もーいーくつねーるーとー、バレンタインですが、大体アウェーな山名弘晃ですこんにちは。
サロンドショコラとか行きますか？今年はジャン・ポール＝エヴァンにしますか？

しかしながら当の男は、その価値がいまいち分かってません。だってバカですから。美味いのは
分かるんですが、それ以外には答え様が無いのです。チョコの味よりも、どこそこのカツ丼の盛り
が良いとか揚げたてだとか、そんなことが重要なのが男というイキモノです。

大体考えてみてください。ショコラティエの名前と味を結んでるような男って、いちいちうんちく垂れ
そうで面倒でしょう？そんな男は、グルマン気取りですから、せっかくあなたが見つけてきたチョコ
レートも、口先だけの感想になってしまうのです。当然舌も肥えてますから、色んなテクニックが
使えません。「手作り失敗しちゃった！てへっ☆」なんて、「じゃあ外食しようか、ソレ捨てて」と
なってしまうわけです。

一般的な男はどうか。実はモロゾフやメリーで十二分なのです。十分美味しい、企業努力がきちん
と見える商品だと思います。僕なんか価格付きのパンフレットが同梱されていたことがあります。
嫌がらせです。

さて。一ひねりしたいミートラバーには、こういうのはどうでしょう？
ホワイトチョコレートとブラックチョコレートを用意します。小さな小さなパッケージで十分です。それ
ぞれトリュフ１つずつ、数百円ので十分です。何となくお金掛けなきゃ！とか手作りじゃなきゃ！
とか思われるかもしれませんが、大丈夫。チョコより肉です。アンタもそうでしょう？

そんなチョコレートですが、渡すときに、「白と黒のチョコを一緒に口の中に入れると、灰色になる
かな？」と一言添えるとどうでしょうか。

「焦げ茶じゃね？」と答えられたあなた。彼氏の妄想力は低すぎます。

「え？マジで灰色になるの？」と答えられたあなた。彼氏は残念な人です。

正解は「半分コして確かめよう」です。

本当に半分コにして口の中で転がしても良いのです。そんな思春期も青春、間接キスでキャッキャ
ウフフです。学生だから出来るテクとして、口の中を確認するっていう、一歩間違えれば内臓マニア
の烙印ですが、学生なら平気です。とはいえ、のどちんこまで見せるのはどうかと思いますので、
舌先くらいでどうでしょうか？あらあら、いきなりバードキスのチャンスかしら。肉食ティーンあまつさえ
トラップマニアのできあがりですネ！

別に色なんかどうだっていいのです。ま、正直このとき「じゃああたし黒ね！」なんてウキウキして
しまうと、せっかくのシマウマを逃してしまいますから、ホワイトチョコを選びましょう。それも一口で
なく、半分。一気にムシャムシャしてしまうと、カモシカは怯えて逃げます。「美味しいね」これで
半分。彼氏が丸ごと食っても大丈夫。どうせ、味なんか二の次、小道具だと言うことを忘れては
なりません。そしてもう...あぁっ！

間違っても全身ホワイトチョコレートコーティング→舐め取って、なんてダメです。アンドロイドですか、
あなた!? 大体毛はどうするつもりですか！毛は！バカじゃないかしら！こんな事考える俺はもっと
バカだけど！ちなみに、僕が考えたのは髪の毛ですから、ミートラバーの皆様、あんたナニ考えて
んですか？っていうか、いつになったら本の紹介が出てくるんでしょうか、ねぇ？落合さん。(誰?!）

そんなある意味で楽しく辛いバレンタイン。男心を知るために次の書籍はどうでしょうか。

「立ちそば大全」

まったくもってモテる要素が皆無な題名ですが、その名のとおり、東京を中心とした立ち食い蕎麦のグルメガイドです。とはいえ読書感は、ガイドというより、多忙な著者の立ち食い蕎麦日記です。

