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 2011年04月
書店さんのおすすめ
2011年04月



東京お祭り!大事典.jpgミシマ社HPの既刊本紹介コーナーには以下のように紹介されている。

東京では、ほぼ毎日どこかで「ハレ」がある!
歳時・祭り・イベント、全307の季節の行事を一挙紹介。
最寄り駅、今月の花だより、イベントカレンダー、インデックスなど、情報・資料も充実の毎年使える保存版。
そうだ、今日も祭りへ行こう!

まさしくこの惹句のとおり、とても便利で祭りに行きたくなる本である。
根津のつつじ祭りや、早咲き桜の河津桜祭り(伊豆まで行かずともこの桜がみられることを知った!御殿場線松田駅なり)、浅草の流鏑馬などなど、この本を手にしなければ出会えなかった祭りがたくさんあり、私はこの本にたいへん感謝している。

「祭り」という言葉は不思議だ。心に思い浮かべると、なんだか胸のあたりがキューとなってスーン!とする。子どもだった頃に感じた縁日の喧騒、楽しくてドキドキが止まらない気持ちが、今でも突如として蘇ってくるからだと思う。縁日で買うものがチョコバナナやわた飴から、ビールとイカ焼きに変わっても(笑)、やっぱり今でも縁日の
夜の空気を嗅ぐと楽しさで胸がドキドキする。
 
花を愛でる祭りや神社の厳かな年中行事など、大人になったからこそ楽しめる祭りもたくさんあって、
私の行動範囲をひろくしてくれた。ごく親しい友人と散歩しながらおしゃべりしたい時、私はまずこの
本を調べてどこかで祭りが行われていないかを調べる。休日の朝、急に「どこかに行きたい!」とい
う衝動に駆られたときもそう。ちょうどいいお祭りがなくとも、パラパラとめくってこの神社行ってみた
いな、こんな公園があったんだ、など行ってみたいところが見つかることが多い。

祭りが好きというと、なんだか浮かれた人のようだけれど、「ハレ」を楽しむことは心を浮かれさせる
ことよりも静めることに効果があるような気がしている。出かけていって、参加し、その行事を、花を、
きちんと味わう。日常をちょっと忘れて、だけど自分の目と心で味わう。ハレの気分がまた明日から
日常を生きる自分を整えてくれるような気がする。
疲れたら「祭り」を探して行ってみよう!名づけて「祭り療法」。薬としてこの本を処方いたします!

有隣堂  新百合ヶ丘エルミロード店
店長  門脇順子


書名 :東京お祭り!大事典―毎日使える大江戸歳時記
著者 :井上一馬
出版社 : ミシマ社
ISBN : 9784903908113
本体価格 :1,680円



あしながおじさん.jpg大震災から一か月。この書評の当番が回ってきたことを知ったのが3月31日。今、どんな本を紹介すればいいのか、自分の全体を検索しました。やはり金子みすゞがいいかと思って読み直したけど、みすゞの不幸がのしかかってきてやめた。『悲しい本』という絵本にしようかとも思って再読したけど、直接的すぎる気がした。長田弘の『詩ふたつ』も引っかかって、もう一度読んだけど、手軽には読めないなと思った。

最終的に、僕の心が向かったのは『あしながおじさん』でした。「あしながおじさん」はもちろん知っていた。しかし、読んだことがなかった。本棚に、この時まで読まれるのを待っていてくれたのだと思った。
両親に捨てられた孤児ジュディが、孤児院でこき使われ、本当に愛されたこともないまま高校卒業を迎えた。彼女には文才があった。「ゆううつな水曜日」という作文に目を止めた評議員(金持ちの慈善家)が大学に行かせたい、彼女を作家にしたいと申し出る。ただし、月一回の手紙を必ず書くことを条件にして。
手紙で成り立っている小説。ジュディの絵を交えたおしゃべりにどんどん引き込まれる。孤児院で、手紙の相手の影だけを見たことがあった。背が高くて足が長い。
だからジュディは「あしながおじさん」と呼ぶようになった。
おじさんは禿げていますか?なんて尋ねる。孤児院から出たことのないジュディには、見ること
なすことすべてが新しくておもしろい。「あしながおじさん」は、ジュディにとっておばあちゃんにも
お父さんにもお母さんにもなる。産まれて初めて持った家族。初めて心から愛する人。誠実な
ジュディの告白に僕もまた世界を見る目が洗われていきました。
こんなにも生きることは楽しく、わくわくするものなのだと思い出させてくれた。
ラスト。ジュディはついに「あしながおじさん」と会うことができます。僕も最後まで彼が誰なのか
わからなかった。正体がわかってから再び読むとまた味わい深い。支援する側の迷いや苦しみ
も伝わってくる。またこの話には後日談として『続あしながおじさん』も発表されています。まだ
読んでいないけど楽しみが一つ増えました。

運命としか言いようがない困難にある人と、裕福な支援できる人と。その関係は、被災者と
非被災者との関係に等しいのではないでしょうか。どんな困難にあっても差し出される手はある。
僕もささやかだけど、「あしなが育英会」に寄付しました。一人の人間を、大切に、関心を持ち
続けて見る(看る)ことが必要とされています。自立した生活を送ることができるようになった
ジュディの充足感、真に愛する家族を得たジュディの幸せ。胸に染みて、消えそうになった希望
の明かりを強く輝かせてくれました。
フィクションだからこそ、地獄を見た人たちにとっては癒しや励ましになるのだと知った一冊。この
本を大事に持っていることが希望を見失わないことだと信じます。

リブロ池袋本店
地図・ガイド担当  菊田 和弘


書名:あしながおじさん
著者:ジーン・ウェブスター(Jean Webster)
翻訳:谷口 由美子
出版社:岩波書店
ISBN:9784001140972
本体価格:756円

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