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 アーモンド入りチョコレートのワルツ
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アーモンド入りチョコレートのワルツ

 夏の思い出。その響きだけで、ひっくりかえりたくなるほど甘酸っぱい言葉です。 

 
わたしにとっての夏の思い出。台風が近づいている夜にした花火、全員寝坊して帰りの飛行機に遅れそうになった沖縄旅行、砂浜でした組体操(ピラミッドのいちばん上によじ登ったときの、友達のわき腹を踏んでいく感触!)、といった大人になってからの悪ふざけや、もっとさかのぼって、ラジオ体操の妙にあかるい音楽、学校のプールのきらきらした水面、朝顔でつくった色水、という子供の頃の断片も、どれもこれもすてきな夏の思い出です。

 
 この季節を振り返るとき、せつないようなくすぐったいような気持ちになるのは、どうしてなのでしょう。そして、あの頃は確かにたのしかったなあ、と、今年も夏は来るのにわざわざいつかの夏のことを思って遠い目をしてしまうのは、どうしてなのでしょう。

 
夏といえば楽しくて、あかるくて、そういうものだった、はず。それなのに今は、クールビズをどこまでやっていいかとか、化粧が崩れるとか、服のセールの開始時期がずれるとかずれないとか、八月になったらもう秋の売り場を考えようとか、それはそれで大事なことなのですが、それらをいつか振り返ってせつない気持ちになれるんでしょうか。

 
......あのすてきな、そこにあるだけで胸が躍るような夏は、一体どこへいってしまったのでしょう?

 
というわけで、夏らしい本を、とわたしが本棚から選んだのが『アーモンド入りチョコレートのワルツ』です。

 
そのなかの、「子供は眠る」という短篇は、まさに夏! ザ・夏! のお話です。このお話で、あのすてきな夏を再体験できる! かも!

 
夏休みのあいだの二週間を、毎年別荘で過ごすいとこ同士の少年たち。これまで最年長の章くんの言うことをきいて、泳いだり勉強したり、楽しく過ごしてきたけれど、今年「ぼく」は、あることに気づいてしまって――、というあらすじです。

 
気づいてしまったことで、すべてが変わる。もう戻れない。と言ってしまうと、厳しい現実の話、というかんじがしますが、そこは大丈夫です。森絵都さんの文章は意地悪なところがひとつもなく、かといってごまかすわけでもなく、優しいので、するっと受け入れられます。

 
このお話の「ぼく」のように、夏になにかが変わってしまうことは多いのかもしれません。なにかが変わってしまうからこそ、振り返ったときにはそこに未熟だった、変わる前の自分をみつけてくすぐったく感じ、もう戻れないことを思い知ってせつなくなる、のかも。

変わってしまう夏、一度しかない夏。
今年のことを振り返るときに、あー暑かったことしか覚えてない、とか、結局なんもしてない、とか思わなくていいように、ちゃんと遠い目をしつつせつない気持ちになれるように、ちゃんと今年の夏を、今を楽しみましょう。

ささおき書店 藤原 千代 

書名:アーモンド入りチョコレートのワルツ 
著者:森 絵都
出版社:角川書店
ISBN:978-4043791019
本体価格:460円

チョコレート.jpg

  
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