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 2010年04月
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『こころ』は1914年4月から8月、朝日新聞に連載されまこころ.jpgした。
今から96年も前のことです。

『こころ』と出会ったのは、大学受験にすべて失敗し、予備校に通っていた1995年、池袋の古本屋で。もう一度読み直したのは2000年、大学生の末期、Kのことを思い出したのでしょうか。自発的に再読した唯一の書です。


ずばりこの本は、自殺予防の話なのだと、私は理解しています。

「私」という学生は、海水浴場で沖へ行こうとする「先生」を止める。
「私」は「先生」と出会ったときから心配を覚えていました。
先生の家に訪問するようになり、奥さんとも知り合い、二人で協力して、なんとか先生を理解しようと努める。

熱意は通じます。

先生は、この私一人だけを信頼するようになる。
その証として、それまで誰にも言えなかった「こころ」を、私にすべてさらけ出す。

遺言として。


1910年、夏目漱石は修善寺で大吐血をし、死の淵から奇跡的に生還します。
その前年、養父(実父50才のときの子で恥とされ、2才から7才まで養子に出されていた)から
金をせびられていた。
亡くなったのは1916年、『こころ』は漱石の「こころ」の集大成と言える。

両親から愛されなかったこと、愛を求めたゆえにKという親友を死なせてしまったこと。
人を信じたいのに利用しようとする人。
もっと生きたいのに、病は自由を容赦なく奪う。

小説中の「私」は、読むうちにいつの間にか読者の私と重なっていく。
「先生」は漱石に。

彼は、読者である誰かを心底信頼した。次の世代の人々に最高のものを残したかった。
半分以上死に首を突っ込んで、それでも若い私に語りかけたかった。
Kと先生は、「こころ」の中で自殺した。
私たちは彼らを救うことはできなかった。
しかし、それは虚構の中でのこと。
読み終わったとき、私たちは現実に帰ってくる。
失敗から学ぼうとする今生きる人として。

大事なのは信頼関係なのでしょう。
なんでも腹を割って話せるということ。
自殺せざるを得なかった先生は、腹から語りたくてしかたなかった。
しかし、誰にでも話せるわけではなかった。
私という、まじめな人間が必要だった。
まじめであることの価値を、改めて教えてくれました。

人生には辛い時間の方が多いかもしれないけど、この世に私が生まれてきたことの意味、
命尽きるまで生きる責任に訴えかける、いつまでも新しい本です。
いつまでも手放すことのできない本です。


リブロ池袋本店
地図・ガイド担当  菊田 和弘


書名 :こころ
著者 :夏目漱石
出版社 :新潮社

ISBN :9784101010137  
本体価格 :380円



文芸書担当をしていた2年前のある日、入荷してきたこの結婚しなくて.jpg本を目にしたとたんにズキュンと胸を射抜かれて思わず手にとっていたのでした。

「結婚しなくていいですか」

ちょうどアラサーと呼ばれる年代にさしかかっていた私。
酒井順子さんの『負け犬の遠吠え』が話題になったころはまだ20代前半。
そのころは「30才を超えて未婚だと"負け犬"?ふーん」「結婚?30才になるころにはしてるんじゃないかな~」なんて軽く考えていたら、あっという間になんだか微妙なお年頃。
周りの友達はどんどん結婚していって、すでに出産を経験している子も多い。親もなんだかそこのところをうるさく突っ込むようになってきた...。

さてそこで、どうなの、私?
と改めて自分に問いかけるタイミングをまさに迎えていたのです。
仕事は大変だけどやり甲斐があるし、友達と遊んでいるのも楽しいし...。今は自分のためだけに自由に時間を使えているけれど、結婚したらそれは家族のために費やすものになるのだろうか?
若いうちなら一人でいるほうがラクだけど、年を取っていざ"一人"になったときにその"孤独"と
向き合っていけるのだろうか...?
それじゃあ私は何のために結婚したいのだろう?そもそも結婚って、何なのだろう...?

来たるべき30代に向けていいようのない不安を感じつつ、まだギリギリの若さに甘えていたい
なんて自分勝手に悶々としていた私の前に現れた、この作品の主人公"すーちゃん、35才独身"。
勤務先のカフェで新米店長としてバイトの若い子をうまく使う自分に充実感をおぼえつつ、ふいに
頭をよぎる"ひとりの老後"に大きな不安を感じる毎日の中ですーちゃんは自分に問いかけます。
「私の人生って?未来って?」。そのリアルで直球なモノローグはまるで私のココロを見透かされて
いるようで、「そうそう!そうだよ」と深く頷きながらページを繰っているうちに、あれあれ?なんだか
じわじわと視界がぼやけてくるのでした。

日々の暮らしを淡々と、でも腐らず紡いでいくすーちゃんの毎日。
いくら自問自答を繰り返しても、簡単に答えがでることではない。今日からつづいていく明日と
いう日に、人生が180度変わってしまうような出来事が起こるわけでもない。でも、それでいい。
肩の力を抜いて、また明日から自分なりに精一杯生きていきたいと素直に思わせてくれる作品です。

益田ミリさんのゆるいイラストがまた秀逸!

 
今井書店グループセンター店
竹内麻紀子

結婚しなくていいですか すーちゃんの明日

著者:益田ミリ
出版社:
幻冬舎
ISBN:9784344014510 
本体価格:1200円



最近では少し、落ち着いてきたものの、ほんの一寸前までは、エライ勢いで売れていた「話し方本」。
そんなに話のが苦手なら話さなきゃいーじゃん、と開き直るようになってくると、周囲の評価は「変人、変わり者、気分や、絵に描いた様なAB型」ということになってくる。

まあ、"突発性人間嫌い"という奴なのであろう。たいして理由もないけれど他人と口を利きたくなかったり、逆に調子に乗って一口多かったりするわけである。
まあ、それで済めば周囲に迷惑をかけて、本人はいたってシアワセということなのだろうが、そうはいかぬ。
家に帰って、反省するわけである。

曰く、「ああ、あの人にあんな素気無い態度をとっちゃった。」
曰く、「あいつに余計なこと言っちゃったなあ。」

ようするにヘコムのである。
こうして"人間嫌い"は年々歳々悪化していくのである。

そんな全国の人間嫌いの皆様に書かれた本が、「人間嫌いの言い分」。
特にこの本の前半部分は、見事に人間嫌いの言い分を代弁している。

『別に友達がいなくてもいいじゃん。不便かもしれないけれども、恥ずべきことじゃない。
 むしろ友達が多くなければいけないというのは、強迫観念じゃねーの』

すばらしい、よくぞいってくれた、まったくそのとおり!
人間嫌いからいわせれば、友達が100人や200人もいると主張する奴の気がしれぬ。
本読んだり、音楽聴いたりする時間は、何処にあるんだよ......。


この本の問題点は、後半部分にある。人間嫌いの言い訳.jpg
とにかく人間嫌いをほめすぎるのである。
そんなに良いものじゃないけどネ、人間嫌いって。
本人が言うのだから、間違いない。

やっぱり人間嫌い共通の性癖なのかね、一言多いってのは。

丸善 津田沼店
菅原 淳


「人間嫌い」の言い分

著者:長山 靖生
出版社:
光文社
ISBN:
9784334032739
本体価格:700円


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