に棚挿しから売れたか、平積みだったけれど
1冊しか売れずに見切ったものです。
在庫しているアイテム数では一番大きいこの部分が
変動していないのは、入店客数の分母があまり
変わっていないためでしょう。

つまり、急に入店客数が増えるといった外的条件の
変化がない限りは、棚前平台のマス目の一つでも
多くを売れる状態にしていく作業が、全体の売上に
直接影響します。

「月1売れ」は棚挿しか1売れで終わった平積み、
「2~4売れ」が棚前平積み、それ以上の売れは
エンド台やレジ前の島平台と、容易に区分できる
のは、もともとその売れ数をそれぞれの目標として、
置く場所を決めているからです。

棚前平積みは月に3売れを目標にしていましたが、
実際のところ、月に2~4売れの層で稼いだ売上を
棚前平積みと面陳の点数で割ると、平均1.4冊売れ
程度です。
ちゃんと3冊売っていた平積みもありましたから、
1冊も売れていないものが相当数あるのです。



●売上を引き上げる


売上のピラミッドをイメージしてみましょう。
エンド台で今でも売れ続けているものがその頂点
だとすれば、棚前平積みでようやく1冊売れたもの、
棚から1冊売れたといったものが三角形の底辺です。
売れずに積みっぱなしのものをより売れる可能性の
あるものに取り替えることは、売上ピラミッドの裾野を
広げる作業です。

次にするべきことは、1冊でも売れてピラミッドに参加
したものを、3売れ、4売れと、上位の階層へ引き上げ
ていく工夫を、平台のあちこちで試すことです。

大切なのは、大事な芽をうっかり刈らないことです。
売上スリップがレジから上がってきたときには、なぜ
売れたのか、誰が買ったのかと、記憶に刷り込みます。
売り場を忙しく掘り返している最中にも、平積みに仕込
んだスリップの数字と現物をすり合わせながら、返品
する以外の方法がないのかを考えます。

売れ行きのパッとしない平台の中でも、キラリと小さく
光る平積みが点在しているはずです。ゴチャっとして
意図の伝わりにくい平台や、類書が冗長に感じる並び
は、お客さんはどれを買って良いか決めづらい。

そこから、売れていないものを正しく間引き、売れている
光点をはっきりさせます。次はそれと組み合わせると
役立ちそうな近接するテーマのものを繋いでいきます。
売れる単品の点を線でつなぎ、平台の横方向の流れを
作るのです。

平台の関連性の線が意図できると、たとえ単品の売れが
止まっても、代わりに何を投入するべきかを判断できます。
点から線、線から面へ肉付けしていくイメージです。

そのときに、どんな書籍を置いていけば良いのか。
そのヒントが、日頃の売上スリップを見ることや、検品・
品出しといったことにあります。お客さんの本の選び方
にはどんなテーマが繋がっているのかという実例が豊富
にあります。必備スリップの回転数や奥付の刷り数からは、
何が定番のロングセラーなのかがわかります。

大物の新刊や話題書といった「出物」は、当たれば手を
かけなくても大きく売れるだけに、もちろん大切です。
しかし、中小規模の単店や、ジャンルを安定して売るため
には、出物が無くても影響されにくい商品構成にしておく
ことが、何より重要な仕事です。


次回は、まとめ買いを誘うことでピラミッドの中階層を厚くすることと、掘り出した既刊を売り場の中で動かしながら、売上の上階層に押し上げることを考えましょう。


◆久禮・亮太 (くれ・りょうた)

1975生まれ。高知県出身。元あゆみBOOKS店長。
現在はフリーランスの書店員「久禮書店」の店主として、
ブックカフェの運営や新刊書店の棚作り、スタッフ研修
に携わっている。
月・水・金曜は4歳の娘と一緒に家族の仕事を、
火・木・土曜は外で書店の仕事をこなす毎日。

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◆本連載は、書店向けDM誌 『明日香かわら版』 の
記事をもとに再構成したものです。
毎月の更新で、全10回の予定です。

  
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