冒頭で言いましたよね？男はカツ丼の盛りが良いだの気にするバカだって。これは、それを立ち食い蕎麦だけにクローズアップした本です。ここの蕎麦はグギグギしてるだの、かき揚げの中にニンジンが入っていてまぁまぁ豪華だの、ネギが取り放題だの、揚げたてサクサクだの、山手線を眺める席がいいだの、寒いから暖かいおつゆが嬉しいだの、もーどうでもいいこと、超ミニマムな事ばっか書いてます。

でも男ってのは、そういうことを気にするもんなのです。本書を読めば読むほどお父さんは忙しくて、だから頑張って働いているのだという実態が見えてきます。限られた昼食時間で手早く食べられる立ち食い蕎麦という選択。たとえ時間が無くても、安くても、美味しく楽しく食べること。それは人を幸せにするのです。

それに応えるべく、お店側は安くても美味しい蕎麦を提供しているのです。できるだけ茹でたてを、
できるだけたくさんの具材をと、300円足らずのお蕎麦に心を込めているのです。それは本書に
多数掲載されている料理写真に溢れています。

安くても美味しいゴハンを食べて幸せになり、元気になって仕事をする。そうして浮いたお金を家族や
恋人のために遣っていることを忘れてはなりません。そして、それはとても幸せなことなのです。あな
たが喜ぶ顔を見たくて男は頑張るのです。

ですから、この本に不幸せな記述はありません。読み終えた後は、幸せな空気が、明日も頑張ろう
という気力があなたを包むはずです。


ま、過去作を読んでみれば、結局この人って何食っても美味しいんじゃないか？という著者ですが、
意外に文献はしっかりしており、蕎麦の歴史から立ち食い蕎麦の歴史などしっかりと記述されてい
るのも、ウンチクがあってなかなか男心をくすぐりますね。

Be happy！全ての人に愛を。


マイブックシェルフヤマナ
取締役総合統括：山名弘晃

 
書名 ：立ちそば大全
著者：今　柊二
出版社：竹書房
ISBN： 978-4-8124-4153-4
本体価格：800円

みなさまお久しぶりです。大垣書店の吉川です。

今回私が、ご紹介させていただくのは『一坪の奇跡』。吉祥寺にある和菓子屋「小ざさ」の社長、稲垣篤子さんの処女作です。

この本は私の尊敬するダイヤモンド社の寺田さんが編集された一冊で、寺田さんは新しい書き手さんを発掘し、必ず重版のかかる処女作を作る名人として有名なお方です。
先日お会いした際に、寺田さんが「また、とても素敵な著者と出会えた。」と嬉しそうにされていたので、お話を伺ったところ『一坪の奇跡』をご紹介いただいたのでした。

稲垣さんは現在７８歳。今でも釜で餡を練り続けられています。稲垣さんが働き始められたのは、高校を出たばかりのこと。掘っ立て小屋の屋台に立ち、３６５日１２時間、父親が作った団子を売り続けられていました。自分が売る団子に一家全員の生活がかかっていると、暑い日も寒い日も店頭に立ち続けられた稲垣さん。彼女が家族を支えていくために「もう二度と泣かない」と心に決められたくだりは涙なくして読めません。
「なぜ働くのか」「なんのために働くのか」そんな働き甲斐や大義名分を先に探して、私は働くことの
本質を忘れかけていました。「生きていかねばいけない」から働く。意味を考える前に、まず真摯に
必死に動く。
その結果、あとからあとから仕事のやりがいや喜びが沸きあがってくるのだと、読んでいて伝わって
きました。
稲垣さんは、販売の経験をつんだあと、本格的に家業を継ぐために、生産現場を知るという目的で
男性だらけの職場であった「かま場」に足を踏み入れました。
そこで彼女は羊羹作りを通して、小豆との対話を始めます。美味しい羊羹はつくっているのではなく、
小豆本来の風味を引き出した結果できあがるものであるといいます。
技術を自慢するのではなく、あくまで素材の力を立てているだけと言える、そんな奥ゆかしさ、上品さ
が、きっと「小ざさ」の羊羹の上品な丸い味を支えているのでしょう。

