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 2009年08月
書店さんのおすすめ
2009年08月



岡山県倉敷市でマイブックシェルフヤマナという書店やってます、山名弘晃ですこんにちは。

倉敷といえば、美観地区!るるぶ!いやまっぷる?と観光地を思う方も多いですが、ウチとこは太平洋ベルトな工業地帯でございます。そのため、倉敷といえども、眼前はブレードランナー。縦横無尽にパイプが伸び、煙突から炎が燃え出る場所でございます。関東なら「へぇ神奈川なんだ、横浜?」「いや川崎」そんなイキオイです。
そんな立地ですが、読書家はもちろん大変多くいらっしゃいます、この不況下でも、1Q84は上下巻同時にお求めと、ステキ読書家が大多数で、お店としても一読書家としても嬉しく思います。

しかし、いくら大都会岡山とはいえ、出版業界の中心は東京。年に数回、様々な出版社と円滑なコミュニケーションを取るために上京し、営業活動に勤しむわけでございます。
かなりギチギチにスケジュールを組むため、新宿駅は鬼門です。地下鉄乗換えですら、大手町駅は軽い有酸素運動だと思います。

さて、出張の楽しみといえば、やはり夕飯でしょうか。
情報誌やTV、ネットで繰り広げられる新しくて美味しそうな食べ物は、東京が中心。寝る前にぱらぱらとめくる池波正太郎や東海林さだお、各種雑誌で、今度出張した時にはアレを食べようコレも食べようと、中途半端に詳しくなりました。

そんな欲求に最近加わったのが居酒屋というジャンルです。

数々の本がありますが、個人的な最近の珠玉は「吉田類の酒場放浪記」。
居酒屋.jpg
敬愛する飲んだくれ俳人の吉田類のTV番組をまとめたもので、朗らかに酒と酒肴を楽しむ俳人と、こだわりを垣間見せる店主との会話、終わりは俳句で締めるなど、番組の雰囲気はかなり再現されています。もちろん番組を見てなくても、気の良い居酒屋のガイドブックとして十分利用できます。本としても写真が鮮明なので、美味そう!こんなお店なら入れそう!とワクワク感も高い仕上がりです。

入るのに躊躇する店構えだけど中は極楽な店が多数ラインナップされ、文章から推測するに大変美味そうで大変楽しそうです。お店のオバチャンとの愉快な会話に客同士の妙な親近感。なんてことなさそうな美味いモツ煮に焼き鳥、アジフライ。ホッピー、チューハイ、謎のハイボールに憧れます。

地方にだってあるでしょ居酒屋くらい とお思いでしょうが、交通網が関係しておりまして、数は少なくなっています。
終電なんて11時、駅から歩いて20分ではなく、駅から車で20分。移動手段が基本的に車ですから、飲酒した場合、行き帰りが一苦労なのです。

だからこそ憧れる居酒屋はしご酒。安くて美味そうで、なにより楽しそう。「お酒は好き、でもその店が大好きだから行く」なんて、小売業なら冥利に尽きるわけで、そこから接客や文化を学びたい欲求もあります。そのため、ガイドブックという先人は地方者にありがたい存在なわけです。
なんて書き始めると本が書けそうな勢いですが、目下の問題は優先順位。限られた時間で果たして行けるかどうか、なんですよね。

だって、出張って仕事だし。(´・ω・`)




書名:吉田類の酒場放浪記
著者:吉田類
出版社:TBSサービス
ISBN:978-4-90434-501-6
本体価格:1,400円(税込価格:1,470円)

岡山県倉敷市
マイブックシェルフヤマナ 山名弘晃
http://www.yamana.co.jp



京都の大垣書店営業本部の吉川と申します。

店舗に2年、本部で仕入れを担当するようになって今年で3年目。今年の目標は、ビジネス書に強くなる!という事。
店舗にいた時に少しだけビジネス書を担当したことはあったのですが、新刊と補充を出すので精一杯で、基本がまったく分かっていないまま今に至る...という感じです。
一念発起し『10年後あなたの本棚に残るビジネス書100』(ダイヤモンド社)に載っている100冊を読みつくすぞ!と決意し、読んでいると面白くて!本に紹介されていないビジネス書にも浮気しながら、少しずつ読み進めております。


  asunokoukoku2.jpgさて、今回ご紹介するのは『明日の広告』 佐藤尚之:著(アスキー)

