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自分の思考がダメ社員の思考が多かった。 読んで変えていこうと思えた。
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 [259]「タネが危ない」(野口勲・著)を読む
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[259]「タネが危ない」(野口勲・著)を読む

 今日から7月。本格的な夏の到来はもうすぐですね。夏と言えば、トマトにキュウリ、オクラ、トウモロコシなど夏野菜のおいしい季節です。

 ところで、夏野菜についてこんな声を耳にしたことはありませんか。

 かつて食べていたトマトやキュウリは、野菜臭さにあふれて、濃い味だった。「野菜の命を齧(かじ)っている味がした。」
 ところが、最近店頭に並ぶ夏野菜は、こぎれいに揃ってはいるが、昔の野菜の味がちっともしないなぁ、なぜだろう。

 こう感じている方は少なからずいらっしゃることでしょう。筆者もそのひとりです。

 その理由は、ただひとつ。昔の野菜と今の野菜はまったく別物だからです。作り方や肥料が昔と今とは違うという事ではありません。野菜の形こそ似ていますが、現代の野菜は昔の野菜から、同じ性質、同じ遺伝子を引き継いではいないのです。

 なぜか。それは、そもそもの種の成り立ちが違うからです。

 店頭に並んでいる野菜は、今ではほとんどがF1という、種苗メーカーが創出した「特別な品種」なのです。

 このことをわかりやすく解き明かし、現代の種苗と食について考察した本があります。

 「タネが危ない」(野口勲・著:日本経済新聞出版社・刊)

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 この本の著者である野口勲氏は、種苗店の経営者でもあります。種ビジネスの世界を長年見続けてきた著者が、現代の農業に対して肌で感じたこと、将来への危機感をまとめた警告の書と言えます。

 さて、F1とはなにか。細かな説明を省いて言うと、病気に強く、大量に均一の野菜ができるよう、人工的に創出された植物のことです。

 私たちが口にする最近の野菜は、このF1野菜がほとんどといわれています。F1野菜の特徴は、同じ大きさ、同じ味はもちろん、耐病性や収穫時期もまったく同じ。同一サイズが一度にできることで、機械を使った収穫や梱包に適し、出荷のタイミングを調整できます。また均一のサイズですから、同じ価格で販売したいという販売サイドの要請にも対応できます。
 昔から代々受け継がれて来た味わいのある野菜が、店頭に並ぶことはもうありません。その理由は、現代の流通に求められるこの大量生産・同一規格・同一価格というニーズに当てはまらないからです。昔からある野菜は、生育に時間がかかり、サイズも不揃い、品質にもばらつきがあるため、流通からも販売からも敬遠されています。ですから、野菜の味が昔と違うと感じるのは当然のことなのです。

 もうひとつ、F1の種には種苗メーカーにとって欠かせない性質が盛り込まれています。それは野菜から再生産する能力をなくしたり、種子ができても同じ野菜にならないよう工夫をこらした「一代限りの品種」になっているのです。

 昔の農家は、翌年も同じ野菜を作るために、野菜の一部を採り残しておき、花を咲かせ種を取っていました。農家の軒先に枯れた野菜が干してある光景は、それだったのですね。
 種苗メーカーとしては、毎年種を売らなければ倒産してしまいますから、野菜の生産者に種を再生産されては困ります。
 種を残さない品種、残しても同じものができない品種を、さまざまな知恵を絞って開発し、F1という「一代限りの野菜」を生み出しました。

 このことに著者は、大いなる警告を発しています。
 たとえばおしべやめしべを発生させない、つまり生物としては問題のある野菜を、自然界は受け入れられるのだろうか、と。植物に加えた「人工的な奇化」が他の生命体に、たとえば人にどんな影響があるのか。こうした問いかけが研究もされず、企業の都合だけでF1種が出回ることに疑問を投げかけています。
 つい最近のこと、大量のミツバチが姿を消す現象が、世界的規模で発生しました。いまだに原因がわからないこの問題にも、著者はF1野菜との関連を疑い、大胆な推論を展開しています。

 筆者の印象に残る挿話をひとつ。とある種苗メーカーのF1種研究者が自宅で作って食べる野菜は、野口氏の店から買い求めた伝統種から育てているそうです。不思議な話ですね。

 最後に、著者である野口氏が、自著への批判に対して回答された文章を掲載しておきます。(水)

 「著者です。(中略)過去の学説に囚われず、タネ屋としての実践で得た知識で、タネという生命を考えることができるようになりました。ちなみに、お会いした某農大の育種学の先生は「もしかしたらその通りかもしれない。でもそれを認めたら現在の育種学が崩壊してしまう」とおっしゃいました。また育種学を専攻した某種苗会社の人からは「嘘は言ってないけれど、あんまり暴露しないでね」と言われましたが、「ここが間違っている」というご指摘は、ひとつもありませんでした。」
(amazon ブックレビューより 一部引用)

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 当コラムでは以前、江戸の伝統野菜として東京多摩地区に伝わる「のらぼう菜」をとりあげました。
「[016]カンタン手料理-3 奇跡の野菜、のらぼう菜」(2015年03月20日)

 その際にのらぼう菜の種の入手先として、野口氏のお店をご紹介しています。
「野口種苗 野口のタネ 野口種苗研究所」
http://noguchiseed.com/


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