稲垣さんがたどり着いた境地を表した詩のような一文を紹介します。

或る時から、風が見えはじめた。
或る時から、澄んだ炭の、炎の力強さをつかんだ。
或る時から、小豆の、紫の一瞬の輝きの声が聞こえてきた。

最初から稲垣さんも、小豆の声を聞こうと思って餡を練っていたわけではなかったと思います。
暑い日も寒い日も、小豆に向かって、その良さを引き出そうと、愛情を持って注意深く見つめていた
から、声が聞こえてきたのだと思います。
どんな結果が待っているか分からないけれど、前に進むこと。それは、暗闇の中を手探りで進むよう
に不安な事かもしれません。でもあらかじめ定めた行き先を目指して進むより、もっと高くて遠いところ
へ行けるような気がします。

また稲垣さんは、和菓子職人としても一流の人ですが、経営者としても筋の通った独自の哲学を
お持ちの方です。たとえ「小ざさ」の従業員であっても、羊羹が欲しい場合は、お客様に混じって
行列に並んで買わなければならない。障がいのある方を従業員として雇用しているけれど、補助
を貰うために働いてもらっているわけではなく、その方が「小ざさ」に必要だから働いてもらっている
ので、国からの補助金は受け取らないなど、見えない部分でもお客様や従業員への敬意を忘れ
ない、稲垣さんの人柄が伺えるエピソードが満載です。

上に立つ人が、率先して厳しすぎるくらいのルールを自らに課し、それを守ることで、従業員の方は
身が引き締まるとともに、安心して経営者に尊敬の念を持って、精一杯働けるのではないでしょうか。
きっと読み終わったあと、ノウハウ本を読んで技術を身につけるよりも深く胸に刺さる何かが、翌日
からの働き方を変えてくれると思います。


株式会社　大垣書店
営業本部 吉川敦子


書名 ：一坪の奇跡
著者：稲垣　篤子
出版社：ダイヤモンド社
ISBN：9784478013632
本体価格：1,500円

大きな声で「私この本すきなんですよ！」とは、言えない。
けれど、仲がよくて付き合いが長くてちょっとオタク寄りの友達になら、「見てこれ、ほんとしょうもなくておすすめ！」と、自信を持って手渡せる。
そんなすてきな本、『c』をご紹介したいと思います。

いわゆる四コマ漫画で、タイトル通り、ねこだらけ。
しかも、白いねこのみ。
たまに太っていたり、しっぽがなかったり、なぜかちょびひげがあったり、小さかったり、というちょっとの違いはあるものの、白ねこ一択！
台詞もないし名前もない、ただのねこだらけ。

そんな彼らが繰り広げる日常描写？四コマです。
気になる内容は、子どもを乗せたブランコを揺らしてあげていたら自分のスネに当たって痛かった、なんていうのはまだ中身のある方で、基本的には"アンニュイ"
"シュール""ナンセンス"といった単語の似合う場面がひたすら続きます。
ジュースにストローをさしてゴポゴポするだけとか、すごいのになると歩き回るだけ、
すりすりするだけ、浮いてるだけ、じっとしてるだけ。
それだけなのに、全作しっかり無意味でしっかりあほらしくて、いっそ愛おしい！
こいつら何なの、とつっこみたくてたまらなくなるはずです。

そんな妙な漫画ではあるのですが、人気があるのかどうなのか、十二月二十四日に
はなんと二巻が発売してしまいました。
疲れた現代人のあなたにこそおすすめです。読んでも「よーしまた明日もがんばろう！」
......とは決して思えませんが、このユルさで肩の力は確実に抜けます。一緒ににやにや
しましょう！

ささおき書店
藤原千代


書名 ： ねこだらけ
著者 ： 横山 キムチ
出版社 ：講談社
本体価格 ： 630円
ISBN ：9784063728262