サブタイトルが「変化した消費者とコミュニケーションする方法」となっています。
広告業界や宣伝の手法について書かれた本ですが、消費者と向き合って仕事をしているという点において、広告の部分を「小売」や「書店」に置き換えても読めます。

特に私が書店員としてグッときたのは、「スラムダンク1億冊感謝キャンペーン」について書かれた部分。
このキャンペーンは、作者である井上雄彦さんの「読者のみんなにありがとうという気持ちを伝えたい」という思いを、全国紙など6紙の朝刊で表現した広告を発端とし、廃校となった高校を借りて湘北高校を再現し、黒板にスラムダンクのその後を描くというイベントに発展させたもの。
新聞という不特定多数の人が見るメディアで、ファンにだけ伝わる方法でキャンペーンを告知し、伝えたい相手にだけ伝わればそれでよしという排他的な方法で、伝えたい相手を絞って、思いっきり深くその関係を深めようとした手法は目からうろこが落ちるものでした。

新聞を何気なくめくっていて、心の奥底に大切にしまっていた作品の感動が、不意打ちで再度蘇る感覚。かつて読んだ作品の作者から、自分が感謝されるなんて予期していなかったからこそ、その感動はストンと心に落ちたのではないでしょうか。
『スラムダンク』という作品が今も売れ続けていることを肌で感じているので、より臨場感を持って読める事例でした。
また1つの作品に寄せる読者と作者の思いが、これほど深く神聖なものであると分かって、その間をつなぐ役割を担うものとして身が引き締まる思いもしました。

他にも、若手のクリエイターから投げかけられた「伝えてもらいたがっている消費者にちゃんと情報をデリバリーすれば、それでコミュニケーションは完成しているのでは」という問いに対して、レストランの例を著者である さとなおさんが提示する部分があります。

「例えばレストランに客が来る。もてなしていっぱい食べてもらい、気持ちよく帰ってもらうように設計するのがコミュニケーション・デザインだとする。それはそれでいいコミュニケーションだと思う。でも客を感激させるもうひとつ上のもてなしが存在すると思う。たとえば料理を出すときに食材のよさをニコニコ話すだけで、客は料理を2倍美味しく感じる。ワインを出すときにそのワインにまつわる美しいエピソードを語るだけで、その客はもっと気持ちよく酔える。そういうひとつ上のもてなし、もっと喜んでもらえる工夫、再訪したくなる楽しさこそ、クリエイティブのチカラじゃないだろうか。」と。


人手が足りない、時間がない、商品の物量が足りない、場所がないなど、売る側の都合で、私たちはお客様に本の魅力について語りかける事を怠ってはいないだろうかと思いました。
確かに状況は変化していて、昔ほど広告のメッセージを消費者に伝えるハードルは上がっていると著者は語っています。

情報や娯楽の種類が増えた今、本を読者に届けるハードルも上がっています。

雑誌を読まなくてもケータイで最新の情報は掴めるかもしれないし、マンガ以外にもゲームやアニメなどで面白いキャラクターやエピソードと出会えるかもしれないし、本を読まなくても分からないことはネットで調べられるかもしれない。
でも本には著者や編集者の思いや創意工夫が反映されていて、印刷されて情報が形になっているという紙媒体にしかない魅力があります。厳しい状況の中で本が選ばれる為に、昔以上に本を作る現場は、様々な技術や手法を投入し、質を上げるために切磋琢磨されています。

私たち書店も、消費者と生産者が変わっているのだから、その間を取り持つものとして変化し進化していかなければなりません。

ただ置いておくだけで物が売れる時代は終わりました。
どうやって読者に本の魅力を伝えよう、買いたいという思いを喚起しよう、と考える事は大変ではありますが、そこに書店員として働いていることの醍醐味が隠れていると思います。
消費者本位という視点に立てば、新しい広告の姿が見えてくると著者は語っています。私たちも、もっと売りものである本を消費していかなければならないと思います。そして「面白い」「感動した」「役に立った」という、消費者としての思いから、売場の展開を考えたりPOPを書いたりする事が、お客様の心に響く店頭を作るための第一歩ではないでしょうか。

消費者と生産者の間に立つ業種の人、すべてにお薦めしたい1冊です。


大垣書店
営業本部 吉川敦子


書名:明日の広告  変化した消費者とコミュニケーションする方法
著者:佐藤尚之
出版社: アスキー
ISBN:978-4756150943
本体価格:743円(税込価格:780円)


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